軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16話.彰先輩と陽葵先輩

「おっと、ダンジョンに行く前に腹ごしらえさせてくれな。腹が減っては戦はできぬってな!」

そういえば、お昼になったばかりだった。

俺は勿論の事、リーシャさんも何も食べていない。

あ、だめだ、意識したらお腹が……

きゅぅー

「なんだ? もしかしてお前らも飯まだだったりするのか?」

「は、はい」

「それならそうと早く言えよ! おし、ブルーシートはここで良いな! 飲みもんにおにぎりしかねぇが、種類は沢山あるぜ! 好きなの取りな!」

おわぁ。彰先輩がカバンを逆さまにすると同時に、重力に従って、質量保存の法則を無視した量のおにぎりとペットボトルが散乱する。

「『魔法のカバン』に入れてるとよ、腐らねぇだろ? だから食料を買い込んで貯めこんでんだよな。スーパーの持ち込みは不可だから不便だけどよ」

以前、『魔法のカバン』を使用した万引きが話題になった事があり、全ての店というわけではないが、検知するようになっているんだよね。

悪い事をする人間は、必ずいるのだ。

ま、良い人やルールを守る人の方が圧倒的に多いので、見つかって裁かれるのも世の常だね。

「玲央、嬢ちゃん、遠慮せず好きなの食べてくれよ!」

「それじゃ、頂きます彰先輩」

「頂きます」

俺は鮭おにぎりを、リーシャさんはツナおにぎりを手に取る。

言い訳をさせてもらえるなら、俺は普段コンビニ等でおにぎりを買った事がないんです。

「玲央、お前……」

「ノリがほとんど袋についたままよ玲央君」

「……」

どうやってそんな綺麗におにぎりのノリがひっつくんです?

「ったく、しょうがねぇな玲央。良いか、おにぎりの袋は空ける順番があんだよ」

「ほら、①、②、③って表記があるでしょ?」

「ほんとだ!」

彰先輩とリーシャさんにおにぎりの開け方の指導を受ける俺。

小学生かな?

二人が実践して見せてくれたので、俺も同じようにやる。

「できた! 黒いおにぎりだっ!」

「「おおー!」」

パチパチと手をたたいてくれる二人。……うん、すっごい恥ずかしい。

三年生筆頭と一年生筆頭候補にこんな事させたの俺くらいじゃなかろうか。

……そこで視線を感じたのだ。

「れおちー、パイセンとあんなに近くで……! 羨ましいしー!」

すさまじく遠い位置で、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

陽葵先輩、案の定まだ居た。遠いけど。

なんとかして、戻せないだろうか。

俺は彰先輩と、陽葵先輩には仲良くしていてほしい。

何なら二人引っ付いてほしい。

その為なら、全力でキューピッド役をしても良いと思っている。

なのでここは、俺が動くしかないと思った。

「彰先輩、少し目を瞑ってて貰えませんか?」

「おう? まぁ良いけどよ」

「玲央君!?」

素直に目を閉じてくれる彰先輩。

何故リーシャさんはそこで頬を染めて、口元を両手で抑えるのですか?

とりあえず、俺はブルーシートから離れて、陽葵先輩がいる場所へと歩いていく。

幸い、陽葵先輩は目を瞑った彰先輩に見とれているのか、身動き一つしていなかったので。

「陽葵先輩」

「ひゃい!? な、な!? このあーしに気付かれずにここまで至近距離に近づくなんて、れおちーは化け物だし!?」

いや、単純に貴女が彰先輩に夢中になってただけです。

「ほら、行きましょ。彰先輩と話がしたいでしょ?」

「そ、それは……! だ、だけどあーし、彰先輩を前にしたら、どうしても頭がいっぱいになっちゃって、何も考えられなくなっちゃって……!」

顔を真っ赤にして、ブンブンと横にふる陽葵先輩。小柄なこともあって、なんだこの可愛い生き物は状態である。

「良いですか陽葵先輩。このままだと、彰先輩は陽葵先輩に嫌われ……ごほん、苦手だと思われていると思ったままです」

「え!? あーしが、パイセンを、苦手!? そ、そんなことないし!?」

ええ、そうでしょうとも。

現実は彰先輩が好き過ぎてまともに顔が見れないだけですもんね。

周りの人は分かってんですよぉ!

「ですが、本人がそう言ってるんです。現にさっき俺が聞きました」

「ガーン!!」

四つん這いになり、落ち込む陽葵先輩。

追い込むつもりはないので、フォローしていく。

「でも、これから態度を直していけば、まだ必ずチャンスはあります。幸い、彰先輩は陽葵先輩の事を嫌ってはいません」

「ほ、ほんと? あーし、きらわれてない……?」

「はい。そこは俺が保証します」

「れおちー……!」

俺が保証ってなんだという話ではあるが、こういうのはノリと勢いである。

「さぁ、行きましょう陽葵先輩! 俺達はこれからダンジョンに行く予定なんです。それに一緒に行って良いか聞くんです!」

「!! だ、大丈夫かなれおちー。あーし、うざい女って思われないし……?」

普段バリバリに行動派な貴女が、どうして彰先輩の前ではそんな貞淑なんですかと声を大にして言うところだった危ない危ない。

「大丈夫です。陽葵先輩の大好きな彰先輩は、そんな器の小さな男ですか?」

「違うし! パイセンは男の中の男だし!!」

「はい。そういう事です」

「!! れおちー、ありがと。あーし、勇気出してみる! ……骨は拾ってね?」

何故に最後に弱気になるのか。

俺は笑顔で背中を押す。

「やっ。ちょっ。押さないでれおちー!? 自分で歩く、歩くし!」

おずおずと進みだした陽葵先輩の後ろから、俺もついていく。

こちらに気付いたリーシャさんが、苦笑した。

「おーい玲央、俺はいつまで目を瞑ってりゃ良いんだ?」

「あ、すみません彰先輩。もう開けてもらって大丈夫です」

「そうか。なんだったん……お、陽葵」

「ひゃ、ひゃい!」

「どうした?」

「あ、あにょ、そにょ……!」

逃げ出しそうになっている陽葵先輩の右肩に、ポンと手をのせる。

反対側は、リーシャさんが手をのせてくれた。

それで少し落ち着いたのか、陽葵先輩は前を向いて、彰先輩の目を見て話す。

「あ、あの! あーしも、ダンジョンにご一緒しても、か、かまい、ませんか!?」

「おお! 勿論大歓迎だぜ! 玲央に嬢ちゃん、それに陽葵とのパーティか、くっそ楽しみじゃねぇか! そうだ陽葵、飯は食ったか? まだならおにぎりと飲みもんならいくらでもあるからよ、一緒にどうだ?」

「い、頂きます!」

「ちなみに、玲央はおにぎりの袋の取り方を知らなかったぞ」

「ぶふっ! れおちー、マジだし!?」

「はい、マジです……二人に教えてもらいました……」

何故俺は1,2,3年生最強の方々におにぎりでからかわれているのだろう。