軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ミミノ、ノン、奥へ!」

ダンテスさんが2人の後ろを走り、一番最後をノロノロとついていくのは猫チャンに乗っている僕だ。

ノンさんとミミノさんが次の通路へと飛び込んだ直後、触手ヤモリの最初の1匹が僕へと飛びかかってきた。

その鼻面に【火魔法】をひとつぶつけると、ギイイだかジイイだかわからない声とともに地面に落ちてじたばたした。

「うげっ、きったねぇなあ」

いつの間にかレオンも長剣を抜いており、なでるように振り抜くとヤモリの胴体は真っ二つになって転がって行く。その身体からは長い腸と、胃袋からだろうか石ころがごろりと出てきた。岩を食べてるのか?

それにしても、レオンの剣はすごい。走ってくる触手ヤモリの脳天をぷつりと突き刺すと、踊るような足取りで飛んできた1匹を斬って捨てる。

一連の流れはまるでダンスでも踊っているようで——これが純金級の強さかと僕は知った。

もちろん武器の強さもある。体内に石があろうと叩き斬ってしまう業物の長剣だ。ミスリルは含まれていないようだけれど、ただの金属ではないみたいだ。

「レイジ、急げ!」

「猫チャンはがんばってますよ!」

僕は【火魔法】をばらまきながら、まるで放火魔にでもなった気分で進んでいく。さすがに火をぶつけられると学習したのか猫チャンを遠巻きに見つめる触手ヤモリの群れ。

ダンテスさんが通路の入口に立って盾を構えたので、その横をすり抜けて僕が猫チャンとともに通路へ入っていく。

「ウオオオオオオッ!」

ダンテスさんがメイスを振り下ろし、地面に叩きつける。数匹がその衝撃でひっくり返り、地響きが走って壁の触手ヤモリも落ちた。

「ダンテスさん、通路塞ぎますか?」

「奥へ進んでみて、追ってくるようなら頼む!」

「了解!」

僕が【土魔法】を使えば壁を造り出すことができるけれど、そうするとなにかあって後退するときに邪魔になる。

通路はすでに自然の洞窟からダンジョンへと戻っており、しばらく様子を見ていたけれど触手ヤモリはこっちまで追っては来なかった。

「ふー……なんなんだよありゃ。っつうかその車なんだよ。遅すぎだろ」

半笑いでレオンが言ってきたので、僕は両手に10の火の玉を出現させた。

「お、おいおい、冗談だよ冗談! ダンテス、このガキおっかねえぞ!」

「言っただろう? レイジは俺より強いぞと」

僕がダンテスさんより強いかはだいぶ怪しいし、そんなことどうでもいいのだけれど、レオンにその言葉は効いたらしく僕から距離を取るように逃げていった。僕はともかく、猫チャンをバカにするなら許さん。

「壁になんか書いてありやすぜ」

先頭を進むゼリィさんが最初に気がついた。

それはまるで展覧会の絵のように、壁面にちょっとした線画と、下には文字が書かれてある。

最初の絵は背を向け合うふたりの女性……だろうか? 文字のほうは読めなかった。古代語らしいんだけど、そういうの、学んだことがないんだよな。

(……でもよくよく考えたら【森羅万象】で記憶はすべてできるんだから、古代語も解読しようと思えばできるようになるんだろうか。ムゲさんは少し読めていたし、戻ったら聞いてみよう)

そんなことを思いながら絵を見ていく。

2つ目の絵は8つの丸が等間隔に並び、それが2セットあるので16個の丸だ。

次は扉を通り抜ける男。

次は思い悩む男。

次は9つの扉。

次は9つの扉が、開いているように見える。

最後は、最初の2人の女性が今度は向き合い、伸ばした手と手が触れ合っていた。

「ワケわからん」

ダンテスさんがきっぱり言った。そうですね。僕もワケわかんないです。

ここにいる誰もが古代語を読めないのでただ絵を流し見しただけとなってしまった。

「う〜ん……『真実』に期待してたんだけど、これじゃあどうしようもないべな」

「ミミノさん、ここの内容を写したりします?」

「うんにゃ。オートマトンの秘密とかじゃなくて、なんか歴史とかに見えるからわたしには役に立たなそうな知識だべな」

確かに。

結局、これが「唇」に書いてあった「真実」なのかはわからなかった。

それから僕らは迷宮を進んだ。レオンのぶんの食費が掛かってしまったけれどももともと1週間以上は滞在できる保存食を用意していたし、【生活魔法】の水があればさらに1週間は生き延びられるだろう。

過去の迷宮は踏破するのに最短で3日、最長でも5日程度の長さだった。

懐中時計が夜間を示したら寝る時間だ。見張りを立てるのは森と変わらず、僕らは見張りのローテーションを立てて眠っていた。

「——そうは言うが……ダンテス、俺は……」

「——お前は昔から……それで今の……」

目が覚めたのは夜半で、僕が見張りに交代する時間だった。離れた場所でダンテスさんとレオンがなにかを話しているのが聞こえる。【聴覚強化】があっても聞こえないので、かなり小さな声なのだろう。

「くぁ……ダンテスさん?」

わざとあくびをして声を掛けると、

「……交代の時間か」

「そうですよ」

するとレオンは離れていって寝転がった。

「…………」

ダンテスさんとなにを話していたんだろうか。

また「黄金旅団」に戻れって? さすがにそれはないと思うけど。

朝の時間になって僕らは探索を再開した。感情攻撃を仕掛けてくるオートマトンが出てきたのでレオンにも「魔力中和剤」を服ませる。「こんなもん持ってたのかよ!?」となんだか納得できないような顔をしていたけれど、これはズルでもなんでもなくて、分析と調合のたまものだ。

その日も多くのオートマトンを倒し、時折出現する自然発生したモンスターを倒した。

鬼火(デーモンファイア) 、 亡霊(レイス) といった 不死(アンデッド) モンスターはノンさんの【神聖魔法】で浄化された。

僕がダストシュートで見たスライムもいた。通路を透明な粘膜で塞いでしまっていたので【火魔法】で全部焼き尽くすと、異臭が漂ってゼリィさんが涙目になっていた。

そんなこんなで「畏怖の迷宮」を進み、トラップらしいトラップもその後は出合わないまま、夕暮れどき——僕らには時間なんて空腹以外に感じられないけれど——その大部屋へとたどり着いた。

「……敵は見当たらないっすね」

斥候として先に向かっていたゼリィさんが戻ってくる。大部屋はかなりの広さで、向こう側が暗がりに沈んで見えないほどだった。いや、うっすらと霧が漂っていて暗さを増しているのだ。【森羅万象】によればそれは毒性のないただの霧だった。

「よし、ならば行く——」

「でもちょっと待って欲しいっすね」

ダンテスさんの言葉を珍しくゼリィさんが遮った。

「? どうしてだ?」

「トラップかどうか、あーしには判断がつかないことがありやすから、坊ちゃんを連れてふたりでもう一度見ておきたいっす」

「……全員ではダメなのか?」

ダンテスさんがゼリィさんに注意深くたずねる。ゼリィさんは人柄が人柄だから、人間的な信頼はないに等しいんだよな。

でもほんと、どういう意味だろう? ゼリィさんがそんなことを言うなんて。

「おいおい! まさかお前、お宝を見つけてそのガキとふたりで独り占めしようって魂胆じゃねーだろーな!」

「レオン、お前は黙っていろ」

「黙ってられるかよ。こいつはバクチでイカサマして俺をハメたことがあるんだぞ」

「バクチと迷宮探索じゃ違うっつーの、そんなこともわかんないからアンタはバクチで負けるんすよ」

「なにを!?」

「止めろ、ふたりとも」

ゼリィさんもゼリィさんで煽り返すものだから、ダンテスさんが間に入った。

「……レイジはどうする」

困ったダンテスさんが僕に聞いてくる。

僕はゼリィさんの真意を探ろうとして彼女の顔を見やった——「? なんですか坊ちゃん? やだなぁ、あーしの身体はもう坊ちゃんのものじゃないですかぁ」とか気持ち悪いことを言ってくる。この猫獣人は邪悪認定。

「とりあえず様子を見るだけ様子を見てきますよ。どのみち僕の目的は財宝でもなんでもなくて、ここを踏破することなんで」

「ふーむ……それもそうだな。じゃあ、ふたりで見てきてくれ」

「おいダンテス!」

レオンが吠えていたけれど、その間に僕は猫チャンから降りてミミノさんに託し——猫チャンに乗りたがっていたミミノさんは嬉々として乗り込んだ——ゼリィさんについて前に進む。

霧の中を進んでいくと向こうで大声を上げているはずのレオンの声まで聞こえなくなってきた。おかしいな……この霧はただの霧のはずなんだけど。魔力の循環で音を消すような仕掛けでもできているんだろうか。

「坊ちゃん」

横を歩くゼリィさんが言葉を発したのは聞こえた。

「なんですか?」

「レオンは信用できないですぜ」

立ち止まった僕を、ゼリィさんが見下ろす。僕がいかに成長期で背が伸びたのだとしても、ゼリィさんのほうがまだまだ高い。

「わかっていますよ」

僕は答えた。

「レオンは ウソを吐いて(・・・・・・) いますからね」