軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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炎竜からはなんだか気になることを言われたものの、とりあえずそれは忘れ、「畏怖の迷宮」のコントロールルームに突入してレッドゲートへのエネルギー供給を止めた。

研究チームがコントロールルームの手前に陣取っていたのは、きっと僕と同じように迷宮の稼働を止めようとしていたのだろうけれど、実際に止める方法はかなり複雑で、【森羅万象】の力を使わなければならなかった。

唖然とする彼らを放っておいて僕が外へと戻ると、別の迷宮から黒煙が上がっているところだった。他の竜が外部から攻撃をしているのだろう。【離界盟約】の天賦珠玉を戻すと、エネルギーは徐々に収まり、レッドゲートへの供給は完全に止まるのが見えた。

「ふー……」

これで、一安心だ。調停者との戦いはお任せしてきてしまったけれど、最悪、竜たちが調停者を押さえ込むだろう。

これで、終わりだ。

これで——。

「……?」

僕は首をかしげた。レッドゲートへのエネルギー供給は止まったというのに、レッドゲートが閉じていかないのだ。

迷宮の破壊を終えた竜たちがレッドゲートへと集まっていく。彼らも不思議そうにレッドゲートを見上げていたが、向こうの世界にいる封印亀骨が光を吐き出し、攻撃を続けてくるので一度散開した。

それからぐるぐると輪になって回転する——。

「なにを、やってるんだ……?」

輪の中心に現れたのは巨大な魔法陣だ。見たこともないようなもので、それは徐々にせり上がっていくとレッドゲートを覆っていく。

「うっ!?」

耳に突き刺さるような高音が響き、猛烈な頭痛と吐き気に、僕はその場に膝をついた。あとで聞いたところによると兵士の多くがこの瞬間、意識を失って倒れたらしい。

魔法陣はレッドゲートに干渉すると、新たな空間の切れ目を作りだし——「空間の切れ目」としか呼べないほど、それは異様な現象だった——レッドゲートにぴったりと重ねた。

封印亀骨がもう一度光を吐き出したが、それはこちらに飛び出てくることがなく、レッドゲートの向こうの大気を震わせるだけだった。

力を相当に使ったのだろう、2体の竜がバランスを崩して落ちそうになるが、なんとか持ちこたえてよろよろと飛んでいき、この場を去っていく。

他の竜もそれに続き、最後に残った炎竜だけがこちらへと飛んできた。

《……してやられたな》

僕を見下ろした炎竜が不可解な言葉を吐いた。

「どういうことですか……!? 確かにエネルギーは断たれ、レッドゲートはもう閉じられるだけでしょう!?」

《見えぬのか》

「え?」

《お前の目は、盟約者を見ることができるだろう? それはそういう天賦だ》

「いったいなにを言って——」

確かに【離界盟約】は現在の盟約者が誰なのかを確認できる。そのとき僕は——気がついた。

「裏の世界」の地底人種族の、盟約者が代わっている。

代わっていることはおかしくはない。なぜなら、今の盟約者である「参謀」と呼ばれていた彼女が「表の世界」へとやってきたのなら——時間的にもノックさんたちに連れられてアーシャとともに、ミュール辺境伯領に到着していてもおかしくないはずだ——「裏の世界」の盟約者は代わる。

つまり、崩壊した地底都市に残った人が次の盟約者となったのだ。

それは老人だった。だけど様子がおかしい。

虚ろな瞳で呆然と座り込んでいるのが【離界盟約】によって捕捉された。

《……ここの迷宮は、人の感情をエネルギーに変えて世界をつなげることに成功した。人の感情に着目したのは面白い。確かに、人の感情は時に強いきらめきのような力を持つ》

もしや……地底人種族の盟約者は。

《裏を返せば、人さえ集めればエネルギーを吸い出すことができる》

「調停者が、彼らを捕らえたのですか」

最悪の推測だった。

こちらに亀裂があるのと同様、「裏の世界」にも亀裂は存在する。そしてその亀裂にエネルギーを注ぎ込めば、向こうから亀裂を維持することができる——。

調停者が地底人種族を捕らえ、まるでバッテリーを使うがごとくエネルギーを吸い出しているのだとしたら。

《おそらくは、そうだ》

炎竜の、淡々とした答えに僕は燃え上がるような怒りを感じた。

「なぜですか!? 調停者は世界に干渉してはいけないのでしょう!?」

《ああ。だが盟約者に干渉はできる》

「なんなんですか、それは! 結果的に世界に干渉していれば同じことじゃないですか!! 大体、『貴顕の血』を捧げることだって意味が不明です! それだって世界への干渉に他ならない!」

《————》

そのとき、炎竜の目がハッとしたように開かれた。

「……どうしたんですか」

《いや…… その方法(・・・・) もあったな》

「は?」

《「災厄の子」よ。お前が考えている以上に、我らは「貴種」を重要視し、そしてまた「貴種」は力を持つ》

ばさっ、ばさっ、と翼を動かし、炎竜の身体が持ち上がっていく。

「ちょ、ちょっと待ってください!! まだ話は終わってない——」

《安心していいぞ。あの亀裂は我らの力によって一時的に封印した。放っておいても数百年は破れなかろう》

「数百年? それなら、地底人の命が絶えるほうが先じゃないですか!」

《幻想鬼人とてバカではない。地底人を守りながら、生け贄を差し出させるだろう。そして亀裂を維持しながら 次(・) を待つはずだ》

「次!?『生け贄』が、『貴種』ということですか——」

もう、だいぶ遠い。

《——心構えしておくことだ》

僕の声は届かないだろうけれど、竜の声ははっきりと聞こえた。

《亀裂が残った影響は、これから現れる。世界の存続に関わることであれば我は知恵を貸そう——我らはしばし休息する》

そうして竜は飛び去っていった。

「……なんなんだよ」

竜と話をすればわからなかったことも解け、すっきりするのかと思っていたのに——これではわからないことが増えたようなものだ。

「なんなんだよ……!」

禍々しい瘴気はなくなり、空気は少しずつ清浄なものに戻りつつある。そしてなによりモンスターが落ちてくることはもうなくなった。

ただ、赤く、凍りついたような亀裂だけが空には残っていた。