軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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天賦珠玉【離界盟約】を僕が「どうしても欲しい」と言うと、「では探しに行くか」と簡単にノックさんは請け合ってくれた。「どうせ使えないのに」という反応も覚悟していたんだけど。

だけど、「どこに隠したのか」を聞いて、表情を変えた。

「お、お前ッ、よりにもよって 初夏鳥(ウイカチョウ) の卵に隠したダと!? なにを考えている!」

「ヒィッ!」

怒鳴られたプンタさんは頭を抱えて小屋の隅に逃げていく。

「逃げるな! あそこには近寄るなと何度も——」

「ちょ、ちょっと待ってください」

殴りかねない勢いのノックさんを押しとどめる。

「初夏鳥……ってなんなんですか? 僕は聞いたことがないのですが」

「…………」

憤懣やるかたなし、という顔のノックさんだったが説明をしてくれた。

それでも行くというのなら止めないが、という前提とともに。

危険はあるかもしれない。だけど、危険を冒してでも【離界盟約】を手に入れたほうがいい——と僕はそう結論づけた。

ノックさんがいろいろな危険について教えてくれたけれど、それでも下手を打たなければ問題ないと判断できた。

【離界盟約】という天賦珠玉——「盟約」という言葉の含まれる、星8つを超える特殊な天賦珠玉はその能力を確認しておきたいと僕は思ったのだ。

僕のスキルホルダーが16個あることを知らないノックさんは当然、

「——なんと酔狂な」

と呆れ、

「行くのは護衛殿の自由だが、ハイエルフ様を連れて行くことは許しがたい」

と言う。

その感情はもっともだったし、もし無理にアーシャを連れていくとしたらそもそもプンタさんの協力を得られないかもしれないので、僕はアーシャを説得し、プンタさんと2人で行くことにする。

時刻はお昼時。

僕はプンタさんとともにダークエルフの集落を出発した。樹上ではアーシャが心配そうに見ていたけれど、ダークエルフたちがアーシャに危害を加えることはないだろう。安心して待っていて欲しい。

「君……変な人ですよね。あれだけ危険だと聞いた初夏鳥の 巣(・) に行きたいなんて……」

「巣、と言っても卵が置いてあるだけなんでしょう? それに実際、プンタさんは無事に帰ってきてますし」

「それはそうだけど……」

「ひょっとしてあれが初夏鳥ですか?」

枯れた大木がまばらに生えている土地を歩いていく。この辺りは栄養が少ないのか、立ち枯れているような木も多いが、一方で少ない栄養を大事に大事に取り込んで、なんとかかんとか生き延びている木もあった。

自然はしたたかだ。

僕が指差したのはそんな枝の向こうに見える、2羽の鳥だった。並ぶ小さい影が大空をすーっと流れていく。

「自分には見えませんね……群れでしたか?」

「いえ、2羽だけでした」

「じゃあ、 晩夏鳥(バンカチョウ) でしょう。青の晩夏鳥は一途、赤の初夏鳥は浮気者」

シルエットはまったく同じだけれど、色が青と赤で違う2種の鳥。

いや、2種類ではないのかもしれない。同じ種類の鳥なのではないか。

聞くところによると晩夏鳥は生涯のつがいをただ1羽に定め、2羽で寄り添って暮らし、ふつうの鳥と同じく巣を作って卵を産む。

逆に初夏鳥は群れを成し、そこで多くの異性と関係を持って大量に卵を産む。

どの卵が誰の子かわからないので、「卵置き場」のようなものができる。

「あの辺りです。『卵置き場』」

歩いて2時間——途中で食事をとったりしたのでさほど進んでいない。

「結構集落から近いんですね」

「卵がかえって飛べるようになるまでの半年間がすぎれば、『卵置き場』は捨てられますからね……集落のみんなは近寄らないで過ごします」

「なるほど」

場所は聖王都を東に外れたあたりだった。山の裾野にあり、ぐっと凹んだ土地はぐるりと巨木に囲まれていた。周囲は草も多く生えていて、見通しは悪い。

「うわ……マジか」

僕は思わずそんな声が出た。

「卵置き場」とは言い得て妙だ。むしろそれ以外に言葉がない。

そこには一抱えもありそうな乳白色の卵が、100ではきかないほどの数、置かれてあった。

地面に直接置かれ、積まれ、倒れて割れているものもある。

(これが成長したらとんでもなくデカくなるな……)

先ほど遠目に見えていた青の晩夏鳥は、かなりの距離にいたから脅威を感じなかったのだろう。

「気をつけてください。もしも 生きている(・・・・・) 卵を刺激したら、群れが飛んできます」

ノックさんの言っていた「危険」とはそれだった。

初夏鳥は卵を産んだあとは放置するくせに、傷つけたり、割ったりしようものなら、群れで襲いかかってくるらしい。

どういうふうに卵の状態を探っているのかは不明だけど。

逃げたとしても地の果てまで追ってくるとか。

過去に一度、腹が減ったダークエルフが卵を持ち帰ろうとして割ってしまい、初夏鳥の群れに追われた。集落まで群れが追ってくる勢いだったので、そのダークエルフには集落のない方向へ逃げてもらい——そのダークエルフは帰らぬ人となった。

「こんなところに隠したんですか」

「いやぁ……卵がかえったら、あとでゆっくり取りにきたらいいかなって……」

「でも使い道のない天賦珠玉でしょう?」

「見ていればキレイですからね」

なるほど、確かに部屋のオブジェに……使えるかなぁ。趣味の悪い間接照明みたいになりそうだ。

「それに卵は、半分くらいは中身が入ってないんですよ。自分は、初夏鳥のメスが、オスの気を惹くためにカラッポの卵を産んでアピールしているんじゃないかって思うんですけど」

「はあ」

「すごくないですか。鳥の恋の駆け引き」

「はあ……」

急に生き生きしだしたな。

プンタさん、他人に理解されない謎の趣味を持っているんだろうなあ……初夏鳥の研究なんて。

もしかしてここに天賦珠玉を隠したのって、実験でもするような気持ちでもあったんじゃない? 雪の中に石を埋めておいたら溶けた後どうなってるのかな、みたいな。

でなきゃ危険とわかっているところに近づかないよね。

「それで、天賦珠玉はどの殻に隠したんですか?」

「あ、はい。あっちです」

言いながら、「卵置き場」に近づいていく。

「不思議なのはカラッポの卵を産むことだけじゃなくって、初夏鳥も晩夏鳥も、お互いの卵の中に一定の割合でお互いのヒナがいるんですよ。この何百個とある卵の中にも、晩夏鳥の雛がいるんです」

「そうらしいですね。種の存続のためですかね」

多様性を持たせることで、環境の変化に柔軟に対応する。

生物の進化だ。

「そうそう! それで初夏鳥は——」

「あの、プンタさん。もう目の前が卵なんですが」

僕らは手を伸ばせば手前の卵に触れられるというところまでやってきた。

こうして見ると、スーパーで売ってる卵をそのまま大きくしたような感じだな……。カラッポの卵もある、ということだったけれど【森羅万象】で見る限り、どれも同じ「卵」という反応だった。目で見るだけじゃわからない。

「あ、っと……自分が見つけたのはすごくキレイに割れてる殻で、中身もカラッポだったんですよ。だからかぶせ直したらぴったりくっつきましてね」

「はい。どれですか?」

「ええっと……」

プンタさんの視線がさまよう。

「…………」

「…………」

「……プンタさん?」

「…………」

僕を見たプンタさんは、どこか媚びるような笑みと、冷や汗を浮かべていた。

「え、えへへ……どれかわからなくなっちゃいました……」