作品タイトル不明
61話.竜と旋風さんの成長ルート
「ここなら大丈夫ネ!」
「まさかあんなに大勢が追いかけてくるたぁなぁ。榊の旦那にリーシャの姉御は人気がすげぇな、流石だぜ!」
そんな流石は受け取りたくなかった。
息を整えて辺りを見渡すと、ここもダンジョンの入口だった。
「この学園はちょっと行くとダンジョンがあるね……」
「違いないネ」
いつの間にか近くで腰を下ろしている竜に旋風さん。
少し前まで知り合いですらなかったのに、今はこうして気楽に話せる関係になっている事が嬉しい。
「それで、助けてくれたのは何か理由があるんでしょ?」
「あー、いや誤解はしねぇで欲しいんだけどよ、見かねて助けたのは本当なんだぜ?」
「そうネ。ただついでに、ちょこっと榊に聞きたい事があるだけネ」
「それを目的があると言うのだけど……はぁ、良いの玲央君?」
「うん? 勿論構わないよ。それに、竜も旋風さんも、味方じゃないか。強くなってくれたら嬉しいよ」
「榊の旦那……!」
「ぅぅ、眩しいくらいに清純なオーラが漂ってくるネ……浄化されてしまうネ!」
貴女はグールか何かですか?
「察するに、ルート決めかな?」
「「!!」」
「ああ、成程……取り返しがつかないものね」
リーシャさんが納得する。
そう、強くなってくるとスキル等、派生が生まれる。
全て覚える事は出来ない仕様になっている。
ゲームではなので、現実では分からないけれど。
あと、俺にはそういうスキルツリーみたいなのがない。
なんでだろう?
「クラス拳闘士の俺はさ、波動拳、浸透勁、霊獣拳のツリーが伸びてんだよな。で、どれを選べば良いのか、榊の旦那に決めてほしかったんだ」
「アタシは影属性付与、暗器術、薬物の三つのツリーがあるネ。あ、暗器術はパパから習ってるし必要ないネ」
成程。
どのルートを選ぶかによって、戦い方が変わる大事な要素だからね。
ただ……
「……俺が選んだ事で、二人は後悔しないと言い切れる?」
「「!?」」
「ごめん、嫌な言い方だったね。俺は、選択の強制じゃなくて……自分で選んで欲しいんだ」
「「!!」」
「そのルートを選んだ際の、未来を話してあげるよ。それで自分の成りたい、戦いたい姿をイメージしてほしい。大切なのは、こうなりたいと願う自分の想いだと、俺は思う」
「榊の旦那……ああ、そうだよな。俺は自分の事なのに、榊の旦那に責任を押し付けるような事を……情けねぇ!」
「……そうネ。なまじ榊が凄いから、甘える所だったネ。アタシの事はアタシが決めないでどうするネ……!」
良かった、二人とも分かってくれた。
俺が最適解を教えるのは簡単だ。
だけど、それが成りたい自分と同じであるかは本人にしか分からない事だ。
「ふふ……玲央君のそういうところ、私は好きよ」
「!?」
し、心臓が飛び出るかと思った!
急にクリティカルな事を言うのやめて貰って良いですかね!?
とてつもなく自然な表情でそう言われ、心臓の鼓動が耳に聞こえてきてヤバいです。
「流石の榊の旦那も、アレには勝てねぇよな」
「顔真っ赤で今にも倒れそうネ。そして言った本人は全然分かってないネ」
「?」
リーシャさん、恐ろしい子。
気を取り直して、二人にツリーの到達点を話していく。
波動拳ルートは、そのまま『オーラ』の活用を更に広げる感じだ。
オーラショットやオーラバスター、オーラキャノン等、遠距離にも対応できるようになる。
浸透勁ルートも『オーラ』の活用だが、それは内部破壊に力を使う。
浸透勁、豪破浸透勁(相手の体内でオーラを一気に爆発させる)、太極浸透勁(相手のオーラと自分のオーラを混ぜ合わせる技)等、敵の防御力に比例して効果が大きくなる。
そして最後に霊獣拳ルート。
これは人間より格の高い霊獣と契約したり、その『オーラ』の動きを模す事で『オーラ』の質を高めて威力を上げるルートだ。
霊獣によっては属性が付く事もあるのだが、このルートは霊獣の力を借りる為、難易度が高い。
この点をまず竜に話した。
「成程……榊の旦那、マジでありがとう。今はどのルートに行くか決められねぇけど……すげぇ参考になった」
「そっか、少しでも力になれたなら、良かったよ」
「榊の旦那は勘違いしてるぜ」
「うん?」
「少しなんてもんじゃねぇんだ。これは、俺の今後の人生を決める、大切な事だ。その道を指し示してくれたんだぜ。マジで感謝してる。榊の旦那、俺の力が必要な時はいつでも言ってくれよな。その、ダチとして、力になっからよ! そんじゃ!」
そう言って、顔を赤くして去って行く竜を見送る。
うん、そう言って貰えただけで、俺は嬉しいよ。
「まったく、大男が顔を赤くして、恥ずかしいったらないネ」
「あはは。待たせてごめんよ旋風さん」
そうして、次は旋風さんに話していく。
まずは影属性付与ルート。
影打(暗器に影属性を付与して自身の影から打ち出せるようにする技。手持ちと合わせて手数が増えて意識外からの奇襲も強くなる)、影追(暗器の影に実体を持たせる。実質的に武器が倍増する)、影喰(相手の影を斬りつけてダメージを通す変則技、そもそもアサシンは攻撃されたと悟られてはいけないけど)等、アサシンにシナジーのある属性を取り入れて強化していくルートだ。
「これにするネ!」
と、まだ暗器術ルートと薬物ルートを話していないのに、旋風さんは決めてしまったようだ。
「良いの? まだ残り二つの説明をしてないけど……」
「ビビッときたネ。これがアタシの進む道だってネ」
「……成程、その感覚は大切なものだと思う。うん、良いんじゃないかな」
実際、影属性付与ルートは滅茶苦茶強い。
影から様々な物を出す事も出来るし、自身も影の中に潜む事が出来るようになるし。
「榊、助かったネ。氷河に紹介してもらって、本当に良かったネ。……その、ルートは決めたケド、また聞いても良いネ……?」
ぐっ、自分の容姿の良さを自覚した可愛らしい見上げ攻撃、俺じゃなきゃ効いてたね!
「勿論良いよ。いつでも」
「ありがとネ! アタシも修練に行ってくるネ! またネ榊、リーシャ!」
そう言って旋風さんも走って行った。
残された俺とリーシャさんは、
「少し休憩してから、食堂に行きましょうか」
「そうしようか」
ダンジョンの入口にある岩に腰かけ、休憩する事にした。