軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話.モブの素材集め

「はぁぁっ!」

「プギィッ」

「お見事、リーシャさん。流れるような体の動きに力任せじゃない斬り方。本当に凄いよ、流石剣聖と呼ばれるだけはあるね!」

「そ、そう? ありがとう。榊君程の人にそう言われると、照れるわね」

俺程とは? リーシャさんの中で、俺の評価が間違って高評価を得ている気がする。

それはともかく、モンスターを倒した事でポイントが貯まり、素材も手に入る。

一挙両得一石二鳥である。

あ、ポイントとはこの学校内に生息しているモンスターを倒す事で得られるお金のようなもので、購買等このヴァルハラではなんでも買える通貨の事。

なんと学費もこのポイントで賄える。

今は俺とリーシャさんでパーティを組んでいるので、等分で配布される。

「それより良いの? 俺とポイントを等分にして。リーシャさんが倒してるんだし、俺は1でも良いよ?」

「それはさっきも話したじゃない。倒しているのは私だけど、榊君はモンスターを見つけてくれるし、弱点を教えてくれるし、バフを掛けてくれて、モンスターにデバフまで掛けてくれてる。こんなにサポートしてもらってて私の分を下げるならまだしも、榊君の分を下げるなんてあり得ないわ」

「リーシャさんの分を下げるなんてとんでもない!?」

「私からしたら、榊君の分を下げるなんてとんでもないのよ」

そう言われてしまえば、何も言い返せない。

俺としてはリーシャさんが9で、俺が1でも全然良いのだけど。

むしろリーシャさんが10で俺は0でも良いくらいだ。

学費は稼がなければならないけれど、それくらいの狩りは俺一人でも出来るはずだし。

「さ、どんどん狩りましょ。榊君のバフにも慣れてきた所なの。最初はスピードに戸惑ったけれど」

ゲームではそんな事無かったのだけど、やはり現実ではそうでないらしい。

急激なパワーアップは、体の調子が狂うのだそうだ。

リーシャさんいわく、

「パワーの調整は良いの。手加減みたいなものだし、力は元からあまり入れる方じゃないから。でも問題はスピードエンハンスの方ね。少しの力で、いつもより遠くへ駆けられるの。これが思ったより厄介で、敵の後ろに回るタイミングが自分の意識より速くて調子が狂ったり、剣の振るう速度に感覚がおかしくなるの。他の人のバフ支援を受けた事があるけど、ここまで顕著には変わらなかったから……榊君の効果量が高すぎる弊害だと思う」

リーシャさん程の人でもそうなら、他の人に掛けるのは考えた方が良いかもしれない。

量を調整出来たら良いのだけど……そのうちコントロールの仕方をローガン師匠に教えてもらおう。

「了解。ここら辺のモンスターは狩りきったから、次の場所へ行こっか」

「ええ!」

キーンコーンカーンコーン

「「あ」」

お昼のチャイムが鳴り響く。

素材集めに夢中になりすぎて、時間を忘れていた。

「もうお昼ね。ちょっと集中しすぎちゃったわね。榊君はお昼学食よね?」

「うん。能力測定の時は食べれなかったし、"魔眼"の事を知った日はローガン師匠の"枷"のせいで食べれなかったし、何気に初めてなんだよね」

「ふふっ。あの目が光ってた時ね。まぁ私も榊君とほぼ同じで初めてよ?」

そういえば、なんだかんだでリーシャさんとはほぼずっと一緒に居る気がする。

モブの俺なんかが、あの剣聖と名高いリーシャ・エーデルハイトその人と一緒に居て良いのだろうか。

「なにしてるの? 早く行きましょ榊君。混んできたら大変よ」

「あ……うん!」

先を歩くリーシャさんを追いかける。

今は、今だけはこの幸運に浸っていても、バチは当たらないよね。

そうして学食に着くと、もはや修羅場のような有様だった。

「おばちゃんからあげ定食Aまだぁ!?」

「こっちはカツサンドとたまごサンドとビーフストロガノフまだかよ!?」

「はいからあげ定食! やかましいねぇ! ビーフストロガノフなんて手のかかるモンをサンドと一緒に頼んでんじゃないよっ!!」

「おばちゃんカレーうどんは!?」

「はいよおまちっ!」

凄まじい勢いである。

これに並ぶ勇気が俺には出ない。

「……凄まじいわね」

「……うん」

どうやらリーシャさんも同じ感想に至ったようで、俺と一緒に固まっている。

そんな所へ、救世主がやってきた。

「おう玲央、それにリーシャさん。お前らも学食か?」

「烈火!」

「こんにちは轟君。ええ、さっきまで榊君と一緒にモンスターを狩ってたから」

「お、マジかよ! 玲央よぉ、誘ってくれたら俺も狩りに行ったのによぉ!」

「あはは、ありがとう烈火。今回はリーシャさんとの約束があるんだ」

「あー、前言ってたアレか」

「え?」

「うぉっとっ! な、なんでもねぇ! で、二人は何が食いたいんだ?」

「あ、俺は日替わりランチでもあればそれで良いかな」

「私はフルーツサンドとベーコンハムエッグサンドが食べてみたいわ」

「オッケ! 頼んでくっから、席を確保しといてくれねぇか?」

「了解! 良いの烈火?」

「任せとけって! そんじゃ行ってくるぜ!」

駆けて行く烈火の後ろ姿が、まるで歴戦の武将のような頼もしさである。

「榊君、ここ空いてるから確保しておいたわよ」

「え」

後ろを振り向いたら、すでに一つのテーブルを確保しているリーシャさんが居た。

嘘、早すぎない? 周りを見たら凄く混雑していて、テーブルまるまる確保なんて普通に無理だと思うのだけど。

「ほら座って座って。あ、水もセルフよね」

「流石にそれくらいは俺にさせてよ! 三人分入れてくるね!」

「そう? ありがとう、お願いするわね」

食事を烈火が確保してくれて、席をリーシャさんが確保してくれて、俺だけ何にもしていないのは居心地が悪すぎる。

というか、烈火とリーシャさんの昼食会を特等席で見れるのご褒美過ぎない?

俺前世でどんな徳を積んだんだろう、ありがとうございます……!

そうしてコップに水を入れ、トレイに置いてから席へと運ぶ途中。

紫色の魔力が伸びていたので、『キャンセレイション』を使って解除しておく。

うーん、"魔眼"使ってても魔力が少し余るのは助かるなぁ。

子供の頃から意識せずに常時使っていたお蔭か、"魔眼"のレベルが凄く高いのもあると思うけど……オフにしていても、多少"視える"んだよね。

効果の一部がパッシブに昇華してる部分があるのかもしれない。

あ、パッシブっていうのは、使用しなくても常時掛かってる効果の事で、ユーザー間では割と常識的な効果なんだよね。

烈火には"英雄の子孫"っていう、常時攻撃力上昇、HPが尽きるダメージを受けても1度だけ耐えるっていうパッシブスキルがあるし。

しかもこれ、身代わりの木偶人形の効果と重複する。

つまり烈火は二度死なないのだ。

というかこれが無いと、あのボスの攻撃で高確率で死ぬわけで……本当に理不尽な難易度である。

「チッ……!」

耳ざとい俺の耳が舌打ちを拾う。

分かる、分かるよ!

こんなモブがリーシャさんや烈火の腰巾着みたいに一緒に居たら、そりゃ腹が立つよね!

俺でもそうする、俺ならそうする!

安心してほしい、俺は君側だよっ!

なんて見当違いの事を俺は考えていた。

「っと、捕まえたぞテメェ」

「グハッ!! な、何故貴様がここに……藤堂、誠也っ……!」

「そんなもん、榊に手を出そうとする奴を捕まえる為に決まってんだろ。なぁ、魔族よ」

「「「「「!!」」」」」

衝撃である。

俺はまた、烈火達やリーシャさんと一緒に居るモブの俺への嫉妬心から、嫌がらせをしてきたのだと思っていたのに……!

「今はまだ、榊の事を知る奴はすくねぇ。なのに狙ってきたのは、"魔王"の差し金だろ。じっくり話を聞かせてもらうぜ?」

「クッ……魔王様、申し訳ありません。私はここまでのようです……!」

「何っ……!」

体が、一瞬で溶けて無くなった。

床には何も残っていない。

あれでは流石の藤堂先生でも何も出来ないだろう。

「チィッ……してやられたぜ。ま、情報は何も伝わってねぇだろうが……結界をより強化してもらわねぇといけねぇな。おい榊!」

「あ、はいっ!」

少し遠くから見ていたのだけど、バッチリと認知されていた。

「今日はローガンの講習は無しだ。ちょっくら頼みてぇ事が出来てな。だから、午後からは好きにしろ。リーシャ、お前もだ」

「分かりました、藤堂先生」

いつの間にか隣へ来ていたリーシャさんに驚きつつも、どうやら午後はフリーになったようだ。

「リーシャさん、なら午後もやる?」

「そうね、丁度良かったわね」

藤堂先生の一喝で場は平常を取り戻し、また元の騒がしい学食に戻った。

烈火が食事を両手のおぼんに乗せて器用に持ってきたので笑ってしまった。