軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

砂漠の戦い方(観戦)

地中から出てきた巨大な植物は大量の砂を散らし、天の光を浴びるように蔓を伸ばす。

「……大きい」

全長十メートルは越しており、見上げるような大きさだ。

砂漠にまばらに生えている植物とは比べものにならない。

大樹のようにしっかりと根を生やしており、そこから無数に枝葉や蔓が伸びている。

うねうねと蠢く蔓は触手のようで少し気持ちが悪い。

「サンドプラントですね」

「面倒なのに絡まれてしまったな」

シャナリアとサルバの口ぶりから、どうやら砂漠に住む魔物らしい。

どう見ても普通の植物とは思えない大きさだし、ちょっと醜悪だから納得だ。

それにしても魔物か……別に空間魔法が制限されているだけなので戦えないわけではないが、魔物と戦うなんてリスクの大きいことはしたくない。

「逃げましょう」

「サンドプラントの蔓はよく伸びるから逃げるのは難しいな」

即座に撤退、あるいは迂回を提案するが、サルバが首を横に振ってそう言う。

確かにあのような長い触手をいくつも躱しながら逃げるのは難しそうだ。転移が使えるなら余裕だけど、今は無理だし。

「……なら、やることは一つですね」

「ああ、そうだな」

「「シャナリア、頼んだ!!」」

「サルバ様に言われるのはいいのですが、小僧に言われるのだけは納得がいかない!」

サルバと意思の疎通を図って叫ぶと、シャナリアが怒鳴った。

小僧とか怖いな。

なんて思っていると、サンドプラントが蠢かせていた蔓の一つを思いっきり叩きつけてくる。

「チッ」

シャナリアは舌打ちしながらも素早くそれに反応して回避してみせる。

砂漠の柔らかな砂が衝撃で派手に巻き上がる。まるで、水飛沫のようだ。

シャナリアには悪いがナイスタイミングだ。

俺とサルバはシャナリアから距離をとるように避難している。

「サルバ様は王族だからともかく、お前は戦うことができるのだろう!?」

「いや、俺か弱い子供なんで無理です」

「嘘をつくな! か弱い子供が一人で砂漠を移動できるわけがないだろうに!」

むむむ、普通の子供は一人で砂漠を移動することなんてできないのか。

道理で二人が俺の言葉を聞いて、訝しむはずだ。

「サルバ様、あの人が子供を無理矢理に前線に立たせようとします。一般人の子供を戦闘に巻き込んだとあっては、第二王子の名に傷がつくのでは?」

「それもそうだな。シャナリア、一人で戦え!」

などと言ってみせると、サルバは快く乗ってくれた。

この人は基本的に面白い方に乗っかるタイプと睨んでいたので乗ってくれると思っていた。

何を考えているかわからないが、こういう部分は仲良くできそうだ。

「本当にあなたという方は……ッ!」

俺達の茶番劇を聞いて、シャナリアは額に青筋を浮かべていた。

第二王子の庇護下にいる今となっては鋭い瞳を向けられようが怖くない。今の俺は権力に守られているのだ。虎の威万歳だ。

「……なんて風に任せちゃいましたけど、シャナリアさんだけで何とかなりますよね?」

「シャナリアは王宮魔法使いであり俺の護衛だ。サンドプラント程度なら一人で倒せる」

本当にマズい相手なら魔法で遠くから援護するくらいやぶさかではないが、サルバの様子を見る限り戦闘能力において絶大な信頼を寄せているようだ。

第二王子の護衛に抜擢されるくらいだいし、たった一人を連れてここまでやってきているのだ。実戦経験のほとんどない俺なんかが心するなんておこがましいな。

ここはシャナリアに任せて、優雅に観戦するとしよう。

身体の力を抜いてリラックスしていると、シャナリアが魔法を発動させた。

「『瞬砂』」

短く省略された詠唱。

シャナリアへ覆い被さるように蔓が迫っていたが、彼女は奇妙な平行移動で回避してみせた。

まったく予備動作が見えない動き。普通の人からすれば、横に瞬間移動したように見えただろう。

「へー、土魔法を使って、足元の砂を動かして移動したんだ」

「あの魔法の仕組みがわかるのか?」

「微量な魔力の流れをしっかりとみれば大体はわかりますね」

自分が移動するのではなく、足場そのものを動かして移動すればいい。それはシルフォード領の稽古でも閃いた、平面エスカレーター魔法と同じ理論だ。

とはいっても、あんな風にゼロスピードからの高速移動となると身体に負荷もかかるし、タイミングもシビアだから率先してやりたいとは思えないけどね。

ぼんやりと考察をしていると、シャナリアは自らの足による回避と、魔法による高速移動を繰り返して大量の蔓を避ける。

そして、そのすれ違いざまにシミターで蔓を切断していく。

蔓を落とされたサンドプラントがのけぞる中、シャナリアは突撃。

しかし、サンドプラントは即座に蔓を再生させ、束ねるとシャナリアを撃ち抜かんとする。

空中にいたままでは避けることができない。

「『サンドウォーク』」

しかし、彼女の一言で砂が舞い上がり、流れる水のように蠢いて足場となった。

サンドプラントの一撃は虚空を貫き、シャナリアはそのまま砂に乗ってサンドプラントの頭頂部に急接近。

そして、一番大きな頭のようなものを斬り飛ばした。

頭頂部が斬り落とされると、サンドプラントは一気に力を失って崩れ落ち、砂を巻き上げた。

「おおー、これが砂漠での戦い方なんだ」

平面エスカレーターはまだしも、水魔法のように操作して空中でも移動するなんて思いもよらなかった。

シャナリアの魔法の使い方に感動して思わず手を叩く。

「砂というものは俺達を苦しめるものでもあるが、使いようによっては武器にもなる。これが我が王国の戦士の戦い方なのさ」

「へー、面白いね」

ラズール人は土魔法が得意と聞いていたが、ここまで自由に操るとは。

生活の中で身近にあるだけあって、試行錯誤して編み出したのかもしれないな。

異国の魔法を見るというのも面白いものだ。

『瞬砂』とかいう魔法も身体への負担は大きいだろうけど、いざという時の緊急回避に使えるかもしれないな。あるいは相手にかけて体勢を崩させても面白い。

でも、一番面白そうなのは『サンドウォーク』だろうか? 砂に乗って空中を漂うって、なんか楽しそうだ。

「『サンドウォーク』やってみようかな」

「フッ、この魔法は難易度が高い。お前のような小僧にできるわけがない」

などと呟くと、シミターを鞘に収納したシャナリアがそんなことを言ってくる。

確かに土魔法で砂を動かした経験が俺には少ない。

だけど、シルフォード領で柔らかい砂を動かしていたし、ジャイサールでも砂を動かしてマヤと遊んでいたのでイケる気がする。

そう思って、土魔法を使って砂漠の砂に魔力を浸透させる。

そして、足下にある砂をゆっくりと持ち上げると、俺の身体は宙に浮いた。

そのまま砂を移動させると、乗っている俺もその方向へと移動する。

「おお、なんかサイキックで浮遊するのとは違う感覚だ」

柔らかい砂なので足が抜けるような怖さがあるが、大量の砂が体重をしっかりと分散させてくれているようだ。

あくまで足場は柔らかく、それでいて機敏な方向転換も可能だ。

細かい動きをするにはサイキックで浮遊させた板に乗るよりも、こちらの方がよっぽど使い勝手がいいかもしれないな。使える場所は限られるが。

「……バ、バカな。サンドウォークをこのような子供が自在に操るなんて……」

「既存の土魔法を使うというより、水魔法を使う感覚に似ていますね」

砂漠の砂は粒が小さくてバラバラだ。どこにでもある土の塊とは違って、操作する感覚が違う。

バラバラなので群体として考えることができず、個として扱ってやらねばならない。

しかし、このような細かな粒子を意識することは無駄でしかない。

だったら、水魔法のように魔力を浸透させて、無理矢理群として定義して操作すればいい。

そうするだけで水魔法と同じ感覚で操作することができる。

ただ、魔力を細部まで浸透させる必要性があったりと、通常の土魔法を使うよりも魔力が必要だし、難易度も高いようだけどね。

「ぐぬぬぬぬ、水魔法が使えぬ私にそのような事を言うとは当てつけか!」

「ええ? なんで怒るんです!?」

このタイミングでキレる意味がわからない。

「この国では水魔法を使える者は貴重でな。要するにシャナリアの僻みだから気にするな」

俺が戸惑っていると、サルバが訳を説明してくれる。

ああ、ラズール人は土魔法の適性が高い人は多いけど、極端に水魔法を使える人が少ないって聞いた

な。

多分、遺伝的なことだと思うけど、水が命を握るこの国においては水魔法を使える人が偉ぶっていたりするのかな。ちょっとあり得そう。

「……おい、アル。それ以上、後ろに下がると危ないぞ?」

大人げなく威嚇してくるシャナリアから離れようと下がると、サルバがそのような忠告をしてくる。

「え?」

ふと、後ろに視線を向けると、そこには平たい何かが砂に潜んでおり、こちらに飛びかかってきた。