作品タイトル不明
104話.学年対抗戦・vs二年生⑦
「「はぁっ……はぁっ……」」
「「美樹也ッ!」」
「!! 烈火、玲央! そうか、上手くいったようだな」
「なんと、貴女は一年のキング!? 何故こちらに……成程、ルークの『テレポート』か! いや、そのルークはここで足止めされているのに、何故っ……」
「リシャール君、ポーンのプロモーションです」
「!! 本郷嬢」
俺達が美樹也の元に辿り着くのとほぼ同時に、千鶴先輩とエルンスト先輩が現れる。
間違いなく二年生のエース達だ。
あちらは三人、こちらは四人で人数の上ではこちらが優位だけど、油断は出来ない。
「ふふ、流石ですね榊君。ルール上でありはしますが、普通ならばまず使われない戦略で、それを知らない人すら多いでしょう」
「学園支給のコレに、しっかり記入されてますからね」
たまたま気付いただけだけど、事実である。
「うおっ!? 本当だ、ちゃんと書いてあるじゃねぇか!?」
烈火が学園手帳を起動し、学年対抗戦と検索してルールを開いたのだろう。
特殊ルールについては本当に簡素な文でだけど、ちゃんと明記されている。
分かりやすく言うなら、契約書の普通の人ならめんどくさくて読まない小さな文字列のようなものだ。
「まったく、だから陽葵に榊君を真っ先に始末するように伝えたのに、後でおしおきが必要ですね、ふふ……」
千鶴先輩が黒い。
貴女そんなキャラでしたっけ……?
今頃陽葵先輩は背筋が冷えてそうである。
「はは。千鶴さんの言うように、今年の一年生は優秀だね。けれど、千鶴さんを守るのが俺とリシャールだと知らなかったのが不運かな」
ズシン、と大盾を地面へと突き刺すエルンスト先輩。
この人の強さは、その盾による防御もだけれど……信じられない程の耐久力である。
味方キャラとしては使えないけれど、敵として戦う時の彼のライフは他の敵とは桁が違うのだ。
しかも、常時かばう状態であり、どうなってんの? って話なのだが、全体攻撃すら全て彼が受ける。
流石にリアルではそんな事は不可能だと思うけど……。
「まぁ、榊君がここに居るという事は、一年生最大戦力のリーシャさんを陽葵が抑えてくれているんでしょう。こちらも切り札をきりましたが、一年生の切り札を封じる事が出来たのならば十分です。残りのカードであるロイヤルガードの強さは理解していますが、こちらのレッド・ガードも強いですよ?」
千鶴先輩を守るように、二人の先輩が前に出る。
「烈火、美樹也、作戦通りに。紅葉さんは援護を! いくよっ!」
「「了解っ!」」
「はいっ!」
「「「!!」」」
俺達は正面、右、左と分かれる。
紅葉さんに繋がる正面は烈火が、右は俺、左は美樹也がそれぞれ攻める。
「おおらぁぁぁっ!!」
「ふんっ……!」
烈火の大振りの攻撃を、真正面から受けるエルンスト先輩。
常人なら吹き飛ぶ程の威力を誇る烈火の攻撃を、いとも簡単に受けるエルンスト先輩は流石としか言いようがない。
「氷王! 貴殿の腕は認めるが、まだ俺には及ばないっ!」
「フッ……! それはどうかなっ! 今の俺には玲央が居るからな……!」
「はぁぁっ!」
「何っ!?」
今の俺はルークになる事で、普段よりスピードが上がっている。
眼だけは、リーシャさんのお墨付きで良いんだ、俺は。
だけど、見えているだけで体が付いてこない。
それが今は、体が思うように動く!
「美樹也っ!」
「ああっ!」
「ぬぅぅっ!?」
俺がリシャール先輩の動きを追いながら攻撃し、美樹也がそこに追い打ちをかける連撃。
二対一では流石に凌げなくなったリシャール先輩の隙を見つけた!
「そこだぁっ!」
「ぬっ!?」
「今だ美樹也っ!」
俺の攻撃で体制を崩したリシャール先輩へ、美樹也が攻撃を仕掛ける。
「任せろ玲央! 奥義『氷乱月華閃』!」
「ぐぉぉぉっ!!」
「「!?」」
え……? 今、違う方からうめき声が!?
「攻撃の直後は、防げまい氷王! 『ソウルクラッシュ』!」
「がはっ……!」
「美樹也っ!?」
美樹也の奥義を受けて、何故かノーダメージのリシャール先輩は、攻撃を受けた状態で美樹也に反撃をする。
流石の美樹也も避けきれずに直撃を受け、後方へ吹き飛ばされる。
「くっ……凄まじい威力だ。リシャール、君が受けていたら倒れていたな」
「やはりか。流石は氷王、あの速さにこの威力、凄まじい強さよ」
そういう、事かっ!
エルンスト先輩のかばうは、本当にスキルとしてのかばうなんだ。
かばうというと、物理的に対象の前に出て攻撃を防ぐのをイメージする。
けれどエルンスト先輩のかばうは、そうじゃない。
ゲームによっては肩代わりとでも言うだろうか。
対象の受けるダメージを、全て自身が受けるという効果なんだ。
だから、リシャール先輩が受けたダメージを全てエルンスト先輩が受け、リシャール先輩は無傷で怯まずに美樹也に反撃をする事が出来た。
なんて事だ……あの半端ない耐久力を誇るエルンスト先輩がいる限り、リシャール先輩は無敵って事じゃないか……!
「美樹也、大丈夫か!?」
「くっ……誰に物を言っている烈火。この程度、っ……」
「癒しますね。『ヒーリング』」
「助かる紅葉」
「向こうのキングは回復も使えるのか、これは厄介だな」
「私は使えませんからね。長期戦は不利ですね」
「承知。ならば、 一気呵成(っきかせい) に攻め立てるとしよう……!」
千鶴先輩も武器を構える。
あれは弓か……!
「紅葉さんは千鶴先輩に魔法で牽制をお願い。両肩を狙って当てるつもりで。多分向こうも射ってくる」
「分かりました」
『烈火、エルンスト先輩はかばうスキルを持ってる。攻撃は全てエルンスト先輩が受けるから、誰を攻撃しても変わらない。だから……両肩を狙う。正直、エルンスト先輩を時間内に倒すのは厳しいと思う。だから、ここぞという時に『ブレイブモード』を使って決めて欲しい』
『っ! 頭ん中に話しかけてきたって事は、バレねぇようにってこったな。分かったぜ玲央!』
『美樹也はリシャール先輩を封じる事、出来そう?』
『フ……誰に物を言っている? 攻撃が奴自身には通じないのならば、その前提で戦えばいいだけだ。任せろ玲央、俺は負けない』
『うん、分かってる。烈火、美樹也、頼んだよ。俺は千鶴先輩を攻める!』
「行くよ皆っ!」
「「「おうっ!!」」」