軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最後は自分で選ぶ

俺がエリノラ姉さん用の甚平を選らんで、しばらく。

ようやくアリューシャとイリヤがやってきた。

「お待たせー! 私達も服選びは終わったわ!」

「すいません、時間がかかってしまって」

この言葉を聞くだけで二人の性格が大体わかるというものである。

「こっちもゆっくり休憩できたからいいよ」

今日は朝からずっと歩き回っていたからな。ここで休憩をとっていたと思えば大した心労にならない。こういうのは考え方次第で気持ちも変わるものだ。

「それじゃあ、エルナ母さん達のカグラ服を選ぼうか」

「ええ! 私達も自分のカグラ服を選ぶ間に目星はつけておいたから、後は候補の中から選ぶだけよ!」

おお、それなら早く選ぶことができそうだな。

アリューシャとイリヤに促されながら、俺とルンバは女性用のカグラ服がある部屋へと移動する。

「おー、男性用のカグラ服とは全然様子が違うな」

「色がたくさんあるね」

部屋へと入ったルンバと俺は辺りを見回しながら感嘆の声を漏らした。

女性用の部屋は男性よりも色味が鮮やかで派手めな物が多く、男性側の部屋とは異なる雰囲気を持っていた。

色彩の鮮やかなものから暗めのものまであり、お客さんの要望に応えられる色を取り揃えている。見ているだけでも楽しい部屋だな。

「……えーっと、確かここにあったやつと、これと、これが似合うわね」

物珍しく眺めながら室内を歩いていると、アリューシャやイリヤが目星をつけていたカグラ服を手に取っていく。

手に取ったカグラ服を畳スペースに置くと、また次の服を取りに忙しなく移動する。

俺とルンバにできる事は邪魔にならないように畳の上でジーっと待つことだけだ。

そうしていると次々と目の前にカグラ服が置かれて、

「大体こんなものかしら?」

「そうですね! 本当はもっとたくさん候補があったのですけどね」

「いやいや、もう十分だから」

これ以上持ってこられると畳の上に置くことができないぞ。

女性のあくなき衣服への熱意に呆れながらも、俺は並んだカグラ服に視線を巡らせる。

そこには赤やら黄色やら白といったカグラ服があるのだが、誰が誰へのお土産かまったくわからない。

「右の列からエルナ様、エリノラ様、サーラさん、ミーナさん、メルさんです」

俺の戸惑いを察したのかイリヤが優しく補足してくれる。

「エルナ様はとても落ち着いており、色気もあるので、女将さんのような落ち着いた色合いがいいかと思いました」

イリヤの解説に頷きながらカグラ服を見ると、緑、茶色と緑のグラデーション、淡い黄緑色と大人びた色合いのものが確かに多い。

「そうだね。エルナ母さんにはこういった落ち着いた色合いが似合いそうだもんね」

「……そうね。大人の女性としての魅力も凄いようだし。何なの? あの胸囲の数字は……? 世の中間違っているわよ」

俺とイリヤが朗らかに会話をしていると、近くにいるアリューシャがブツブツと呟いた。

どうやらエルナ母さんの胸囲の数字を聞いて、絶望にうちひしがれているらしい。

イリヤもきっとかなりの数字を誇るものだから慰めたら逆効果だろう。

ここはそっとしておいてあげるのが優しさというやつだ。

「次はエリノラ様です。エリノラ様はなんといってもあの髪色が強みなので、髪色に合うような色合いを選びました」

イリヤの言うように視線を向けると、そこには赤や黒を基調としたものが並んでいる。

やっぱりあれだけ綺麗な髪色をしていると赤系統の色がシンプルに似合うんだろうな。

「エリノラ様は可愛い方面でもいけますが、カグラ服で彩るとなると綺麗な方面で攻めるのが一番ですからね!」

どこか熱の入った声音で拳を握り締めるイリヤ。

それは俺も同感で反論する余地もないな。

「そして次はメイドであるサーラさんですね。サーラさんはカグラ人のような艶のある黒髪を持っていますので、白色や青といった涼やかな色にしてみました」

イリヤが手をやるところには、白と青い花柄が混じったものなどが置かれてある。

艶のある黒髪を持つサーラに、白色は確かに生えるね。

雪女みたいな静謐そうな美しさが出ると思うし、予想以上に似合うかもしれない。

「あれ? こっちの緑色のやつは?」

そんな涼やかな色合いのカグラ服の中に、素朴な緑を基調としたものが並んである。

どこかで見たことがあるような……。

「それもサーラさんのものです。涼やかな色もいいですけど、町娘のような素朴な色も似合うんじゃないかと思いまして」

「ああ! そういえば、甘味屋さんの看板娘さんとかもこんな色のカグラ服を着ていたね!」

道理で見たことがあると思ったよ。

でも、こういうのも親しみがあっていいよね。

カグラの町娘とかもこんな色合いの物を着ていて、可愛いなーって思っていたんだ。

「そしてミーナさんです、ミーナさんとは少ししかお話していませんが、見た目だけでなく内面もとても可愛らしく元気な人だという印象を受けました。あの人は赤やピンクなどで可愛く彩るよりも、こういう明るい黄色などで魅せる方がいいと思います!」

確かにミーナはピンクや赤よりも、こういう黄色やオレンジといった元気な色の方がいいもんな。にしてもイリヤは選んだ理由を述べるのが上手いな。

帰って、何故こういう色を選んだのか? という問いが投げかけられたらイリヤの言葉を一言一句真似して回答するようにしよう。

「そして最後はメイド長であるメルさんです。メルさんはエルナ様と違ったタイプの大人の女性なので淡い紫色などにしてみました」

「まあ、見た目の割に大分擦れた感じのメイドさんだけどね」

磨けばもっと綺麗な女性だと思うんだけど、そんなつもりは全然ないんだよねぇ。

しっかりした女性であるけど、細かい生態や考え方が意外と謎なメイドである。

「以上が私とアリューシャが選んだ服と理由でしたけど、どうでしたか?」

「うん、これならどれを選んでも似合うイメージが湧くよ」

「アルフリート様にそう言ってもらえてよかったです」

俺が本心からの感想を言うと、イリヤが嬉しそうに微笑む。

「……問題はここからどれを選ぶかだよ」

それぞれ候補を上げられたが色の明るさ、柄とかで五種類くらいは置いてある

これでも絞った方なのだとは思うが、さすがに全部買うわけにもなぁ。

というかそもそも値段だって見ていない。こういう着物とかは一着何十万とか当たり前にしちゃうしな。

「小判三十枚以上の値段のものは省いてみようか」

俺がそう呟くと、店員さんは値段を把握しているのか値段以上のカグラ服を端に寄せていく。

そうすると、エリノラ姉さんの服から一枚、エルナ母さんのところから三枚、サーラから一枚の服が抜けた。

どうやらエルナ母さんのものが一番高いのが多いようだ。

「メイドさんや、あんまり服に興味のないお姉様ならともかく、エルナ様のカグラ服まで安くしていいの?」

俺が高いカグラ服を候補から省いていると、アリューシャがどこか咎めるように言ってくる。

うう、そう言われると確かに。

エルナ母さんは何より服を楽しみにしていたしな。

エリノラ姉さんやメイドと同じ値段のものにしておいたら、後々面倒くさそうだな。

「よし! じゃあここはノルド父さんが甲斐性を見せるとして、金貨五十枚くらいまでの範囲にしよう!」

俺がそう告げると、エルナ母さんのカグラ服が二枚、元の位置に戻った。

残っている一枚の値段が怖くて聞けないや。

「にしても、これだけお金を使っても大丈夫なのか? エルナが言っていた白金貨一枚までっていう条件を越えるぞ?」

「大丈夫! もし、帰って文句を言われたら、事前にノルド父さんからエルナ母さんのカグラ服は高い物にするように言われたって、エルナ母さんに言い訳をするから」

そうすれば、夫であるノルド父さんは引っ込みがつかなくなるし、大事にされていたエルナ母さんも悪くは思わないはずだ。

エルナ母さんはノルド父さんが絡むとチョロいしね。

「おお、なるほど。相変わらずアルは悪知恵が働くな」

「これは親孝行だよ」

人聞きの悪い言い方は止めて頂きたい。

どうせリバーシで儲けているんだ。これくらいの出費は誤差みたいなものだろう。

「それじゃあ後はアルフリート様が選んでください」

「えっ? イリヤとアリューシャが一緒に選んでくれるんじゃないの?」

やんわりと言うイリヤの言葉に俺は呆然としてしまう。

「私達がお手伝いするのは似合うカグラ服の候補を選ぶところまでです。ここからは家族であるアルフリート様が選ぶのが一番ですよ」

「やっぱり家族が選んでくれた方が本人としては嬉しいものだしね」

などと言う二人だが、俺の心には一つの猜疑心が募っている。

「……もしかして、選んだ責任を俺にとらせるために最後はこっちに選ばせるとかじゃないよね?」

「ち、違いますよ!?」

「ち、違うわよ!?」

何だか二人の表情が硬くて怪しい。

ここで俺が選び、エルナ母さん達に持って行って気に入られなかったら俺が責められる。

女性である彼女らの意見を参考にしたと吠えても、彼女達が「最後はアルフリート様が選らびました」と言えば、覆しようもないのだ。

そうならないためにも俺としてはイリヤとアリューシャと選んだ呈にしておきたかったのだが……。

「ご家族を傍で見てきたアルフリート様が一番良い物を選べるはずですよ!」

「そうよ!」

そうなのかな?

まあ、仕方がない。最後は俺がきちんと選ぶか。

そうやって俺はエルナ母さん達に似合うカグラ服を選び、お土産として買った。

エルナ母さん達のカグラ服を買った俺は、イリヤとアリューシャの買い物に付き合いつつも、相談しながらも髪飾りや雑貨といったお土産を次々と購入した。

無事に必要な物を買いそろえる頃にはすっかり空が茜色に染まり、その日は安堵感と満足感を得て帰った。

そして日が暮れて旅館に戻ると、お土産を旅館に送りつけすぎだとトリーに怒られてしまった。