軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖王国からヒロインが二人もやってきました。

「そろそろか……」

いよいよバルティアン聖王国の使節団がやって来る日を迎え、僕やウィルフレッド、それに外務大臣達が王宮の前にずらり、と並び、到着を待っている。

ちなみに、ウィルフレッドの隣にはカーディスがいるほか、その一歩下がった位置に式典用の騎士服を着たマリオンが控えている。

サンドラとの試合の一件もあってか、僕が文官に誘導されて今の位置に来るなり、マリオンは気まずそうにうつむいていたなあ。知らんけど。

なお、あの件に関して、ウィルフレッドからはなんのアクションもない。

侍女をけしかけておきながらどうかと思うけど、絡まれたら絡まれたで面倒なことこの上ないので、僕としてはよかったのかな。

などと、くだらないことを考えていると。

「ウィルフレッド。国王陛下よりホストに指名された意味、分かっているな」

「もちろんです、カーディス兄上。俺はもう、『 穢(けが) れた王子』なんかじゃない。デハウバルズ王国第四王子、ウィルフレッド=ウェル=デハウバルズです」

「ならいい」

凛々しい表情のウィルフレッドの答えに、カーディスが満足げに頷く。

隣にいる僕としては、『何? この茶番』っていう感想しか湧かないけど。

だけど、少なくともエイバル王とカーディスは、ウィルフレッドの境遇を改善しようと考えているみたいだ。

『エンハザ』のストーリーとは違い、色々と目をかけてもらえているようで何よりだね(皮肉)。

その時。

「ご報告いたします。バルティアン聖王国の使節団が、無事王都に入りました。中央通りを抜け、まもなく王宮に到着いたします」

「そうか」

報告を受け、ウィルフレッドが頷く。

もはや今回のホストは、自分だけなのだと言わんばかりの態度だね。おかげで報告してくれた文官が困った顔をしたので、僕は苦笑して目配せし、気にせず下がらせたとも。

すると。

「ハロルド兄上。今回の使節団は、聖王国のナンバー二である教皇 猊下(げいか) が来られます。派閥などは関係なく、協力して無事成功に収めましょう」

ウィルフレッドが右手を差し出し、ニコリ、と微笑む。

主人公の笑顔に、メインヒロインの一人であるマリオンが見惚れているよ。

さて……この手、取るべきかどうか。

波風を立てないようにするなら手を取るべきだし、だからといって、サンドラとの過去のことなどもあるから、僕個人の感情としてはメッチャ拒否したい。

ウィルフレッドの手と自分の手をにらめっこして、 躊躇(ちゅうちょ) していると。

「ハハハ……私達兄弟同士、力を合わせてウィルフレッドを盛り立てようではないか」

見かねたカーディスが、僕の手を取って強引にウィルフレッドと握手をさせる。

表情は穏やかだけど、その灰色の瞳は一切笑っていない。

というかカーディスめ。シレッとウィルフレッドをホスト側のトップだと明言したよ。

もちろん文官達もこの会話を聞いているから、これからはそのように動くんだろうなあ……仕事が減って助かる。

そして。

「おおおおお……!」

王宮の正門へ向かって近づいてくる一団を見て、僕は月並みに感嘆の声を漏らした。

馬は全て白馬が揃えられ、白銀の鎧を身に 纏(まと) った聖騎士達が整然と中央のひときわ大きな、バルティアン聖王国のシンボルカラーである白と金で装飾された馬車を守るように取り囲む。

「バルティアン聖王国使節団、入場です!」

ファンファーレが鳴り、王国騎士達が正門の左右に整列する間を、使節団がゆっくりと通過して正門をくぐった。

「教皇 猊下(げいか) 、デハウバルズ王国へようこそお越しくださいました。皆様のホストを務めさせていただきます、第四王子のウィルフレッドと申します」

「同じく、第三王子のハロルドです」

馬車の扉の前で、僕とウィルフレッドは口上を述べて 恭(うやうや) しく一礼する。

一応王子ではあるけれど、向こうはナンバー二の教皇だから、へりくだるのが正解なのだ……って、あれ? 誰も降りてこないんだけど……。

僕は少し顔を上げ、おずおずと馬車を見つめる……っ!?

「フン……『 穢(けが) れた王子』と『無能の悪童王子』がお出迎えとは、聖王国も舐められたものだな」

「「っ!?」」

ええー……どこからともなく目の間に躍り出た聖騎士に、失礼なことを言われたよ。

フルフェイスの兜を被っているから顔は分からないけど、その声はメッチャ聞き覚えがある。

間違いない。この尊大な態度を取る彼女は、『エンゲージ・ハザード』のメインヒロインの一人。

――聖騎士“カルラ=デルミニオ”。

「無礼な!」

カルラの物言いに、真っ先に吠えたのはウィルフレッド。

それはもう犬歯を 剥(む) き出しにして、射殺すような視線を向けているとも。

僕? 僕はただ、ニコニコして様子を 窺(うかが) っておりますが。

だって、このヒロイン……カルラの性格を、熟知しているからね。『エンハザ』のヘビーユーザーを舐めないでほしい。

本来の彼女は、誇り高く高潔な騎士道精神の持ち主で、決して人を 貶(けな) したりするような 女性(ひと) じゃない。

となれば、こんな物言いをしたのには何か理由があるはず。

考えられるのは、今回の使節団のトップである教皇が、僕達をわざと 煽(あお) るように指示をしたってところだろう。

だけど、その疑問はすぐに解消された。

「うふふ……カルラ、そのような失礼なことを言ってはいけません。早く、ハロルド殿下とウィルフレッド殿下に謝罪なさい」

馬車の扉が開かれ、神官服をまとい、ベールを被った一人の女性が姿を現す。

彼女こそは『エンハザ』における、光属性最強かつ最も性格の悪いヒロイン。

――聖女“クリスティア=サレルノ”。