軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話.メタモルフォーゼ

木曜日もこれで終わり。

明日行ったらもう今週も終わりか、ヴァルハラに通いだしてから、毎日が凄く速く感じる。

「付き合わせて悪かったわね玲央君」

「ううん。リーシャさんの技をずっと見れて役得だったよ」

「ふふ、またそんな冗談を言って」

いえ、本心なんですけど。

ゲームで見た技を、リアルで見れるこの役得感。

「榊……! 無事だったか!」

「「!?」」

そんな時だった。

美樹也の姿をした『何か』が親しげに話しかけてきた。

「この辺りで魔族が現れてな、大勢の人達を巻き込んだ襲撃を仕掛けてきたようだ。俺はそれを追っていたんだ」

「……そうなんだ」

「え? 玲央、君……?」

ああ、今の俺はとても怒っている。

こんな、ガワだけを似せたモドキの存在に、俺の推しを汚されたような気分だ。

「遭遇したら危ないからな。俺も送ろう」

そう言って後ろを向いたところで、リーシャさんへ言う。

「リーシャさん、斬れ」

「!? 了解っ! 『天魔連斬』」

「なっ!? ぐあぁぁぁぁっ!!」

一瞬躊躇ったものの、リーシャさんは俺の顔を見てすぐに美樹也の姿をした何かを斬り捨ててくれた。

斬られて姿を維持できなくなったのか、魔族がその姿を現した。

「!! 魔族!?」

「なぜ、だ……俺の、『メタモルフォーゼ』の術、は、完璧、だった、はず……なぜ、分かった……?」

「当たり前だ。お前は俺の推しを分かっちゃいない。第一に美樹也は俺の事を玲央と呼ぶ。第二に、美樹也がポーズを取らないで話しかけてくるなんてありえない」

「呼称、か……いや、ポーズとは……?」

「俺の大切な仲間を、ガワを似せただけで真似できると思うな……! 例えお前のように姿形だけを真似してきたところで、俺が俺の推し達を間違えるわけないだろ……!」

「ぐ……ぅ……言葉の意味は、分からないが……む、ねん……」

魔族はその姿を溶かし、消えていく。

まぁ、もう一つ確かな根拠として、美樹也の魔力と全く違ったのもあるけどね。

流石にこの根拠が無ければ、もう少しだけ様子見したと思う。

ってしまった! つい熱くなって語ってしまった……推しとか、リーシャさんに聞かれてしまったどうしよう!?

「ふふ、流石は玲央君ね。私には名前呼びの違和感しか感じなかったわ。まだまだね私も」

良かった、リーシャさんは気にしていないようだ。

「それじゃ、帰ろっか」

「ええ。でも魔族が侵入してきていたのは事実だから、気を付けて帰りましょう」

「うん、そうだね」

そうしてその後は何もなく、無事に家に帰る事が出来た。

「『俺の大切な仲間を、ガワを似せただけで真似できると思うな……!』か、フ……玲央の奴はこれを素で言うのだからな」

「ははっ! だよな美樹也。あの『メタモルフォーゼ』の魔法は厄介すぎるぜ。見失ってここまで美鈴のお陰で追えたのは良かったけどよ、まさか美樹也に化けるとはよ」

「あいつの魔力は特徴的だったから、何とかってレベルよ。玲央のようにはっきりとは私にはまだ追えないわ」

「玲央が無事で安心したが、俺はまだパトロールに戻る。付き合わせて悪かったな烈火、百目鬼」

「気にすんなよ! 仲間じゃねぇか!」

「そうそう。ま、玲央のせいで人助けしたくなるのよね。なんていうか、玲央に褒められると嬉しいじゃない?」

「分かるぜ美鈴」

「フ……そうだな。他の者に言われても、胸に響かないんだが……何故か、玲央の言葉は心に刺さる」

「多分、本心だからじゃねぇか?」

「!!」

「あー、そうよね。玲央ってすぐに顔に出るから。さっきも、本気で怒ってたわよ氷河の姿をした魔族に」

「ああ。あいつは凄い奴なのに、常識がどっか抜けてて放っておけねぇ奴だけどよ……その根底にさ、俺達の事を本気で想ってくれてる事が分かんだよな」

「……成程な、そういう事か。他の者の賛辞は、うわっつらだけのもの。だが、玲央は違う。本気でそう思っていて、言葉にするから……心に届くんだな」

「だと思うぜ。だからか、玲央に褒められたくて頑張っちまうんだよなぁ。これは不味い傾向だって自分でも分かるんだけどよ。でもよ、あいつの純真な顔で凄いって言われたらよ、やっぱ嬉しいんだよな」

「あはは! 私もそうね。私は役割が玲央と似てるところあるから、もっと教えて貰わなくちゃ。明日は私達で玲央の予定埋めちゃいましょ氷河」

「フ……そうするか」

「あ、ずりぃぞ!? 俺だって今週は玲央と午後居れてねぇんだからな!?」

なんて会話があった事を知らない俺は、家に帰ってからテレビで魔族の襲来があった事がニュースになっていたのを見た。

つい先ほどの事なのに、この世界の報道陣は優秀だなぁ。

「うへぇ、『メタモルフォーゼ』の魔法かぁ。あれって魔族しか使えない闇魔法の一つだよねおにい」

「そうだぞ。魔族でも本当に一部の者しか使えない、特殊な魔法系統だな」

確か魔王も使えない魔法の一つだったはず。猫になってるのは『メタモルフォーゼ』の魔法ではないからね。

「あんなので家族に変身されて近づかれたら、油断しちゃうよね」

「そうでもないだろ。俺は咲や拓に変身されても、一瞬で見抜ける自信があるぞ」

「!! も、もう! おにいはそうやってカッコいい事を言って不意打ちする!」

え? 家族なんだし、分かるのは普通では?

「おーい兄貴! 姉貴! 風呂沸いたぜー!」

「あ、私先に入ってくるねおにい!」

「お、おーう」

何故か顔を真っ赤にした咲は、足早にお風呂へと向かっていった。

「兄貴、姉貴になんか言った? すっげぇ顔赤かったけど」

そう拓に聞かれたので、ニュースの件と今言った事を伝えたら、

「……そういうとこだぞ兄貴」

と、頬を赤らめ手を顔にあてて言う拓。

何故?