軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シルフォード家来訪

乾燥スライムのお陰で小魚すくいの問題は解決。ノルド父さんの許可も貰えているので、後はエルマンの工房がポイを量産してくれるだけ。

ちなみにスライム一匹につき、ポイ十五回分の皮がとれるので消費率はそこまで悪くない。以前のトリーのように乱獲しなくても大丈夫なようだ。

水槽は俺が土魔法で作ってあげるし、魚についてはローランドやルンバ、ゲイツなどの体力自慢が祭り前日に捕ってきてくれることになっている。

投球ターゲットやキックターゲットも完成し、その期待値の高さから増産した方がいいのではないかと具申されているが、そのままにしている。

収穫祭はあくまでも村人がメインの祭りだ。各家庭で収穫できた食材や、作ったものを見せ合ったり、話したり、売ったり、買ったりして一年の収穫を楽しむ日。

そこを貴族が主催する催し物で埋め尽くすのは違う気がするのだ。あくまでちょっとしたイベント程度で、あくまでの村人達の屋台や催しが主役。

投球ターゲットやキックターゲットばかり並ぶ収穫祭とかちょっと嫌だしね。

そんな感じで村の準備については順調そうなのだが、問題は屋敷の方だ。

何せ今年は大人数の貴族がやってくる。

公爵家であるアレイシアとラーちゃん、さらには伯爵家であるブラム、そして、同じ男爵家のシルフォード家。

過去に例を見ない程の団体客であり、高貴な人達だ。

それらを問題なくもてなすために、屋敷内では準備でてんやわんや。

やれ、この部屋ではアレイシア様には狭いだの、このベッドでは寝かせられないなどと騒いで大忙しで新品の発注。

元々うちの屋敷は小さなものだし、大勢の客を招いてパーティーや宿泊するようなことは考えていないので、最上のもてなしをするというのは不可能なのであるが、できる限りの努力をするのが主催者の務めというものか。

俺もサイキックによる家具の移動や掃除などに付き合わされるという、村の準備とは対照的な屋敷の忙しに見舞われた。

そんな風に慌ただしくもどこか楽しい日々はあっという間に過ぎ。

収穫祭の前日。貴族達が訪れる日を迎えた。

いつもは穏やかな時間であるはずのリビングも、どこか緊張した空気が流れている。

この後に客人が来るからだ。

ノルド父さんは、いつもよりもいかめしそうな顔をし、少しソワソワしている。

隣に座るエルナ母さんは、そんな緊張を感じさせないかのように優雅に紅茶を飲んでいるが、さっきから視線がチラチラと扉に向かっていた。

「二人共、緊張してるね」

「そりゃそうだよ。シルフォード家はともかく、他は公爵家と伯爵家だよ? そんな人を招いたことなんて一度もないから」

「招いたというよりシルフォード家以外は、向こうが勝手に来たいと言い出したんだけどね」

「本当にね。ルーナのとこだけでいいのに……」

ブラムが来るからだろうか、エリノラ姉さんが遠慮なく物を言う。

「ブラムは面倒だろうけど、ラーちゃんはいい子だよ」

アレイシアについては俺もよくわからないのでノーコメントだ。

俺がそのようにフォローすると、エリノラ姉さんが興味を示す。

「どんな子なのよ?」

「とっても無邪気で可愛らしい年下の女の子だよ」

「へえ、年下の女の子ねぇ……」

なんでそこだけを意味深に言うんだ。

エリノラ姉さんが何を思っているのか全くわからない。

「とにかく、この中で全員と面識があるのはアルだけだろうから頼むよ?」

「頑張るけど俺がコントロールできる人達じゃないからね」

シルヴィオ兄さんが期待を寄せてくるが、あくまで俺は安請け合いをしたりはしない。

エリックとラーちゃんはともかく、ブラムとアレイシアは何を言い出すかわからないからな。顔見知り程度では限界があるし。

にしても、ラーちゃんやエリックと遊べることは嬉しいが、アレイシアやブラムまでもが泊まり込むのは俺にとってもあまり嬉しくない。

何故に安らぎの場である屋敷でまで相手に気を遣わないといけないというのか。

これも貴族故のしがらみというやつなのだろうな。いざとなったらマイホームで寝泊まりしてやろう。

俺がそのような決心をしていると、リビングの扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼いたします。シルフォード家の皆様がいらっしゃったようです」

どうやら最初に着いたのはシルフォード家のようだ。

まあ、こちらは手紙などで早めに到着すると伝えてくれていたので、予想の範囲内だ。

「わかった。そういうことだから外に出て迎えようか」

ノルド父さんがそう言って玄関に向かい、俺達も後をついていく。

玄関を出ると少し冷たい空気が肌を撫でる。

季節はもう十月の半ば。気温も少し下がり、半袖ではなく長袖や羽織ものが必要だ。

逆にいえば、それだけで適温になるというのだから、秋というのは何と素晴らしい季節なのだろう。

冬や夏では多少、衣服を切り替えようがどうしようもないからな。

景色を見渡すとあれだけ青々しく茂っていた木々の葉は、徐々にそれを紅葉へと近付けていた。黄色やオレンジ色に染まった斑点が良く目立つ。しかし、まだ紅く染まるには早いようだ。

こうして木々を見るだけで季節の変化が顕著にわかるな。

空の天気は真っ青で雲一つない。これを見るに本番である明日の天気も恐らく大丈夫だろう。

なんて風にボーっと風景を見ていると、遠くから馬車の音が聞こえてきた。

「どうやら来たみたいね」

エルナ母さんの言葉を耳にしながら視線を前に向けると、門の奥から馬車が近付いてきていた。

馬車の側面には見たことの剣の紋章がついている。間違いなくシルフォード家だ。

両脇には馬に乗ったルンバとゲイツがおり、こちらへと真っすぐに近付いている。

今日はルンバやゲイツに先導を頼んでいるのだ。

シルフォード領に行った時は俺達も先導してもらったからな。今回はその返礼という奴だ。

それに今日は他にも貴族がくるし、こうでもしないと格好がつかないからな。

サーラとミーナが門を開いて一礼する中、馬車はゆっくりと進んで俺達の前で停車した。

御者席に乗っていた執事のラルゴは降りるなり、速やかに馬車の扉を開けた。

すると、エーガルさんが初めに降り、それをエスコートする形でナターシャさんも出てきた。

二人共にこやかに笑い合っており、夫婦の睦まじさが感じられる光景だ。

ノルド父さんとエルナ母さんがやった時の光景を見て、やりたくなったのかもしれないな。

続いてエリック、ルーナさんが丁寧な足取りで降りてくる。

本来ならば騎士である兄がいるようであるが、扉が閉められた様子を見ると今回も欠席の様子だ。多分、王都の騎士団の仕事が忙しいのだろうな。

コリアット村にくるには最低でも二週間もの休日が必要になるだろうし、騎士団でそれほど休みがとれるイメージがない。

「わざわざ先導や出迎えをありがとう、ノルド殿」

シルフォード家の当主であるエーガルさんが、最初に口を開いた。

「いえ、以前お世話になりましたからね。今日は遠いところからお越し頂き、ありがとうございます」

「ははは、ノルド殿。もう知らぬ仲ではないのだ。そろそろ砕けた口調にしてくれると嬉しい」

「わかった。歓迎するよ、エーガル殿」

どうやら前回の訪問を得て、当主同士も仲良くなったようだ。

エーガルさんの年齢もノルド父さんと同じくらいだし爵位も同じ。

遺憾ながらも息子や娘同士の付き合いもあるので、付き合いやすさは一番だろうな。

「元気そうね、ナターシャさん」

「エルナ様! お会いできるのを楽しみにしてました!」

こちらの奥さん陣も仲が良いよう。綺麗女性二人が喜ぶ姿を見ると、こちらも微笑ましくなる、

そして、エリックが俺の方にやってくるなり、肩に腕を組んできた。

「アルフリート。ちょっと来い」

「なになに?」

と尋ねるも、エリックは聞く耳を持たずにズルズルと歩き出す。

どうやら、挨拶よりも先にやましい会話をご所望のようだ。

エリノラ姉さん、シルヴィオ兄さん、ルーナさんが訝しげにこちらを見る中、俺達は少し離れる。

ある程度距離が離れるとエリックは、こっそりと耳打ちしてくる。

「返事の手紙に書いていたのだが、アレイシア嬢がやってくるというのは本当か?」

ああ、エリックが知りたいのはそのことか。

普通に俺達の屋敷に泊るだけと思ったら、公爵家や伯爵家がいたという状態になれば心臓に悪い。だから、シルフォード家には状況がわかったところで追加情報の手紙を送っておいたのだ。

そう言えば、コイツは無謀にもアレイシアが好きだと言っていたな。

高嶺の花だから止めておけと忠告したのだが、まだ気になっているようだ。

「そうだよ。なんでかわからないけどラーちゃんと一緒に来るみたい」

「そうか! ならば、いいのだ!」

情報が確かなものだと保証してやると、エリックは嬉しそうに笑いながら俺の背中を叩いた。

広い豪邸や屋敷ならともかく、うちの屋敷は見た通りそれ程広くない。

気になる相手と同じ屋根の下ともなれば、年頃の少年がワクワクしてしまうのも当然だろうな。

「覗きとかはやめてくれよ?」

「だ、誰がそんなことをするか!」