軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

黒幕を袋叩きにしてやりました。

枢機卿(すうききょう) ロレンツォ=サルヴァトーリは、クリスティアのメインシナリオに登場するイベントボスだ。

その正体は闇属性を持つヴァンパイアであり、その種族にちなんだスキルを得意としている。

イベントボストップクラスの膨大なSPを背景に、闇属性スキルである【シャドウテイル】や【ドッペルゲンガー】、【ブラインド】、たった今見せた【ルスヴン・ミスト】というように。

ただ、一撃必殺と呼べるような強力なスキルは持ち合わせておらず、基本的にデバフ効果のあるものや状態変化によるバフを主体としており、いきなり戦闘不能になったりすることはないものの、戦闘が長期化しやすく、それはそれで面倒である。

「貴様のことだから、身体を 霧(きり) に変化させて逃げ出すことも予想していた。なので、モニカにお願いして事前に隙間を塞いでもらったんだよ」

「このモニカ=アシュトン、良い仕事をさせていただきました」

モニカは一歩前に出て、メッチャドヤ顔で 恭(うやうや) しく一礼する。

本当に、人を 煽(あお) るのが上手いなあ。

「もちろん、他にも色々と対策は講じさせてもらったよ。だから……貴様に残されているのは、絶望だけ、なんだけど……」

僕は、それはもう楽しそうにこの様子を見ているクリスティアに目配せをする。

「うふふ、どうなさいました?」

「いえ。あの男、生け捕りのほうがいいですか? それとも……この場で始末しても?」

「ハロルド殿下の、お好きなように」

よし、 言質(げんち) は取ったので、好きにさせてもらうとしよう。

ただでさえ状態異常系のスキルばかり使うから面倒なので、さっさと片づけたいからね。

「……ハロルド殿下に聞きたい」

「ん?」

「私が聖女をこの倉庫に連れてくるように頼んだのは、今日の朝。にもかかわらず、どうしてここまで周到に手を回すことができた。しかも、誰も知らないはずの、私のスキルまで知っているなんて、おかしいではないか」

「僕がその質問に答える必要ある? いいから、貴様はここで消えろ」

僕の言葉を合図に、サンドラ、モニカ、カルラが一斉に動いた。

余計なスキルを使う前に、瞬殺するために。

「クッ! 【ブラインド】!」

「甘いですね。暗殺者にとって、暗闇こそ狩場だというのに」

「なあっ!?」

ロレンツォのスキルによって一瞬にして倉庫の中が暗くなったけど、暗殺者のモニカにとって、なんてことはない。声を聴く限り、モニカの攻撃を受けたんだろう。

「クソッ!? 見えないままではこちらも分が悪い!」

ということで、ロレンツォはすぐに【ブラインド】の効果を解除した。というか、スキルを発動したロレンツォ自身も見えなくなるなんて、思いもよらなかったよ。何このポンコツスキル。

あ、でも、よくよく考えれば、『エンハザ』でも【ブラインド】を使用したら、ロレンツォの命中率が下がったっけ。つまり、そういうことだったんだな。

「ならば! 【ドッペルゲンガー】!」

ロレンツォが自身の影を作り出し、数で対抗しようとするが。

「ふふ……あなた、馬鹿ですか? こちらは三人いるのですよ?」

「なにっ!?」

「ダイレクトドライブッッッ!」

「っ!? ぐあああああああああああああああッッッ!?」

クスクスと 嗤(わら) うサンドラに気を取られている間に、後ろからカルラに必殺の【ダイレクトドライブ】を受け、ロレンツォは二体まとめて壁まで吹き飛ばされた。

「う……うぐ……こ、この私がこうも一方的に、だと……っ!?」

「当然です。あなたが自分の計画を持ちかけた時点で、全てはハル様の 掌(たなごころ) の上、ということです」

「げ……が、は……っ」

サンドラに踏みつけられて首元を『バルムンク』で一突きにされ、本来は強力なイベントボスであるはずのロレンツォは、ただ一方的に 蹂躙(じゅうりん) されて灰となって消滅した。いや、なかなか切ない。

「……ボク達、出番なかったね」

「言わないで」

『漆黒盾キャスパリーグ』でクリスティアを守るように構えていた僕達は、出番もなくただ眺めるだけだったよ。

「ハロルド殿下、ありがとうございました。おかげさまで、聖王国に巣食う害虫の駆除ができました」

「いえいえ」

恭(うやうや) しくお辞儀をするクリスティアに、僕は何でもないとばかりに手を振った。

そう……ロレンツォにこの話を持ちかけられた時から、それはもうシナリオを全て台無しにしてやるために、 奔走(ほんそう) しましたとも。

モニカにお願いしてロレンツォの手下どもを排除してもらい、逆にこちらがそれを利用できるようにしておいたり、ロレンツォに悟られないように水面下でクリスティアやカルラと調整したり……うん、僕は頑張った。

ちなみに、クリスティアとの接触は、僕からではなく彼女のほうからあった。

あの試合の後、すぐに正式に謝罪を受けたのだ。ただし、誰にもそのことを知られないようにして。

まあ、この話はおいおいするとして、今は他にやるべきことがある。

「では、これで全て終わりましたので、僕達はこの場を離れますね」

「うふふ。はい、あとはお任せください」

クスクスと 嗤(わら) うクリスティアをたった一人置き去りにして、僕達は隠し通路を通って倉庫から立ち去った。

どうしてかって? 今回の一件について、全部ウィルフレッド達に後始末をさせるためだよ。