軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一掃

詐欺師から地元の平和を守って早数ヶ月、俺は小学6年生に進級した。

気がつけば小学校最後の年……時の流れが恐ろしい。

そんな俺を気にすることなく、社会は常に動き続ける。

陰陽師の出現に対して様子見していた組織も、ようやく立ち位置が確定してきた。

陰陽師賛成派、陰陽師反対派。極端に分ければこうなる。

発言力を持つ人間も、昨今の陰陽師関連の情報や事件を受けて、スタンスを決めていた。

阿部家はこの時を待っていたのだろう。

様々な記事がネットやテレビで公開されていく。

『陰陽師関連詐欺 一斉検挙』

『陰陽師を騙る詐欺師に終身刑』

詐欺師をまとめて逮捕し、反対派が付け入る隙を潰した。

他の事件よりも重い刑罰を与えることで、犯罪者たちへ割に合わないと思わせる。

政府の本気度を見せつけるパフォーマンスのため、泳がされていた犯罪者たちは見せしめとなった。

俺が通報した詐欺師にも沙汰が下るだろう。

『街を守る陰陽師の死闘 動画はこちらから』

『命を助けられた──陰陽師後援会発足』

『関東で勢力拡大中の互助組織 教会とは?』

SNSには命を助けてもらったという書き込みがじわじわと増えていく。

これまでは陰陽師会や陰陽庁の人間によって口止めされていたけれど、ようやく表立ってお礼を言えるようになった。

命を救われた人々は、ここぞとばかりに感謝の言葉を紡ぐ。

その真剣さは文字越しでも伝わってくるようで、美談として拡散されていた。

その裏側を知らなければ、自然と世論が賛成派に傾倒していくように見えただろう。

「政治家の賄賂、新聞社の会計虚偽申告、テレビ局の性接待、アイドルの不祥事……よくもまぁこんなに証拠を集めたもんだな」

賛成派の増加と共に、反対派に属する組織は一つずつ失脚させられていった。

政府と大企業が結託するとこういうこともできるのか。

恐ろしいな。

ある時は、国会での答弁が世間に出回った。

その切り抜き動画は、霊感のない野党議員が与党の女性議員へ噛み付くシーンから始まる。

『妖怪なんてさっぱり見えない。そんなものに防衛費をこれだけ使っていたと。しかも使途を隠しながら。これは国民の信頼を著しく損なう行いではないか。お答えください』

『陰陽庁からは適切に決算報告が出されています。それを含めて防衛費として会計処理されており、何ら問題はございません』

『報道でも疑惑が上がっています。不明瞭な記載にしていたということは、公開できないような理由があるのでは? まさかとは思いますが、裏金に利用されている可能性は? その時、国民はこれに気づくことができるでしょうか?』

『断言しましょう。裏金はあり得ません。成果報告の際、陰陽師は神に誓いを立てています。これを裏切れば、天罰が下ります。我々政治家よりも、厳しい監視制度があるのです』

女性議員は一度溜めて、続ける。

『陰陽庁の記者会見にて説明済みですが……中野議員のように妖怪の見えない方が予算の必要性を疑うために、陰陽師が自らの存在を秘匿したのです。そして、その予算が少ないために、陰陽師の成り手が減少し、致命的な状況まで陥りました。国家の安全保障において、予算増額はあっても、減額は決してあり得ません』

『それは、霊感のない国民に対して、理由は説明できないが負担を我慢しろということですか? 国民の税金をなんだと思っているのか!』

『あくまでも、妖怪は存在しないと主張されるのですね? では、中野議員の家に偶然妖怪が現れたとしても、対処するつもりはない、と』

『それは詭弁だ! 私を脅迫するおつもりか!』

『そんなつもりはありません。ただ、中野議員の主張にはおかしな点があります。以前、中野議員の家の前を通りがかった時、結界が張ってありました。実は私、多少霊感を持っておりまして、見えるんです。なぜ、信じてもいない妖怪の対策を施しているのでしょうか? プロに頼んだであれば、少なくない費用が掛かっているはずですよ』

『それは……あの家を建てた時に勝手につけられたものでして』

『結界のオプション付き! とても変わったプランを提示する建築会社ですね。紹介していただけませんか?』

当然、家を建てた建築会社にそんなオプションはなく、中野議員の苦しい言い訳であった。

秒でバレる嘘をつく議員としてSNSで叩かれ、反対派が何を言っても嘲笑されるようになる。

こうやって使うために、無能な議員達は泳がされていたのだ。

また、とある街角インタビューについて、賛成派による切り抜き動画がネットで拡散された。

『次のニュースです。駅前で陰陽師反対派によるデモが行われています』

『陰陽師 反対!』

『『『はんたーい!』』』

『政府の陰謀に騙されるな!』

『『『騙されるな!』』』

『妖怪にも人権を!』

『『『人権を!』』』

『このデモに対し、駅の利用客に反応を伺いました』

20代女性二人組

『陰陽師反対派の人達って、陰陽師に守ってもらったことがないって言うけど、本人が気づいてないだけで絶対お世話になってるよね』

『インフラ使ってるのに政府の世話になってないとか言うのと同じだよね』

『それな』

40代女性

『私は陰陽師の方に命を救っていただきました。私を殺そうとする妖怪の視線……今でも忘れられません。共存? できるはずないでしょう!』

10代男性

『妖怪に人権? バカじゃねぇの? そもそも人じゃねぇし』

ノイジーマイノリティは声が大きく、ネットでも報道でも取り上げられやすい。

しかし、圧倒的に多い陰陽師賛成派をメディアが取り上げれば、少数意見など容易く潰せる。

こうして、陰陽師が社会に必須であることを的確に訴え始めた。

ゆっくりと時間をかけて、日本を目的の方向へ誘導する。

それは民意によって為されたかのように見えるが、阿部家の掌の上でしかなかった。

とはいえ、言論の自由が守られている日本において、反対派を完全に排斥することはできない。

以前よりも規模を縮小しつつ、反対派の声は上がり続けている。

政治や利権のために利用される人間は、いつの時代にも一定数いるのだ。

陰陽師賛成派が圧倒的多数となって、日本の情勢は決まった。

ところで、ここに小学生にして日本最強の称号を持つ陰陽師がいるのですが、インタビューの打診が来ないのは何故かな?

……話題性十分だと思うんだけどなぁ。

もしもアポが来たらどうしようかな。

まずは条件を聞いてみて……ふふふ。

「聖ったら、最近ソワソワしているんです。どうしたのでしょう?」

「わからん」