軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚(4)

★ 「銀の天秤」 ★

ダンテスが口を開くよりも先に、ミミノが言った。

「……ダンテス。飛行船、手に入らないかな?」

「奇遇だな、ミミノ。俺も同じことを考えていた。レッドゲートに入ればいい」

ダンテスとミミノは視線を交わすと、同時にうなずいた。

「ダメです!!」

遮ったのはノンだ。

「ふたりともなにを考えてるんですか!? バカなんですか!? バカなんですね!? そんなことしてレイジくんが喜ぶわけはないでしょう!」

「ノン。俺たちは本気だ。帝国がレッドゲートを閉じても、先に向こうに渡っちまえばこっちのもんだ」

「大体向こうに入ったとしてどうやってレイジくんを探すんですか!」

「…………」

「…………」

ダンテスとミミノは視線を交わすと、

「勘だな」

「ニオイとか」

「無策!!」

ノンが叫んだ。

「だからレイジくんに助けられてばかりなんですよ!!」

「おまっ……それを言われると、ぐうの音も出ないだろうが」

「うう、レイジくん」

ミミノがまた泣きそうになって、歯を食いしばる。

「ちょ、ちょっと待ってください、3人とも。落ち着いて、ね?」

さすがにルルシャが間に入ると、それまで黙っていたアバが、

「チュパ。今の話で思いついた。レイジさんとアナスタシア殿下が無事かどうか、確認できないかな? チュパ」

アバの持っている水飴はすでに底を尽いたので、棒だけをしゃぶっている。実は水飴を買う金はあるのだが、水飴とて食料のひとつだ。自分が無為に消費するよりも——無為に消費しているという自覚はあったらしいが——空腹の子どもたちに与えたほうがいいだろうと買わずにいる。

おかげで少々げっそりしている。が、標準体型まではまだ遠い。

「無事かどうかの、確認とはどういうことですかね」

ムゲがたずねる。

「チュパ。レッドゲートはどこかにつながってる。なら長距離通信の魔道具とかがあれば……」

「いや。レイジさんはそもそも長距離通信の魔道具なんて持っちゃいませんよ」

「そこをなんとかできないかね。チュパ」

「なんとかって……」

そのとき、ミミノが、

「ああああああああああああああ!!」

叫んだ。すぐそばにいたダンテスの背筋がピンと伸び、ルルシャの瞳が焦点を失い、耳のいいゼリィが「フギャア!」と猫鳴きしてしまうほどには強烈な叫び声だった。

「これ! これこれこれこれ!」

ミミノが指差したのは、入国のときに渡され、つけたままの腕輪だった。

——帝国内での行動は制限されます。この腕輪を必ずつけてけして外さないでください。また帝国外に出るときにはこの腕輪を必ず返却してください。もしもそのまま国外に出た場合は非常に大きな警報が鳴ります。腕輪の貸与についてはギルド証に記載され、返却時にその情報は消去されます。

「これって位置がわかるんじゃないか!?」

ルルシャの目の色が変わった。

「それは……確かに。微弱な魔力波動を出し続けているから、捕捉できるかもしれない。コレを管理しているのは——」

「ウチだね。渉外局だ。でも、冒険者ひとりを探すのに技術情報を明かしてくれるかはわからないよ……チュパ」

「そこをなんとかするのが渉外局副局長殿の腕の見せ所だろう?」

ルルシャに言われ、アバは舐めていた棒を上下に振る。

「チュパ。……もうひとつ、なにか後押しが欲しいな。できればアナスタシア殿下のことで。それなら十分交渉カードになり得る」

全員が考え込もうとしたときだ、

「ああああ——むごっ」

ミミノが叫ぼうとしたのでダンテスとゼリィのふたりがその口を押さえた。

「もごごもご、もごもご!」

「大声を出すなよ? 出さないなら手をどけてやる」

「もご!」

うんうんとうなずくミミノ。

「……不安しかないが」

「しょうがないっす」

渋々ふたりが離すと、ミミノは道具袋を漁りだした。

「これこれこれこれこれぇ!」

そして取り出したのは——一束の髪だ。

アナスタシアが「銀の天秤」へ、報酬の代わりとして贈ったもの。

「ハイエルフの髪は非常に特殊な魔力が含まれているべな! この魔力と同じ波長の魔力を探すような魔道具が、あるんじゃないか!?」

ミミノは両手を広げた。

「ふつうならあり得ないけど、ここなら! ここは、世界の魔道具の最先端、レフ魔導帝国じゃないか!?」

★ 「月下美人」 ★

レフ魔導帝国の最新鋭飛行船「月下美人」は、ヘビギンチャクの襲来というどさくさもあってなんとかかんとか逃げおおせることに成功した。しかし燃料の少なさはいかんともしがたく、未開の地「カニオン」に入ったところで——ほんの少しだけ踏み込んだところに崖を見つけ、そこに身を隠すように不時着していた。

「お頭ァ……お嬢の様子はどうっすか」

「ぐっすり眠ってらァな。騒がしくして起こすんじゃねえよ」

「こんなにデケェ飛行船に5人しかいないんすから、騒いだってたいしてうるさかねーですよ」

「お嬢」の眠っている部屋の前、廊下にはちょっとしたスペースがあり小さなテーブルが置かれてあった。お頭ともうひとりは、保存食の干し肉と乾パンをかじりつつ、酒を飲む。軽発泡の小麦の醸造酒はしこたま食料庫に搭載されており、アルコール分も少ないので水代わりに飲んでいた。

「んで、帝国のほうはどうなってんだ」

「へえ。ひとっ走り見てきましたが、どうにもこうにも人っ子ひとりいませんや。帝国は街を放棄し、関所を城壁代わりに戦ってるようです」

「ほぉん……外敵を防ぐ関所が、内からの敵を防ぐことになっちまうとは、皮肉なもんだ」

お頭はぐびりと酒を一杯やる。

「……だが俺たちにゃぁ関係ねえ。俺らは、燃料問題にけりがついたらすぐに出発だ。じゃねえとお嬢の身体がもたねえ——」

「——誰の身体がもたないって?」