軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

転生

フワリとした浮上感と共に俺は目覚める。

巨人か何かに手掴みで持ち上げられるかのような感覚に思わず動揺してしまう。

(うわっ! 何だ何だ!)

「おぎゃああぁ! おぎゃあああ!」

自分の意思とは違い、口から出た声は赤ん坊の泣き声なようなもの。

何やら人間が何人かいるようだが、よくわからない。目は開くことができなく、耳もよく聞こえない。

とにかく眠い。状況を確認したいのだが、抗えない眠気が俺を酷く襲ってくる。

……本当に……転生したのか?

ーーーー

それから一週間ばかり経過した。

最初は訳もわからず不安でもあったが、最近は目も見えるようになったし、耳も聞こえるようになった。

そのお陰かだんだんと状況がわかってきた。

俺の部屋は赤ん坊用のベッド、クローゼットに机と質素な物だった。

寂しいかもしれないが、落ち着く部屋だ。

そもそも赤ん坊の部屋なんだ怪我しやすいものさえ、無かったら大丈夫だろう。

床の敷物は俺の為だろうか? 随分と柔らかそうだ。動物か何かの毛か? それとも綿とか?

未だに俺の世界はこの小さなベッドだけだから、わからん!

ともあれここは本当に神様とやらの言う通りに田舎の領主? 統治してる貴族? なのか?

たまに窓を開けてくれる時には、すぐ近くから木々が風によってざわめく音が聞こえ、綺麗な空気が入ってくる。

日本の空気がゴミのようだ。

最近はこんな風に俺の活動時間も延びてきたので、暇な時間も多い。

早く歩きたい。

色々な行動の選択肢がある中で、だらだらしたり、遊んだりしたいのだ。強制的に休まされるというのは、どうも会社の有給とかみたいで嫌だ。

そんな訳で俺は少しでも早く、身体に慣れるように特訓している。

と言っても、無理のない範囲で手や足を動かしたりするだけなのだが。

まだ一人座りも出来ないので、それが終ると暇だな。

神様は魔法が使えるって言ってたけど……どうやって使うんだ?

そう考えていると、扉の向こうから足音や話し声が聞こえてくる。

多分俺の両親だ。

やがて扉を開けて入ってくる俺の両親。

おや? 今日は見知らぬ子供が二人いる。ひょっとして姉弟か何かだろうか?

栗色のフワフワとした長い髪の毛をしていて、優しい笑みを浮かべているのが多分俺の母親。すごく美人だ。

「ーーーーーー♪」

優しい声で俺に声をかけながら、俺をゆっくりと抱き上げる。

「ーーーーーー」

その隣りには金髪の髪をして、透き通るような青い瞳をしている男性。多分俺の父親。

スゴくイケメンだ。キザな感じは全くしない。

両親共にすごく美形だな。それとも異世界は美形が多いのだろうか? 俺だけブサイクとかだと少しへこむかもしれない。

「ーーーーーー?」

父親が恐る恐る俺の頬っぺたをプニプニと指でつつく。

「ーーーー」

「ーーーーーー?」

耳は聞こえてくるようになったが、言葉が全くわからない。残念ながら日本語じゃないようだ。

……また俺は言葉を勉強しなければならないのか。英語は苦手では無いが、得意でもなかったぞ。

そして今日初めて見る二人の子供が俺をじーっと見てくる。

母親と同じ栗色の髪をした少女。年は六才くらいだろうか?

もう一人指を口に加えている金髪の男の子。こちらは三才くらいか?

子供達に俺が見えるようにと、母親が身を屈める。

すると子供達は俺の頭を撫で始めた。

こら、金髪の子。ちょっと痛いぞ。

満足したのか、父親が子供達を連れて部屋を出ていく。

そして母親が残る。

どうやらまたあの時間だ。

母親が胸を出して俺の顔に近付ける。

こんな赤ん坊だ。性欲など感じるはずもない。となると少し恥ずかしい。産まれてからもう一週間は経つがまだ慣れない。

何時ものご飯の時間なのに飲もうとしない俺を見ると母親は心配そうに俺を見てくる。

ごめんなさい。飲みます。そんな顔をしないでください。

こうしてお腹がいっぱいになり、眠気がやってくる。

お休みなさい。

ーーーー

「……暖かい……この感覚はどこかで……」

そうまるで、神様と出会った場所のような……

「正解じゃよ」

「うわああ!」

突然俺の目の前にドアップで現れた神様。

俺が驚いて声をあげるのを聞いて、満足気に頷く神様。

何てことをするんだ! 死神かと思ったぞ!

「何じゃと!失礼な!あんな奴と同じにするでない!」

心外とばかりに怒りだす神様。死神も存在するんだ……

さてともかく今はどういう状況だろうか?

「ゴホン……今はお主の夢の中に失礼させてもらっておる。無事に転生できたようで何よりじゃ。さて、今回お主にこうして会っている理由は魔力についてじゃ」

「魔力ですか?」

「そうじゃ。まあ本来なら遅かれ早かれ学べるであろうが、今回は空間魔法のために早めに注意点を教えておく」

まあ、魔力自体よくわからんしな。注意点って何だろう?

「ふむ。まずは空間魔法についてじゃ。これは本来ならば特別なものしか扱う事が出来ぬ、今や古代魔法と分類されるもの。その効果は凄まじいものじゃが、代償に多大な魔力やイメージなどの条件もある」

「つまり?」

「お主に授けたは良いが、魔力が足りなくて使えない」

「おい!」

「まあまあそう慌てるでない。そうならない為に今日はこうして夢の中に失礼しておるのじゃ」

何だ。良かった。ついその髭をむしりそうになっちゃったよ。流石神様優しい。

「じゃろじゃろ?」

いい年して何照れてるんですか。

……ん? 待てよ? 転生前にしっかり説明してたら二度手間にならなかったんじゃ?

「さーて、説明するのじゃ!一回しか言わないからしっかり聞いておくのじゃぞ!」

急に声を大にして言い放つ神様。

この人絶対誤魔化したな……。

ーーーーーー

空間魔法の注意点や魔力についての説明をを終えた。

この神様は結構抜けているので、たまに質問してみる「あっ、そういえば」とポロポロと重要なことが落ちてくる。油断ならない。

「と言う訳じゃから、キチンと毎日やるんのじゃぞ?」

「はい!ありがとうございます!」

「最後にお主のために、軽く魔法をみせてやろう!特別じゃぞ?特別じゃぞ?神様の魔法じゃぞ!」

実はこの神様久しぶりに喋る相手がいて楽しくなっちゃってるな?

「わあー!見たい見たいです!」

はいはい、わかった。わかった。早く見せて。

「……無邪気な声をあげながら、心の中で何てことを思っておるのじゃ。じゃあまずは魔法から! 魔力の流れから魔法発動までしっかり見るのじゃぞ!」

一瞬ジト目でこちらを見ながら呟いていたが、気をとりなおしてテンションを上げていく神様。

「じゃあまずは!ライト!」

自信満々に杖を振りかざす神様。杖の先からは輝かしい光が点いている。

……いきなり灯りって地味ののような。もっとファイヤーとか期待してしまいましたよ。

「何を言うか!初心者の練習にこれ程、安全かつ、練習になるものは無いのじゃぞ!? 少量の魔力で発動でき、さらに魔力を流し続けることによる持続時間!スゴいじゃろ! 」

「むう、確かに言われてみればそうかもしれません」

悔しいことに今回は神様の言うことがまともかもしれない!確かに初心者にはうってつけだ。何かやけに熱意が入っていた気がするが……

「じゃろじゃろ? 無属性は素晴らしいのじゃぞ? 最近の魔法使いは火や雷や氷などと派手なものばかり好んで基礎を疎かにしがちなのじゃよ」

この神様が個人的に無属性が好きって言うのもありそうです。

俺を無属性信者にしようとしてもダメですよ? 無属性である空間魔法も素晴らしいですけど、火や水も生きていく上で必要で便利なんですよ?

「まあわかっておるのなら良いのじゃ……じゃあ頑張るのじゃぞ」

神様はそう最後に言葉を残すとスーっと消えていった。

最後は結構あっさりしている。

神様ありがとうございます。

またすぐに会いそうな気もしますけど。

そして意識が現実に引っ張られていくように、俺の視界も次第に暗くなっていった。