軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33話.モブの班行動②

「(おいアイン! 何を間抜けに"邪眼"の事を話してやがンだよコラ!)」

「(ツヴァイ、別に隠すようには言われてないじゃないか)」

「(このアホ! ンなこたぁ言われなくてもって奴なンだよ!)」

「(でも、榊君はこの"邪眼"を凄いって言ってくれた。あの研究所の魔族達は、一度だって褒めてくれた事は無かったのに)」

「(チッ……もう絆されてンのかよ、チョロすぎンだろアイン。ったく、なンでアインが強化型で、このオレが鑑定型なんだ。ぜってぇ付与する対象を間違ってンだろ……)」

「アイン? 大丈夫?」

「!! あ、ごめんよ榊君。少し考え事してて」

少しぼうっとしているアインさんに話しかけると、まるで今意識を戻したかのように見えた。

気のせいかな?

「一応罠の配置されている場所は逐一伝えるけど、触れたら即発動するタイプの物が多いから気を付けてね」

「う、うん! 気をつけるよ!」

「……」

リーシャさんは辺りを見回しながら、視線はアインさんを追っている。

特に気にしなければ気付かないレベルでだけど、流石リーシャさんだ。

「あ。そこは踏んじゃ駄目だ剛毅。落とし穴」

「っ!! ありが、とう」

「凄い量のトラップの数ね……まだ100メートルも進んでいないのに、そこかしこにあるなんて……」

「いやぁ……これ、榊君が居なかったらどうやって攻略するんだろうね……」

「……」

実はこれ、最初の入り口に全てのトラップを無効にする仕掛けがあったりする。

何秒でクリアできるかRTA!(リアルタイムアタック)とか掲示板の皆でやってた。

なんせトラップがないと、雑魚モンスターしかいないのである。

最速の氷河をパーティに入れて(イベント以外は自由にパーティ変更可能だったので)行くのが主流だった。

「ここも時間が経ったら攻略情報が出るはずだから、それを見てやる人が大半じゃないかな」

「「「成程」」」

皆驚く程素直に聞いてくれる。

藤堂先生のあの言葉のおかげだろうねこれ。

「あ、そこの裏にモンスター隠れてるよ。ゴブリンだから特に注意はいらないね」

「「「「ゴブッ!?」」」」

今度は集団で居たようだけど、本来罠の後に出る段取りをしていたであろう彼らは隙だらけである。

「さぁ皆、やってしまって」

「「「おおー!!」」」

水無瀬さんの槍と、アインさんの剣で二体がすぐに倒れ、少し距離があったゴブリン達はリーシャさんの魔法で心臓を貫かれてアイテムと化した。

「お疲れ様。皆流石だね」

「いや、榊君にそれを言われると……」

「榊殿、こそ、流石で、す」

「本当にね。私達なんて、ただ言われた通りにやってるだけだもの。こんなに任せて安心な人、他は藤堂先生くらいよ」

それは褒め過ぎである。

藤堂先生みたいな大英雄と並べられると、流石に。

「あ、ありがとう。でも、作戦だけじゃ成功しないよ。それを実行する力のある人が居る事が大事なんだ。だから、皆のおかげなんだよ」

「「「……」」」

これは本気でそう思っている。

どれだけ戦略を考えようと、それを上手く実行してくれる人が居なければ成立しないんだから。

「なんていうか、榊君は人をのせるのが上手だよね」

「う、ん。やる気、出る」

「それは同意するわ。天性の人たらしというか……指揮官になるべくして生まれてきたって感じよね」

「「うん」」

あれ? なんで三人の絆が急に上がったの?

「と、とにかく先へ急ごう。引き続き俺が先行する形で陣形を取るね。奇襲には気を付けるけど、各自気は抜かないように」

「ええ。そうね、榊君にばかり頼っていたら申し訳ないわ」

「だね。僕も周囲に気を付けながら進むよ!」

「俺、も!」

良いチームだと思う。

皆自分が出来る事をしっかりと見極めて、やろうと思ってくれている。

アインさんの件がなければ、本当にこのチームで戦い続けたいくらいだ。

「おっと、ここからは縦陣で俺の後を真後ろに続いてきて。トラップだらけで足の踏み場が限られてる」

「了解よ榊君」

「分かったよ。ちなみに聞いておくけれど、発動させない方が良いって事だよね……? ほら、今までのはわざと発動させたりもしてたから」

「そうだね。このメンバーに神官系のスキルを持っている人か、治療系アイテムが潤沢ならその手も使えるけど……毒霧や麻痺霧、その中で放たれる毒矢の数々と……踏まない方が良いでしょ?」

「「「……」」」

あれ、皆の顔が青くなった。

いやリーシャさんは相変わらずポーカーフェイスなんだけど、これまで一緒に居たからだろうか、なんとなくどう思っているかが分かる。

「というわけで、全部避けながら歩くよ。後ろに続いてね」

「「「了解」」」

某ドラ〇エのように、歩いて進む。

紫色だらけで視界が酷い。

「止まるよ」

「「「!!」」」

そして全面が紫色の場所に到達した。

この奥がボス部屋だけど……さてどうしようか。

罠が横一列に張り巡らされていて、絶対に罠に掛けるというダンジョンの強い意志を感じる。

トラ〇ナ(罠無効)の魔法が切実に欲しい。

「……」

「どうしたの榊君?」

「「?」」

考えるまでもない、か。

戦力の皆が罠に掛かるより、戦力外の俺がトラップを引き受けるのが筋だろう。

ええい、男は度胸!

「皆、俺がトラップを引き受けるから、俺を踏んで行けぇっ!」

「「「はぁ!?」」」

「でやぁぁぁっ!! おぁぁあぁぁぁっ!? しびびびびび……!! さ、さぁ、行け皆……!」

「もう、何やってるのよ榊君!?」

「と、とりあえず行こうリーシャさん! 榊君の犠牲を無駄にしない為にも!」

「お、俺、装備で、重い、のに……」

「っ……! 仕方ないわね……! 通るわよ榊君……!」

「ごめん!」

「いき、ます!」

「ぐはっ! ぐほっ!? おぐぅっ……!!」

罠へと倒れ込んだ俺の上を、三人が順次踏んで先へと行く。

あばばばばば……しび、しびれがしゅごい……!

HPがガンガン削られているのを実感する。

「さぁ渡ったわよ! 榊君、手を!」

そう言って手を差し出してくれるリーシャさんの手を、自然に取りそうになってやめる。

「どうして手を取らないの!」

「いや、リーシャさんまで感電、しちゃう……から……ね……」

「あ……」

靴の上からなら微弱だろうけど、直接手となったら流石に、ね。

痺れを感じながら、なんとか立ち上がり罠の先へと歩く。

「はぁっ……はぁっ……いやぁ、死ぬかと思った」

「心臓に悪いから、先に言って榊君……」

「そうだよ榊君! 僕達に話してくれたら、別の解決策もあったかもしれないよ!?」

「そう、だ。今回で、言えば……俺が、下敷きになれば、この鎧……絶縁仕様、なんだ」

「……」

俺の確認不足って事ですね。

ちゃんと周りの皆の意見を聞く事、大事だな、反省。

「ご、ごめん。皆がダメージを受けるより、俺が受けた方がって思って……」

「ふぅ……榊君は凄いけれど、自分の事を軽視する癖があるのは、直した方が良いと思うわ」

「え?」

「そうだね。指揮官の力ってさ、実際に戦う人一人より価値があると、僕は思う。今回の場合、水無瀬君が対抗手段を持っていたけれど……それが無くても、僕がするべきだったと思う」

「指揮、官は……替えが、効か、ない」

「!!」

アインさんがやるべきだったかどうかは、さておいても……皆が俺を重要視してくれている事に驚いてしまう。

そして心配を掛けた以上は、やはり謝るべきだろう。

「……ごめん皆。ちょっと意気込み過ぎてたね。さ、あの扉の向こうにはボスが待機してるはずだから、行こうか!」

「ちょっと待って榊君。……はい、これ」

「ポーション?」

「ええ。飲んでおいて、楽になるでしょ」

「いやいや、それはリーシャさんや前衛の皆の為のアイテムだよ。大丈夫、俺ならこんな……」

「良いから飲みなさいっ! アイン君、水無瀬君!」

「「了解っ!」」

「どわぁっ!? 皆、どうしおぼぼぼぼぼ……!」

「はい、ゴクンして榊君! 吐き出させないわよ!」

両端をアインさんと水無瀬さんにガッチリとホールドされ、リーシャさんにポーションの瓶を口に突っ込まれる。

どんなご褒美ですかこれぇ……!

「ングッ……ングッ……ぷはぁっ……! み、皆、強引すぎませんか……」

「はいよく飲めました。あのねぇ、指揮官が私達の為に体を張って、そのままボス戦に、なんて行けるわけないでしょう!」

「そうそう。榊君の事が気になって戦いに集中出来ないよ? なんてね」

「榊殿、も、俺達を、頼って、ほしい……!」

「!!」

俺は、皆の気持ちを考えていなかった。

皆の為になればという俺の自己満で、皆の気持ちをないがしろにしていた。

ここはゲームの世界じゃないんだ。

人は人としてちゃんと生きてる。

感情もある。そんな事、とっくに分かっていたはずなのに。

「うん……ありがとう皆。さ、回復もしたし、いざボス戦だ!」

「「「おー!!」」」

ちなみに意気込んで挑んだボスは、おっさんMark2でした。

体力、攻撃力、防御力が数倍になっているが、対処法は同じの雑魚ボスである。

この三人の敵じゃなく、俺達はあっさりと『歪の洞窟』をクリアし、外へと放出される。

入り口の電子掲示板に、でかでかと一位榊チームと掲載される事となった。