軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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調停者の鎧が、いくら 天銀(ミスリル) を使ったものであったとしても弱点はある。

天銀は、希少で、高価だ。

魔力との親和性が高く、加工の際に魔力を使うことで硬度を上げたり、魔法に対する抵抗を上げたりすることができる。

調停者の鎧は魔法を防ぎ、一般的な鋼よりもずっと硬いといういいとこどりで仕上げられていた。

(だけど——金属は、金属だ)

業火を突き破って出てきた調停者へ、僕は次の魔法を展開していた。【火魔法】と【風魔法】を混ぜた「 火炎嵐(フレイムトルネード) 」だ。

『クッ……』

いくら魔法を防いでも、面で襲いかかってくる風圧は物理的な現象だ。調停者は火炎の竜巻によって煽られ、向こうへと飛んでいく——が、くるりと一回転して着地した。

即座にこっちへ突っ込んで来る。

僕はもう一度、同じことを繰り返した。

フレイムトルネードの出力を押さえているので魔力の減りは問題ないけれど、それでもすでに半分以上は使っている。

『同じことを!』

調停者はフレイムトルネードを正面から受け、地面に伏せるようにして風を耐えきる。

僕との距離は20メートルもない。

『今度こそ死ね』

魔法はやはり効かないのだろう。いや、正確に言えば、体内の核に影響がない限りどんな攻撃も意味がないのだ。

調停者は勝利を確信して突っ込んで来る。

「——待っていた」

もうすぐそこだ。

僕が展開できる魔法は、あと1つがいいところだろう——それをなににするかは決まっていた。

『むっ』

【水魔法】だ。

水だけでなく、氷すら出現させられるこの魔法で、僕は身体の前に分厚い氷壁を出現させる。

『こんなものが効くとでも?』

調停者は無造作に腕を振るって氷壁を破壊する。

『!?』

白い雪片となった氷壁が爆発するように吹っ飛んで、調停者の身体を覆う。

たった今まで何度も炎をかいくぐった鎧は、温泉代わりに高炉にでも入ってきたのかというほどに温度が上がっていた。

その直後、バナナで釘を打てるほどの温度にまで下がった。

【水魔法】で出現させられる氷は、ただの氷じゃない。

氷を中心とした周囲の温度を氷点下へ下げることができるのだ——水を操る魔法でありながら、温度を下げる魔法でもあるからだ。

こびりついたような霜に覆われた調停者は面食らったように止まったが、

「燃えろ」

そこへ僕は、今できうる限り超高温の炎を出現させる。

『だから、魔法は効かな——』

高温と低温の行き来。しかも魔法を媒介にしているために、通常では考えられない環境を作り出すことができる。

天銀とて金属だ。

金属疲労は、当然発生するのだ。

鎧に亀裂が走った。

『——なに?』

端から欠け、胸の中央に大きなヒビが入る。

すでに僕はダメ押しの【土魔法】を用意していた。放たれた岩塊は呆然と突っ立っている調停者の胸に当たると、その部分が割れて砕けた。

そこに——金色の光を放つ核があった。

「見つけた」

ニィ、と笑った僕は、

『ッ!?』

たじろぐ調停者に、初めて動揺を見た。

今度は僕が突っ込んでいく番だ。あの核をつかめば僕の勝ちなのだから。

右手を伸ばすと、あわてた調停者が払ってくる。

こちらに出ていた左足を踏んづけて逃げられないようにして僕はローキックを放った。

パリン、とガラスでも割れるみたいな音がして大腿部の鎧が割れて黒炎が噴き出す。

『お前……!』

「武器がなくても割れるようになった。ゆで卵みたいなもんだな」

『くっ!』

調停者は全力で背後に跳んだ。

両手を天に突き出した——マズイ、と【森羅万象】が報せてくる。

不利を察知した調停者が次になにをするか?

逃走だ。

「うおおおっ!」

僕は背後に【火魔法】の爆発を起こし、ロケットジャンプで一気に距離を詰める。天銀級冒険者クリスタがやっていた魔法による移動の真似ごとは、実用レベルではあるもののまだまだ改良の余地がある——具体的には、僕の靴や服が焦げる。

『なに——がほっ』

勢いがつきすぎて、僕は調停者の顔面に膝蹴りをくれていた。

金属が割れる感触。

調停者はひっくり返るように地面に倒れた。

首から上が割れてまるで血のように黒炎が吐き出されていた。

「だぁっ!」

空いた胸に見える核を踏み抜こうと僕が足を振り下ろすと、ごろりと転がって調停者が逃げる。

2撃、3撃、と続けて踏み下ろしたのにそのすべてをごろごろとかわして逃げていき——ぴょんと腕で跳ねて距離をとられる。

僕は、追撃できなかった。

調停者が着地した場所——そこに転げていたのは、スーメリアさんだったからだ。

『……災厄の子よ、それ以上近づくならばこの地底人を殺す』

いよいよ調停者は、落ちるところまで落ちたらしい。

僕は——その姿に驚いたり恐れたりするのではなく——心の底から憤りを感じた。

「スーメリアさんを傷つけるな」

『……お前がそこにいればいい』

彼女は僕が天賦珠玉を抜いたあと、ここに転がされたままだったのだ。

誰からも助けられることもなく。

ちらりと周囲を見ても、がれきの陰でこっそりこちらをうかがっている地底人が数人いるものの、それだけで、みんな避難した後だった。

僕は——見誤っていたのかもしれない、地底人たちを。

スーメリアさんを死なせないために天賦珠玉を返したのに、彼女は簡単に見殺しにされようとしているのだから……。

調停者は先ほどと同様、両手を上へと掲げた。

『お前は必ず排除する。お前は……世界の敵だ』

彼の周囲を闇の球が覆っていく。

これで瞬間移動ができるのだろうか?

だいぶ余裕を見せている——つまり外側からの攻撃を弾くような防御壁でもあるのだろう。

「そうかよ」

僕は右手を差し出した。

「それじゃお前は、僕の敵だ」

闇の球が調停者の身体をすべて覆う直前——青白い粉のようなものが付着する。

僕は【花魔法】でそれを一気に増やす。

『なっ……!?』

ほとんどの建物の屋上で栽培しているのだ、マイカ茸を。

この都市のどこにでも胞子があふれている。

外から攻撃できないのなら、中から攻撃すればいい。

ぽこぽこぽこと生まれ、育ったマイカ茸は球の中でふくらんで、闇の球を内側から破壊する。

割れてしまった闇は、塵のように消えてしまう——。

「最後の最後まで、クソッタレだったね、お前」

球が剥がれ、無防備となった調停者の胸に——僕はすでに展開していた【土魔法】の弾丸を撃ち込んだ。

金色の光を放っていた核に岩がめり込むと、あっけなく核は砕け散った。