軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シルヴィオバリア展開!

エリノラ姉さんとの模擬戦が終わると、次の相手はルーナさんだ。

剣であれば連続だなんて死に等しい所業であるが、魔法であればそこまで疲れたりしないので楽である。

とはいえ、エルナ母さんに加減して戦うようにと言われたので、そこが難しいところだ。

無限ランニンマシーンや砂移動で距離を取り続けるというのは禁止されてしまったのだ。

理由はえげつなさ過ぎるとのこと。確かにあの戦術は俺が一方的に遠くから叩くための戦術であり、対エリノラ姉さん用に考えたもの。理不尽な塊であるエリノラ姉さん以外に使うのは、少しやり過ぎだと思った。

とはいえ、ちょっとした回避や移動の妨害くらいの規模だったら、使ってもいいと言われているので加減さえすればいいだけだ。

「では、始め!」

ぼんやりと離れた場所にいるルーナさんを見つめていると、エルナ母さんから開始の声が上がる。

すると、ルーナさんは早速とばかりに土弾を飛ばすための詠唱をしてくる。

エリノラ姉さんの時は本当に魔法を使うか気になったので様子見としたが、別に気になることがなければ待ってあげる必要もない。

ルーナさんよりも早くに土弾を作って射出する。

ちなみに魔力の圧縮もせず、当たっても砂が弾ける程度の安全仕様だ。

「我は求める 大地よ……くっ」

俺の飛ばした土弾により、ルーナさんは詠唱を中止して移動する。

大して速くも飛ばしていない俺の土弾は呆気なく躱されて地面で弾けた。

「我は求める 大地よ 隆起して……」

そしてまたルーナさんが詠唱してくるので、俺はそれを妨害するように土弾を飛ばす。

すると、ルーナさんはまたもや詠唱を中止して回避運動をとった。

真剣な表情で戦いに臨んでいたルーナさんであるが、ここにきて表情がムッとする。

「……アル君が意地悪」

「まあ、俺の方が魔法の発動が速いから」

魔法主体の戦いになると、どうしても速く撃ったものが有利だ。

それだけ速度というのは単純にして分かりやすい力の差ということだろう。

「……無詠唱はズルい。私と同じように詠唱して」

「頑張って躱しながら詠唱とかできない?」

「……私の実力だとさすがに無理」

動きながら魔法を使うのはかなり難しいからな。手足を動かしながら内にある魔力を制御しつつ、イメージもして魔法を使うのだ。

俺も歩きながら魔法を使ったりするのには随分と苦労した。

でも、だからこそ今のうちに練習しておくべきだろう。

止まって撃つよりも躱しながら撃つだ。

「じゃあ、今それを練習する機会ということで」

「……えっ」

俺は呆けるルーナさんが疲れるまで土弾を射出し続けた。

もはや土弾を躱すことができなくなるほどルーナさんの体力がなくなり、模擬戦闘が終わると、

「……アル君も、こういう無茶なところはエリノラと似ている」

あの理不尽な姉と似ているとは失敬な。

ルーナさんとの模擬戦が終わり、少しの休憩を挟むと今度はシルヴィオ兄さんとやることになった。

シルヴィオ兄さんはそつなく簡単な魔法をこなすが、ルーナさんやエリノラ姉さん程身体能力が高いわけではないので、ノルド父さんが言ったような魔法をポンポンと撃ち合うくらいのものだろう。

「アル、僕は姉さんやルーナさんみたいな身体能力はないから加減してね」

「うん、さすがにあれらが異常なことはわかるから」

エリノラ姉さんやルーナさんの身のこなしを一般的と考えてはいけない。

それを重々承知している俺は、シルヴィオ兄さんには一層気を遣って魔法を使うことにした。

「では、始め」

エルナ母さんから開始の声が上がると、シルヴィオ兄さんが早速とばかりに詠唱を始める。

「我は求める 大気より集いし……うわっ!」

シルヴィオ兄さんが攻撃魔法を発動しようとするので、俺は先に土弾を飛ばして邪魔をする。シルヴィオ兄さんは詠唱を中断し、集中力を欠いたようなので魔法のやり直しだ。

本当ならば、ルーナさんの時のようにこのまま遠くから一方的に魔法を放つことだけをしたのだが、それをするとあまりにもシルヴィオ兄さんの練習にならないので、俺はシルヴィオ兄さんの詠唱を待ってあげることにした。

うん、何かしらの事情なりで詠唱する時間が稼げたということにしてあげよう。

「『我は求める 大気より集いし 鋭き風の刃を』」

ん? ちょっと待って。それは風の刃じゃないかな? 対人戦で使うにはかなり危ない魔法だよ? さっきエルナ母さんが相手をするなら自分か俺だと言っていたが、本当に使わせるとは容赦ないな。

俺は無意識に冷や汗を流しながら無魔法のシールドを二枚展開。

自分の魔力であれば、シールドが一枚でも十分に防げると理解しているものの、自分がマイホームを建てる時に、風の刃には散々お世話になったのだ。その切れ味は十分に理解している。それ故に二枚くらいないと不安だった。

どうせ魔力なら有り余るほどにあるのだから、このくらいの余分で心の平穏を保てると思うと安いもの。

そう心に言い聞かせていると、シルヴィオに兄さんから風の刃が飛来してくる。

俺は心の中で大丈夫だと連呼しながらも、いつでもその場から身を投げ出して回避できるように備える。

しかし、そんな俺の心配は無駄なもので、俺の張ったシールドは無傷で風の刃をカキイインと弾き飛ばした。

そのことにホッと胸を撫で下ろす。

「さすがは俺のシールド」

自分の防御魔法が相手の攻撃魔法を余裕で弾き返す姿を見ると、少し自信がつくな。

というかシールドに逞しさすら感じられる。

ああ、よくある物語で主人公に助けられるヒロインの気持ちというのはこういうことだろうか。

目の前で自分を守ってくれる後ろ姿。とても大きく一緒にいれば安心する。

シールドは最高だな。

「というかシルヴィオ兄さん、容赦なく風の刃を放つとか酷くない?」

「えっ、いやでもアルなら魔法で防ぐだろうし、父さんや母さんもいいって言うから……」

シルヴィオ兄さんの言葉を聞いて、視界の端にいるノルド父さんに視線を向ける。

すると、ノルド父さんは黙って頷き、後ろにいるであろうエルナ母さんに視線を向けると、

「アル、戦闘中なんだから前を向きなさい」

と言われるだけであった。

確かに平気だけど、まさか本当にやらせるとは。

まあ、いいや。俺には頼もしいシールドがいるから。

これさえ張っておけば俺は安全だ。

守るだけではつまらないので、俺はシールドを設置したまま土弾を飛ばす。

「『我は求める 大気渦巻く 旋風の守りを』」

すると、シルヴィオ兄さんは先程の風の刃の詠唱速度とは段違いの速度で詠唱を完成。

シルヴィオ兄さんを中心に風が渦巻いて、ドーム状に広がる風の防壁となる。

俺の飛ばした土弾は圧縮もしていないせいか、風の刃にぶち当たると渦巻く風によって粉々にされてしまった。

「うわっ、出た! シルヴィオバリア!」

「シルヴィオバリアじゃないよ! 風の防壁だよ!」

風魔法における防壁というのは、相手の魔法を風に流したり、その吹き荒れる鋭い風で切り刻んで迎撃することにある。

今回は後者。しかも、それも自分を中心に展開しているときた。少しでも調節を間違えれば自分が切り刻まれるかもしれない魔法なのに涼しい顔で使っちゃって。

改めてシルヴィオ兄さんには防御の才能があると思った。

この後、エリノラ姉さんと一緒にいじると、シルヴィオ兄さんは拗ねた。