軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

弟の頼みを渋々引き受けることにしました。

「一応、俺にもマリオンっていう侍女が正式に配属されることになったんで、ソイツと魔塔主って奴に会いに行くことに……」

「マリオン!?」

久々に聞いたその名前に、僕は思わず勢いよく立ち上がった。

あの女、まだ王宮内にいたのか!?

ウィルフレッドの失脚によって、アイツもカディット塔で最下層の扱いを受けているはずだったのに……。

「お、おう……優秀な侍女だからって、用意してくれたらしいんだけどよ……」

僕の反応に、オーウェンが少し困惑している。

だけど、こんなの驚くに決まっているし、嫌な予感しかしない。

ひょっとしたら、オーウェンをまたウィルフレッドと同じような 屑(くず) に仕立て上げるつもりなのか……?

「いいかオーウェン、マリオンには絶対に心を許すな。それがお前のためだ」

「ほ、本当かよ……だけど、国王陛下は俺のためにって……」

僕が真剣な表情で忠告したからか、オーウェンは珍しく忠告を聞き入れ、少し落ち込んだ様子だ。

あのパーティー以降で分かったけど、コイツはエイバル王によってウィルフレッドの代わりとして主人公にあてがわれたものの、その本質は馬鹿で礼儀知らずではあるものの、ある意味素直で単純。よく言えば決して 悪巧(わるだく) みができるような奴じゃない。

本当は関わり合いにならずに遠ざけたほうが、噛ませ犬である僕にとっては破滅フラグを回避するにはいいんだろうけど、逆に放ったらかしにしたほうが、よからぬ 輩(やから) に利用される危険が高いとも思っている。

マリオンがオーウェンの専属侍女にあてがわれたのなら、なおさらだ。

「は、話を元に戻すと、魔塔主に会いに行くのは俺とマリオンの二人。他にも何人か見繕っていけっつーことなんだけど、俺……知り合いなんていないし……」

あからさまに肩を落とし、チラチラと僕達の顔色を 窺(うかが) っている。

ええー……つまりこれ、僕達をメンバーに誘ってるの?

「断る」

「まだ誘ってねえのに!?」

いや、誘う気満々だったじゃないか。

そんな面倒事に付き合わされるなんて、コッチはお断りなんだよ。

「し、師匠! 師匠は来てくれるっすよね!」

「ハル様が行かないのに、この私が行くわけがないじゃないですか」

まあ、当然だよね。

ただでさえ【竜の寵愛】もあってヤンデレ特化のサンドラが、 番(つがい) である僕の 傍(そば) を離れるはずがないし。

「そ、その、リリリ、リリアナ嬢は……」

「えー、嫌です」

「グハッ!?」

リリアナにもにべもなく断られ、いよいよ誘う相手がいなくなったオーウェン。

他にもリゼやクリスティア、カルラだってこの場にいるものの、少しずつオーウェンから距離を取っているから、絶対拒否するという確固たる決意が 窺(うかが) えるよ。

「うおおおお……っ! 俺……俺、こんなに嫌われてんのかよお……っ!」

とうとうテーブルに突っ伏し、オーウェンが 嗚咽(おえつ) を漏らす。

どこまでも可哀想に思うけど、僕がオマエに付き合ったら噛ませ犬ムーブを求められることは必至なんだ。ここで余計なフラグは立てたくないんだよ。

「なあ……ハロルドォ……お前が一緒に来てくれたら、師匠だって、他のみんなだって来てくれるんだ。だから、俺を助けてくれよおおおおおお……っ!」

「うわ!? や、やめろよ!?」

涙と鼻水まみれの顔で、僕の足にしがみついて懇願するオーウェン。

そこにはもう、『エンゲージ・ハザード』の主人公としての面影は一切なかった。

コイツ……主人公のくせに、噛ませ犬相手にここまでプライドをかなぐり捨てることができるなんて……。

ある意味オーウェンに感心しつつも、僕だってバッドエンドは嫌なんだ。

いくらお願いされたところで、絶対に断るから。

「た、頼む! もし一緒に来てくれるなら、俺は一生あんたについていく! 元々、王位継承争いなんざ俺の知ったこっちゃねえんだ! だから!」

いや、メッチャ必死だな。

というか、主人公が噛ませ犬に服従するなんて、本当にそれでいいのか? もしここにユリがいるのなら、一時間くらい問い詰めてやりたいんだけど。

どうしたものかと、僕はチラリ、とサンドラを見ると……ああうん、僕の判断に任せてくれるんだね。

モニカや他のみんなも同じような感じだし、結局は僕が決めろってことかあ……。

「神様仏様ハロルド様、どうかお願いします……お願いします……っ」

いや、この世界に神はいても仏はいないだろ。土下座文化といい、ちょくちょく世界観がおかしなことになってる。

まあでも……ハア、しょうがないなあ……。

「いいか、今回だけだからな。あと、魔塔へ向かって再び王都に帰ってくるまでの間、絶対に僕の指示に従うんだぞ」

「! も、もちろんだ! ありがてえ! ありがてえよお……っ!」

僕の手を取り、天井を見上げて号泣するオーウェン。

本当にこれでいいのかと自問自答したくなるけど、まあ…… 弟(・) が泣いて頼むんだから、しょうがないのかなあ。

こちらの様子を見て苦笑するサンドラに、僕もまた苦笑して返した。