軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

敵が襲撃をしかけてきました。

「みんなは?」

「ご安心ください。オーウェンはマリオン、ロイド様と一緒におります。リリアナ様も、リゼ様、クリスティア様、それにカルラ様と一緒です」

部屋に戻ってきたモニカの報告を受け、僕は頷く。

連中が今夜にも仕掛けてくる可能性が高い以上、警戒のためにみんなに三人ないし四人のグループで固まっておくように指示をしておいた。

全員一緒の部屋でとも考えたけど、それはそれでこんなところじゃ身動きも取りづらくなるし、それに、さすがにそこまであからさまだと、連中がとんでもない行動に出るおそれもあるからね。

「ふふ……早く来ないでしょうか。そうすればこんな古びた塔を後にして、ハル様と王都までの帰路を楽しめるのですが」

甲冑を身に 纏(まと) い、サンドラは真紅の瞳を 爛々(らんらん) と輝かせている。

誰がこの部屋に来るのかは分からないけど、ご愁傷様と言うほかない。

「ハア……そうすると、せっかくハロルド殿下の持ち物を全て犠牲にして用意した食料が、全て無駄になってしまうわけですね」

頬に手を当て溜息を吐くモニカ。その前に、君が台無しにした僕の荷物を何とかしてくれないかな?

このままじゃ、下着も交換できないことが確定なんだけど。

「ハル! ハル! ここを出たら、モーン島に寄り道したいんだけど……駄目かな?」

僕の頬に身体をすり寄せ、キャスが上目遣いでねだるように尋ねる。

何この相棒。メッチャ可愛い。

「もちろん構わないよ。あれから三年も経つんだし、キャスのお母さんのお墓参りも兼ねて行こう」

「わあい! ありがとうハル! 大好き!」

「あはは! くすぐったいよ!」

大喜びのキャスは僕の肩の上をグルグルと回って、これでもかと頬を舐めた。

で、どうしてサンドラとモニカは、そんな物欲しそうな顔で僕達を見ているんですかね? ……って。

「っ! 殿下、上です!」

「了解!」

「うん!」

あっという間に『漆黒盾キャスパリーグ』に変身したキャスを天井に向ける。

「っ!? 馬鹿な!?」

「甘いですね。それで襲撃したつもりですか」

現れた紫のフードの男の驚きの声と同時にサンドラが一瞬で男の背後を取ると、声すら発することも許されず、男は顔の半分を横一文字に両断された。

「右手にノームのタトゥー……『四極』の一人の……ごめん、名前忘れた」

「ハル様、この者は先程も名乗ってはおりません。ですので、お知りにならないのも当然です」

「そ、そっか」

サンドラはそうやってフォローしてくれたけど、そもそも『エンハザ』のイベントボスの名前を忘れたって意味なので、ちょっとニュアンスが違うかな。

でも、『エンハザ』のヘビーユーザーである僕がイベントボスの名前を忘れるなんて、これは反省すべきところ。このイベントを終えるまでに、名前を思い出しておこう。

「ですが、ハロルド殿下の予想どおり、 向こう(・・・) から手出しをしてきましたね」

「うん」

『魔塔に潜む壊れた愛玩人形』のシナリオでは、主人公とヒロイン達は晩餐会の料理の中に仕込まれた睡眠薬によって、地下牢に閉じ込められる展開だったからね。

それが叶わなかった以上、実力行使に出てくるに決まっている。

「それより、他のみんなの部屋に向かおう。きっと、同じように襲撃を受けているはずだから」

「「はい」」

僕達は部屋を飛び出して周囲を警戒しつつ、まずはリゼ達のいる部屋へと向かった。

「リゼ! みんな!」

勢いよく扉を開け、僕達は部屋の中に飛び込む……んだけど。

「コノ! コノ! あなた達のせいで私はお腹を空かせているんですからね!」

「ま……待……っ!? ぐぺえッッッ!?」

リリアナの壁にめり込むほどの腹パンを受け、哀れ紫のフードの女は奇妙な声を上げてそのまま沈黙した。

ちょっとオーバーキルが過ぎるんじゃないだろうか。

「み、みんな、大丈夫……だね」

「え、ええ……リリアナのおかげで、私達は無事よ」

さすがのリゼも、鬼神と化したリリアナの様子にメッチャ引いている。

おそらく空腹ということも相まって、その恨みの全てをあの女が受け止めたってことなんだろうな。完全にとばっちりだ。

「これで残る『四極』は二人」

「ハル様、『四極』というのは?」

「あ、クリスティアさん達は知らなかったね」

僕はオーウェン達の部屋へと向かう中、『四極』について説明した。

魔塔主マクラーレンに従う四人の配下で、それぞれの属性の上級魔法を駆使する者達。

自分の属性を司る精霊のタトゥーを右手の甲に施しているのが特徴だ。

「この女の右手にあるタトゥーはウンディーネ。つまり、水属性魔法の使い手というわけだ」

「なるほど……どうりで」

壁にめりこんだままの女を見つめ、カルラがうんうん、と頷く。

部屋の周囲が濡れていることからも、少なくとも敵は魔法を駆使したみたいだ。

「おっと、こうしてはいられない。オーウェン達の部屋へ向かおう」

オーウェンはともかく、ロイドも『ガルハザ』の攻略キャラとしてそれなりの実力が備わっているし、マリオンには『戦斧スカイドライヴ』がある。

イベントボス一体程度で後れを取るようなことはない……はず。

「オーウェン! 無事か……っ!?」

急ぎオーウェンの部屋へとやって来た僕達だったけど、視界に飛び込んできたのは荒らされた部屋の中のみ。

残念ながら、オーウェン達の姿はなかった。