作品タイトル不明
ミッション:姉の遺体を探せ
姉の遺体を探せ。
そんなミッションを自分に課してみたけれど、問題があった。
去年の姉のクラスメートの名前はわかるけれど、三年になってクラスが分かれてしまっている。
調べればわかるだろうけれど……と思いながら、しかし三年に知り合いなんていない。
モーちゃんに相談したとしても、そんな理由では教えてくれるわけもないし、僕だってそんな内容は言えない。
さて、どうしたもんかと思いながら帰り、着替えてからアイテムボックスに入る。
「ただいま〜」
「おかえり〜」
姉的には出ていってすぐに戻ってきたぐらいの感覚だろうけれど、挨拶はしておく。
無限に広がる空間の中でアイテムを整理したり、姉の注文で薬を作ったりしていると、ふと思い出した。
思い出したというか、姉とリンクしている知識への検索が終了したみたいな感じかな。
「姉ちゃん」
「なに?」
「ちょっとアイテム作りたいんだけど、在庫使っていい?」
「なに作るの?」
「ダウジングアイ」
「あ〜、なんか探し物?」
「そう」
「ふうん。別にいいけど、お姉ちゃんの使ってもいいのよ?」
「いや、ピンクはちょっと」
「もう……。まぁいいけどね」
「サンキュー」
というわけでダウジングアイを作る。
これは魔法のアイテムで、失せ物を見つけるための手掛かりをくれるという物。
探せるものは、存在とのある程度の繋がりがあり実在する物でなければダメで、過去に自分と接触のあった物品との繋がりみたいなものを辿っていって探す。
自分のスマホの居場所がわからなくなったなら教えてくれるけど、欲しくて探しているだけの中古ゲームはだめとか。
姉の遺体は探せるけど、ニュースで騒がれているだけの行方不明者はだめとか。
部屋にあったものがどこかいったぐらいならすぐに見つけることができるけど、外で無くしたとなるとけっこう大変だ。
だけど、手掛かりなしよりはマシになる。
できあがったのはわりとよく見かけるデザインの黒縁メガネだ。
物は試しでアイテムボックスを出てテストしてみる。
「ええと……テレビのリモンコンは?」
呟くと、淡い光の線が僕から伸びて部屋の外に続いている。
家族が揃っている時は居間も兼ねている母の部屋へと吸い込まれているのでそちらに向かうと、テレビ台の端にあるリモコンに繋がっていた。
もう一回ぐらい試したいな。
そこでふと思い出したのは、小学生の頃に流行ったゲームコーナーのカードゲームだ。
当たりが出たのに、次の日に無くしてしまったことがあった。
「ええと、『ドラゴンバトル』の『SRメギドスラッシュ』」
思い出しながらそう呟くと、光の線が伸びる。
伸びた先は姉の部屋。
部屋に入る。
整理整頓がされてなくてめちゃくちゃ汚かった姉の部屋は、すでに僕によってきれいに片づけられている。
ここのどこに?
本棚?
本棚にあったコレクションファイルみたいなのに光は繋がっている。
もしやと思って開いてみると、そこに『SRメギドスラッシュ』はあった。
「やっぱ犯人姉ちゃんじゃないか」
当時も疑ったのに、姉は知らない振りをしていた。
あの頃、妙に僕に気を遣ったみたいにお菓子をくれたりしてたからおかしいと思ってたんだよ。
姉ちゃんの目当てはカードの性能よりも、カードに書かれたメギドスラッシュを放つキャラクターの方だんだろうけど。
「まったく」
ファイルを閉じて本棚に戻す。
もうゲームもサービス終了しているのだし、このことはもういい。
とにかくこれでダウジングアイの効果は確認できた。
ちょっと遺体を探すのが面倒くさいなって思うような出来事があったけど、まぁそれも過去の思い出ということにしておく。
早速、明日学校で試してみよう。
姉ちゃんの方の時間が進み、いろんなお願い事を聞いてアイテムを整理したり、クラフトしたり解体したりした。
「じゃあ、おやすみ〜」
「はい、おやすみ」
体感では一日が過ぎていないけど、姉が就寝に入ったので向こうでの一日は終わりだ。
もしかして、アイテムボックスの中では、他にも俺が気づいていない時間の流れとかがあったりするのかな?
その時は他と同じように時間停止して、姉が声をかけてくるのを待っているとか?
ダウジングアイを作った後とかは、特に時間の流れが早かったような気もするし……。
ううん。
まぁ、いいか。
それがわかったとしても、だからなんだよって話でしかない。
別に重大な問題ってわけでもないしな。
アイテムボックスの中で宿題を終わらせることもできるから、時間が停止していたとしても、それは本当に暇な時だけなんだろう。
宿題を終わらせてから、アイテムボックスを出る。
自室エリアに入ると、空気の違いがわかるようになってきた。
時間が動き出す感覚なのかな?
そんなことを考えながら風呂に入る支度をして、スッキリしてから少しスマホをみたりして寝た。
そして翌日。
……の、放課後の教室。
帰る者は帰り、部活がある者はそちらに向かい、トイレの個室に立て篭もった振りをして時間を過ごした僕は教室に戻ると、ダウジングアイの黒縁メガネをかけた。
「姉の遺体」
そう呟いてみる。
光は伸びた。
だけどすぐに薄くなって消えてしまった。
たぶん、遠過ぎて光を繋げていられないんだ。
それぐらいに遠いってことか。
ただ、ダウジングのように一瞬だけ伸びた方向は一応、覚えておくことにする。
それなら次。
「姉の親友」
まぁ、これはたぶんダメだろうなと思っている実験。
予想通りに反応なし。
姉に親友がいたかどうかはわからないけど、その人物と僕の繋がりがなければ光も導けない。
だから失敗するだろうなとは思っていた。
なら、次。
「姉の所持品」
これはどうだ?
ダメか。
それなら最後。
「姉が持っていった僕の所持品」
『SRメギドスラッシュ』でもわかる通り、姉はけっこう僕の物を持っていく。特に文房具なんて無くなったからと僕の予備を勝手に持っていったりする。
その後にお菓子でご機嫌をとるくらいなら、最初から予備を買っておけと思うけど「だって亮哉は予備持っているから」って変な言い訳をする困った姉だ。
その癖は高校生になっても直っていなかったから、僕の消しゴムとかシャーペンの替え芯なんかを勝手に持っていっていた。
それが学校に残っているなんてことがあるとも思えないけど……喩えば誰かに貸していたりとか?
……なんて思っていたら光が伸びた。
光を追いかけて外からの声がよく響く廊下を進み、階段を上がって三年生の教室が並ぶ一画に入り込む。
当時の姉は二年生だったはずだけど?
そう思いながら、少人数が教室で喋っていたり自習していたりする程度にしか人気のない廊下を進んでいると……。
「っ!」
思わず足を止めた。
生徒は誰もいない教室に、一人の大人の姿。
その大人に光は繋がっている。
その大人は、教室にある一つの机の前に立ち、物入れの中に手を突っ込んでいる。
そしてなにかを取り出し、それをスーツのポケットに入れた。
こちらに振り返りそうになっていたので、慌てて廊下を戻った。
背中だけ、横顔だけでもあれが誰かはわかる。
静丸快児だ。