軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イベントボスよりも怖い専属侍女が待ち構えていました。

迷宮の守護者であるレオゴーレムは、ライオンをかたどった土のゴーレムで、『エンハザ』においては中ボス設定となっている。

その強さは、完凸したヒロイン達ならカモではあるけれど、まだヒロインの成長が中途半端な状態で挑めば、簡単に全滅してしまうだけの強さはある。

通常のイベントみたいに、もうちょっとプレイヤーのレベルやヒロインの能力値に合わせ、ボスの能力値の調整があればよかったんだけど、残念ながら『称号』は、ある程度完凸させたヒロインを有する中級者以上をターゲットにしており、それに合わせてボスや雑魚も固定となっていた。

まあ、ここまで来る中で吸血コウモリを普通に倒せていた時点で、僕の能力値は中級以上であることは間違いない。

「ハ、ハルゥ……」

おっと、キャスが情けない声を出しているよ。

というか、この程度の魔獣でそんなにビビらなくても。

「落ち着け。今のキャスは僕のマナで本来のキャスパリーグとしての力を持っているんだし、それに、あの敵はヘンウェンの足元にも及ばないほど弱い」

「そ、そうなの……?」

「そうだ。だから、僕とお前なら絶対に倒せる」

そう言って、僕はわざと笑顔を見せる。

相棒が不安になっているなら、奮い立たせるのは僕の役目だからね。

僕達は、一人と一匹で強くなるんだから。

「そ、そうだよね! ボクだって、災禍獣キャスパリーグなんだ! あんな奴、やっつけてやる!」

「そうこなくちゃな!」

キャスは前脚を振り回し、自分を鼓舞する。

そんな姿が微笑ましいけど、どうやらレオゴーレムはこちらに気づいたみたいだ。

「グル……?」

「僕達はこの先に進まなきゃいけない。悪いけど、乗り越えさせてもらうよ」

「ゴアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」

僕の言葉を開戦の合図として、レオゴーレムが雄叫びを上げて駆け出した。

土でできているから、地響きがすごい。

「キャス! 来るぞ!」

「うん!」

盾を構え、僕達はレオゴーレムを迎え撃つ。

「ぐ……っ!」

真正面からぶつかったものの、僕は踏ん張って突進を受け止めた。

うん。ヘンウェンの前脚に比べれば、大したことはない。

「いけるぞキャス! 僕が防いでいるうちに!」

「任せて! 【スナッチ】!」

「グルウウウオオオオオッッッ!?」

レオゴーレムの前脚の爪による攻撃を全て防ぎ切り、その隙にがら空きになった胴体をキャスが【スナッチ】で斬り裂く。

だけど。

「チッ! 回復するのか!」

レオゴーレムは『ゴーレム』と名がつくだけあって、すぐに修復されてしまう。『エンハザ』では普通にダメージが蓄積されるんだけど、そういうわけにはいかないみたいだ。

となると…………………………そこか!

「キャス! アイツの首元にある文字が見えるか?」

「っ! うん! 『emeth』って書いてある!」

「なら、先頭の『e』の文字を、お前の自慢の爪で削り取ってやれ!」

「分かった! 【スナッチ】!」

僕は噛みつきにきたレオゴーレムの口に盾を突っ込んでやり、その隙にキャスがキッチリと『e』の文字を 抉(えぐ) った。

すると。

「ゴ……ア……ア………………ッ」

弱々しい声とともに、レオゴーレムは砂となって崩れる。

その砂の中から、ドロップ品であるマナポーションと闇属性の魔石、それに三枚の金貨が現れた。

「やったね! 相棒!」

「ああ!」

子猫の姿に戻ったキャスと、僕はコツン、と拳を合わせる。

やっぱり同じ属性だけあって、僕と『漆黒盾キャスパリーグ』の相性は最高だ。

「ねえねえ! この先に、ハルの欲しがっているものがあるんだよね?」

「んー……広い意味ではそうだけど、まだまだ先だよ。僕達はレオゴーレムを一体倒しただけだし」

そう……この迷宮には、最後の階層を除きレオゴーレムが各フロアに一体配置されている。

迷宮の階層は十あるので、あと八体を倒さなければならない。

もちろん、 その次(・・・) も。

「そういうことだ。ぬか喜びさせて悪かったよ」

「べ、べっつにー! あんな敵、ボクとハルなら楽勝だもんね!」

まだまだ先があるのだと知り、あからさまにガッカリしたキャスだったけど、僕が頭を掻いて謝ると、強がって前脚を振り回し、そんなことを言った。

僕の婚約者も世界一可愛いけど、キャスもキャスで可愛らしい魔獣だな。

どうやら僕は、可愛いに恵まれているみたい。

「じゃ、戦利品も手に入れたことだし」

「先に進む、だよね」

「いや、ここで一旦引き返そう」

「あれ!?」

この『称号』クエストは、階層の数だけシナリオがあり、一つの階層をクリアして次のシナリオ……階層に進むこととなる。

それを考えると、きっとここも……。

「やっぱり」

思ったとおり、レオゴーレムがいた部屋の奥には、次の階層に下りる階段と魔法陣があった。

おそらく、この魔法陣の上に乗れば、迷宮の入り口に戻れるんだと思う。

ということで。

「わ! わ! 一瞬で戻ってきた!」

「そうだね」

魔法陣の上に乗った瞬間、僕達は迷宮の入り口に転移した。

階層の魔法陣を使用したことで、発動したんだと思う。足元には、最初にここに来た時にはなかった魔法陣が描かれていた。

とにかく、今はそんなことどうでもいい。

だって。

「ハロルド殿下、キャスさん。こちらで何をされておられたのでしょうか?」

「「ヒイイ」」

腕組みをして仁王立ちする無表情のモニカが迷宮の入り口で待ち構えていて、ハイライトの消えた瞳で僕達を見つめていたのだから。