軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕は三人の兄弟に任せることにしました。

「くきき……四人の王子が揃いも揃って国王陛下の命に従わず、こうして牙を剥くとは……愚かな」

そんな衛兵達の後ろから姿を現したのは、子供のように小さな醜い中年男だった。

「誰だ貴様は!」

「おや? ご存じありませんか。まあ、それも仕方ありませんな。では自己紹介するといたしましょう」

声を荒げて問い 質(ただ) すカーディスに向け、醜い中年男は胸に手を当てて 恭(うやうや) しく一礼すると。

「私はエイバル陛下に仕えし宮廷魔導士の、“ウェスト=バース”と申します」

顔を上げ、卑屈でいやらしい笑顔を見せた。

「へえ……父上に貴様みたいな部下がいるなんて、初耳だね」

「さもありなん。私はずっと、王宮の地下深くで研究三昧でしたからねえ。それを条件に、国王陛下にお仕えしているのですから」

中年男……バースがくつくつと笑う。

ちなみにこのバース、もちろん『エンハザ』に登場するイベントボスの一人だ。

宮廷魔導士とは名ばかりで、その実態は王宮地下奥深くにある秘密の地下牢の番人であり、囚人をオモチャのように 弄(もてあそ) んでは実験を繰り返す死霊術師というのが、本当の姿である。

つまりここにいる大勢の衛兵達は、バースによって殺され、死体となった者達が操られているということなんだけど……これは少々厄介だな。

もちろんサンドラやモニカの手にかかればこの操られた死体を蹴散らすことは簡単だけど、どうせバースは死体を何度も蘇らせて僕達を襲わせるに違いない。

そんな面倒なことに、付き合ってられない……って。

「兄貴、どうする……? 衛兵はいいかもしんねーけど、さすがに使用人まで手出しできねえよ……」

「あー、彼等はバースに操られているただの死体だから、気にしなくても大丈夫だぞ」

「っ!?」

「ほ、本当か!?」

困った様子で声をかけてくるオーウェンに軽い調子で答えてやるなり、彼は不敵な笑みを浮かべ、『唯我独尊アイアンバット』を振り回すと。

「オラオラオラオラオラオラオラオラァッッッ!」

オーウェンが衛兵達へと突っ込み、次々と蹴散らしていった。

衛兵達は既に死体だし、いわばゾンビみたいなもの。すぐに起き上がってくるものの、動きも遅いし、両腕両脚を潰してしまえば起き上がることもできなくなる。これなら制圧するのは難しくないかもしれない。

「それで? オマエの能力は 人間の(・・・) 死体を操るだけじゃないだろう?」

「くきき……ハロルド殿下、よくお分かりですね」

「そうかい? まあ、オマエは死霊術師だからね。別に人間に限らないと思っただけだよ」

僕はあえておどけてそう告げると、バースはあからさまに顔をしかめる。

まさか自分の正体を知られていたなんて、思いもよらなかったのだろう。

さて……コイツは最大最強の死体を使役すると思うけど、そうするとやって来るのは。

「みんな! 敵は 下(・) だ!」

「「「「「っ!?」」」」」

僕の言葉でバースを除く全員が床を凝視した。

その瞬間、魔獣の亡霊の鳴き声が響き渡り、床が大きく揺れる。

さあ、お出ましだ。

「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

床を突き破り、全長が二十メートルを超すほどの骨のみの魔獣が現れた。

それも、二体。

「きひひ……どうです? 可愛いでしょう。この私が、王宮の奥深くで発見したんですよ」

「可愛い? オマエ、馬鹿だろう。かつてデハウバルズ王国に災いをもたらした魔獣である“暴君竜ア=ドライグ”と“殲滅竜グウィバー”のどこが可愛いんだよ」

僕がこの二体の魔獣の正体を知っていることに、バースは驚きを隠すことができずに目を見開いた。

だけど、こっちからしたらこの二体のドラゴンが厄介極まりない。

何せこの二体のドラゴンの弱点はアンデッド特有の光属性を除けば、暴君竜ア=ドライグは水属性、殲滅竜グウィバーは土属性がそれぞれ弱点となっているなど、的を絞ることが難しいのだ。

だからバースの攻略に当たっては、パーティー編成にいつも頭を悩ませていたよ。

せめてここに聖女であるクリスティアがいれば、状況は違っていたんだけど……。

「ふむ……伝説の竜とは、相手にとって不足はない」

「そうだね。それに、文献にはこの二体の竜の弱点は記されている。三属性の魔法が使える僕なら、対処可能かな」

「ケッ! 要はコイツ等、まとめてぶっ飛ばしてやりゃいいんだろ? 簡単じゃねえか!」

意外なことに、カーディス、ラファエル、オーウェンが前に出た。

僕は慌てて止めようとしたけど、思い留まる。

ラファエルの言うとおり、彼なら【妖精王の祝福】により三属性の魔法を使えることもあるけど、何よりカーディスとラファエルは王族であり、光属性スキルの使い手でもある。

それにオーウェンは、ウィルフレッドの代わりとはいえ『エンゲージ・ハザード』の主人公。アイツなら、この局面を何とかしてくれるかもしれない。

「そういうことだから、父上……エイバル王との決着は、ハロルドに任せる」

「だからって、ハロルドを次の王だと認めたわけじゃないからね」

「兄貴! ぶちかましてやれ!」

三人に背中を思いきり叩かれ、僕は思わずよろける。

オーウェンはともかく、二人からもこんなふうに背中を押されるなんて、思いもよらなかった。

『エンハザ』ではカーディスの太鼓持ちでしかなかったハロルドが、まるで主人公のような扱いを受けているのだから。

「ハル様、まいりましょう」

「……うん」

サンドラに手を引かれ、僕達はバースの横を通り過ぎる。

阻止されるかと思ったが、意外にもすんなりと先へと行かせてくれた。

ひょっとしたら、 アイツ(・・・) から何かを言われているのかもしれないな。

「みんな……ご無事で」

振り返ってそう呟くと、僕は先へと進んだ。