軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100話.学年対抗戦・vs二年生③

陽葵先輩が刀の柄に手を添えて構えを取る。

抜刀術……陽葵先輩のそれは、まさに神速。

見切るのは不可能、気付いた時には斬られているだろう。

かといって逃げるのは悪手だ。

ゲームで言えば回り込まれてしまった! と確実になるだろう。

ボス戦では逃げられないアレと同じで。

走る時とは違い、戦闘の時の魔力は隠す事が出来ない。

だから必ず、リーシャさんが見つけて来てくれるはずだ。

俺に出来る事は、時間稼ぎだ。

神速の抜刀術、陽葵先輩は必ず……

「行くしっ! 抜刀術『三日月』」

「うおぉっ!!」

「なっ!? これを避けるしっ!?」

あっぶないっ!

やはり初手はこの技だったか!

陽葵先輩の数ある技の中で、最速の抜刀術。

魔力を速度にしか回していない為、動きが直線的かつ威力の低い技。

ゲームでは必ずこの技を初手で使ってきた。

流石に両肩のどちらを狙うかは運だったけれど、なんとか賭けに勝った!

「奥義!」

「っ!?」

俺の奥義の言葉に、陽葵先輩はすぐに回避できるように構えを取る。

だけど俺に奥義なんてないのである。

「目から怪光線!」

「え……? アハハハハッ! れおちー目が光ってるし! ってなにしてるしっ!?」

「ローガン師匠が一時、俺に掛けた魔法がありまして。それ、自発的に使えるように練習したんですよね。なんの効果もない、光るだけなんですけど、夜に本を読むのに意外と便利だったりするんですよ?」

「パーティ―とかで滅茶苦茶受けそうだしれおちー」

「……」

いやその、そういう意図が無かったと言えば、あれなんですけど。

でも……陽葵先輩はやはり、乗ってくれた。

会話をしてくれた。

「さて、面白かったし……そろそろ仕留めさせてもら……」

時間は、稼げた。

「ハァァァァッ!!」

「っ!?」

キィィィンッという鍔迫り合いの音が響く。

「お待たせ、玲央君」

「リーシャさんっ……!」

「リーにゃんッ……!?」

リーシャさんの空中からの一撃を、陽葵先輩は抜刀で弾く。

その反動でリーシャさんはこちらへと飛んできた。

こんな時だというのに、その華麗さに見惚れてしまう。

「あちゃー……チルチルからリーにゃんとは極力鉢合わせるなって言われてたんだけど……こうなったら仕方ないし?」

「ふふ……あの時の決着、つけましょう結月先輩」

二人が不敵に笑い、見つめあう。

強者同士のオーラが、辺りを包む。

「ハァァッ!!」

「甘いしっ!!」

リーシャさんが飛び掛かり、陽葵先輩に斬りこむ。

それを完全に見切っている陽葵先輩は完璧なタイミングで避けて、抜刀する。

「抜刀術『半月・下弦』!」

「『一閃』!」

半月は空中の技だったはずだが、リーシャさんへのカウンターに刀を振り上げる下弦を使ってきた。

それをリーシャさんは一閃で弾く。

反動で二人とも離れてしまうが、すぐに接近して打ち合っている。

凄まじく高度な戦いで、俺が手出しできるレベルじゃない。

『うそ、あの陽葵ちゃんとあそこまで張り合える子が居るの……!?』

『俺の弟子だからな、当たり前だ』

『あっ……! あの子が噂の剣聖リーシャ・エーデルハイト!?』

『お前は研究ばっかしてっから世の中の事に疎いんだぞ。もっと情報を仕入れとけよ』

『あ、あははー。うぅ……これに参加しないと首って言われてぇ……』

『ったく。玲央の爪の垢でも飲ませてやりてぇぜ』

「流石ッ……強いですね結月先輩……!」

「それは! こっちの! セリフ、だしっ!!」

リーシャさんの凄まじい連撃を全て紙一重で避けて、その反撃で抜刀術を繰り出す陽葵先輩。

抜刀術はその名の通り、一度鞘に刀を仕舞わなければ威力を出せない。

それ故に、一撃必殺の技なのだが……陽葵先輩は抜刀の所作を限りなく速くしている。

その点は彰先輩の居合術を見てきた影響があるのだろう。

攻防一体の居合術を参考にした抜刀術。

故に、陽葵先輩は打ち合いのできる抜刀術に昇華している。

「「はぁっはぁっはぁっ……」」

二人が肩で息をしている。

それもそのはず、この広いフィールドを全速力で走って来たはずなのだ。

そこからの実力伯仲の二人の戦いだ。

体力は否応なく消耗する。

更に体には強化バフが掛かっているから、疲労は更に加速する。

不味い、時間はどれくらい経った……!?

ゴゴゴゴゴゴ……!!

「「!!」」

地響きが鳴る。

これは……!

『おおっとぉ! 学年対抗戦名物、活火山の噴火が始まりましたね! 毎年一年生はこれに対処できずにボロボロになっちゃうんですよねぇ!』

『そうらしいな。けどよ、今年の一年は違げぇみてぇだな?』

『!! なっ……! 先程の合体魔法が、溶岩の侵攻を遅らせてる……!? こんなの、予め知ってでもないと……!?』

『二年と三年がこの情報を漏らすわけがねぇ。ったく、恐ろしい情報網だぜあいつは』

『あいつ……? ってまさか……』

『へっ……。さぁ目を離すなよお前ら。こっからおもしれぇモンが見れるはずだ』

美鈴さんとティナさんの合体魔法により、こちら側の湖への溶岩の浸食速度はかなり遅くなるはずだ。

けれど、それも時間稼ぎにすぎない。

ここからは時間との戦いになる。

火に耐性のある烈火はこのフィールドで切り札だ。

そう、相手側の最奥に烈火には行ってもらう事になる。

その為には、キングである紅葉さんの守りから外れる事になる。

そうする為に俺は……!

「リーシャさん! 計画はそのまま進める! 俺はこのままキングの元へ行くよ!」

「了解よ玲央君!」

「!! れおちー、行かせ……」

「ハァァッ!!」

「チィッ……! リーにゃんっ……!」

「貴女の相手は私です、結月先輩。玲央君を追いたければ、私を倒してからにしてもらいます」

「リーにゃん相手に速攻は無理だしっ……ごめんチルチル、あーしが行くまで耐えて……!」

陽葵先輩の相手をリーシャさんに任せ、俺は計画通りにキングの元へと進む。

正確には、キングの元ではなく……その奥、草原へ。

皆、俺が指定位置に到達するまで、なんとか紅葉さんを守りきって!