軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話.モブの記憶と魔王

:そういやさ、魔王の力についてなんだけど

:烈火にフルボッコされる魔王がなんだって?

:紅葉ルートで前座のリーシャのが強いと言われた魔王がなんだって?

:まず話をさせてくれよお前らww

:すまんやで

:俺が悪かった、どうぞ言ってくれ

;ありがとう。えっとさ、魔王って紅葉と魔核で繋がってたじゃん。そのせいで魔王を倒したら紅葉が死んだでしょ?

:あー、ちゃんと魔王の力を断ち切った上で倒さないとヒロインが死ぬバッドエンディングな

:運営はヒロインに恨みでもあんのか? って感じたね

:分かる。大体の人は多分最初に紅葉ルート行くだろパッケージヒロインでもあるんだし。なのに魔王より強いリーシャが前座の大ボスで出てくる上に、ちゃんとイベントこなしてないとヒロインが死ぬとか

:それってさ、逆も可能だったりしたんじゃないって思ってさ

:あー。逆探知的な?

:ヒロインが死んだら魔王も死んだかもしれないって事? それはねぇだろ常識的に考えて

:考察厨はこれだから

:いやそうじゃなくてさ。魔王からヒロインの紅葉に手出しが出来たなら、ヒロインの紅葉からもなんか魔王に出来たんじゃないかって思ってさ

:ふむ。それは確かに

:そも魔王と繋がってる事が前提ではあるけど……そういや、公式がポロっと漏らした話があってさ、実は魔眼の所持者って魔王だけじゃなかったらしい

:え、初知りなんだけど

:kwsk

:それが……

これは、前世のネット掲示板のログか。

『ブレイブファンタジー』について語る場所で、攻略情報から些細な世界観の考察話だったり、好きな人達が集まって話に花を咲かせていた場所だ。

なんで今、こんな事を思い出したのか。

ふと目を開けると、周りは真っ暗闇だった。

右を見ても左を見ても、暗くて何も見えない。

ローガン師匠に眼が光る"枷"を掛けられているのに……って思い出した!

藤堂先生は!? リーシャさんは!? ローガン師匠はどこに!?

何も見えない。

自分の姿すら、確認できない。

どうなってるんだろう。

慌てる心をなんとか抑え、平常心を取り戻す。

直前の記憶はある。

ローガン師匠が俺に何か魔法をかけた。

ならここは、俺の意識の中、という事だろうか。

体が鉛のように重く、一歩も動けない事に気付いた。

まるでインフルエンザにでもかかったかのように、全身が気怠く、筋肉痛のように 節々(ふしぶし) が痛い。

それでも、意識はハッキリとしている。

音も何も感じない、真っ暗な空間。

「!?」

そこに突然、丸い鏡のようなものが現れた。

鏡を覗けば、そこには藤堂先生とリーシャさんが『何か』と戦っている姿が見えた。

あれは……あの姿は、『魔王』……ニグルメウム・メルギトス・マカロンだ。

なんで最後だけ可愛い名前なんだよって散々弄られずみである。

世間では『魔王』ニグルメウムと呼ばれるが、ユーザーからはマカロンと呼ばれている。

魔力が圧倒的で全キャラクター中最強なのだけど、魔法を跳ね返せる烈火のせいで、前座のリーシャさんより弱いとずっと言われてる、ある意味悲しい存在。

ただ、縛りプレイというか、烈火の武器を他に変えた場合……難易度は跳ね上がる。

多分クリア適正レベルを大きく超えてても負ける。

それぐらい、本来強いのだ。

ある意味、運営のユーザー救済策として烈火の専用武器として用意したのではないかと言われているくらいだ。

その『魔王』と、藤堂先生にリーシャさんが戦っている。

リーシャさんが前衛に出て、藤堂先生が近くでサポートしながら。

この二人の力をもってしても、『魔王』相手だと押しきれていない。

凄まじい魔法を連発している為、それを避ける事に意識を持っていかれてしまっている。

ああ違う、その魔法はそうして避けるんじゃなくて、当たり判定は狭いからもっと軽くで良いんだ!

あー! その魔法は飛んで避けるのは悪手……!

なんて見てて思った。

どうにかして俺の声を届ける事は出来ないのだろうか……!

そうしたら、藤堂先生とリーシャさん程の実力者なら、絶対に勝てるのに……!

「……ぁ……ぅ……」

「玲央か!? 聞こえておるか玲央! お主は今、意識の狭間におるのじゃ! わしの魔法で、こちらが見える鏡を送った! わしは今、お主の体の保護と強化で手が離せぬ! 戦いが見えておるなら、小さな声でも良い、言うておくれ! わしが伝える!」

「し、しょう……あの、魔法、レッド、インパルスは、見えている炎は、大部分はまやかし、です……」

「!! 分かった、誠也! リーシャ! レッドインパルスの見えている炎は、大部分はまやかしなのじゃそうだ!」

「「!?」」

「うむ、うむ。よし! 実際に当たる部分は中心部のわずかな部分、そこだけ避けるのじゃ! フレイムウォールは上空に避けずに、そのまま体当たりで突き抜けよ! それがもっともダメージがないそうじゃ!」

「おいおい、なんでそんな事を……ったく、信じるぞ玲央! おぉぉおおぉぉぉっ!!」

「ええ、信じるわ榊君! はぁぁぁぁっ!!」

俺から伝えれる事をローガン師匠を通して伝えていく。

二人は指示通りに動いてくれて、『魔王』を徐々に押していった。

その時、ふいに魔王が言葉を発した。

ゲームでは言葉を話す事なんてなかったので、ビックリである。

更にビックリなのは、その声が女性の声だった。

「おの、れ……何故、こちらの隙が、分かる……!」

「へっ! こっちには優秀な指揮官がいんだよっ!」

「そういう事! これで終わりよ! 『天魔連斬』!!」

「がぁぁぁぁっ!! お、のれ……これ、で……勝ったと、思うなよ……! 私は、必ず神々を……ゆる……」

リーシャさんの剣術が直撃し、『魔王』の姿が消えていく。

恐らく、この場に存在出来なくなったのだろう。

どうして『魔王』がこの場に居たのか、そして最後の言葉……分からない事ばっかりだ。

「ふぃぃぃ、なんとか退けられたか。しかし、あれが『魔王』ニグルメウムか。直接戦ったのは初めてだが……あれはやべぇな。あの魔法の種類、そして強さ。伊達に『魔王』と呼ばれちゃいねぇって事か」

「ですね……正直、榊君の援護が無ければ……って榊君はどうしたんですかローガン導師!?」

「ふぉふぉふぉ……体は眠っておるよ。『魔王』との繋がりも切れた事じゃし、これで魔力欠乏状態になったからと『魔王』が肉体を奪いに来る事は今後出来ぬじゃろう」

「ふぅ……それは良かった……」

「しかし、玲央が肉体を奪われていたとしたらぞっとしねぇな。こいつの無尽蔵に沸く魔力を、あの『魔王』が行使できるとしたら、人間側に勝ち目は無かったかもしれねぇ……」

「うむ……わしらが先に気付けて良かったというべきじゃな」

「榊君はこれからどうするんですかローガン導師」

「そうじゃな。まだ儀式の最中じゃが、もう邪魔は現れんじゃろう。お主達は修練に戻っても構わぬよ」

「……だそうだが、どうするリーシャ?」

「え、と……できれば、もう少し見ていたいんですが、駄目ですか藤堂先生」

「ククッ……まさかお前が、自身の修練より男を優先するたぁなぁ」

「なっ……!? ち、違います! 友人として、心配なだけですっ!」

「クククッ……!」

「もう! 笑わないでください藤堂先生!」

「ふぉふぉふぉ……」

「ローガン導師!」

「わしのは違うんじゃが!?」

なにこの尊い会話。

もうずっと見ていたい、いや聞いていたい。

でも、なんとかなって良かった。

これも全て烈火視点で魔法の対処を数千、いや数万回はやってきたお蔭だな。

『魔王』の使う魔法の種類は滅茶苦茶多いが、俺はその全ての魔法を知っている。

奥義までね。対処法だってバッチリだ。

それをローガン師匠に伝えてからという二度手間なのはあったけど……役に立てて良かった。

そうそう、『魔王』が消えてから、この空間? なんと言って良いのか分からないけれど、この空間が澄んだ青い色の世界に変わった。

最初に感じた怠さや筋肉痛のような痛みも、消えた。

渇いた大地に水が染みわたっていくような、そんな心地良い感じが広がっていく。

とりあえず、俺に出来る事は何もないし……藤堂先生やリーシャさん、ローガン師匠の会話をBGMにして、寝転がっておこうかな。