軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招待客が、全員揃いました。

「カーディス兄上……」

現れたのは、第一王子のカーディスだった。

モニカの調査では、エイバル王のあの宣言の後は特に目立った動きもなく、学業に専念しているという話だったけど、まさかパーティーに参加するとは思ってもみなかったので、参加表明の書状を見た時には驚いたよ。

「よ、ようこそお越しくださいました。今日はぜひ楽しんでいってください」

なんて、心ないことを言ってみる。

きっとパーティーに参加する他の生徒達は、カーディスの姿を見て微妙な空気になりそうな気がするよ。

「ああ、そうさせてもらう。私にとって、何のしがらみもないパーティーは、これが初めてだからな」

「そ、そうですか……」

そういうことを言われると、こっちもどうコメントしていいか正直困るんだけど。

でも、確かにカーディスはこれまで、王位継承争いのための派閥拡大のために、他の貴族達とのやり取りに勤しんでいたもんなあ。

そういえば、子供の頃も常にマーガレットの期待に応えるために第一王子としての振る舞いを余儀なくされていて、カーディスの子供らしく喜んだり楽しんだり姿を見たことがないかも。うわ、メッチャ可哀想。

「兄上……どうか、思う存分楽しんできてください」

「あ、ああ……」

思わず涙ぐみそうになりながら心を込めてそう告げると、カーディスに若干引かれた、解せぬ。

だけど、これでカーディス、ラファエル、オーウェンと、王位継承争いをしている三人の王子が一堂に会すパーティーになるなんて、思いもよらなかった。

そもそも僕は、リリアナと『ガルハザ』の攻略キャラとの接点を作るためという 邪(よこしま) な理由で、このパーティーを開催しただけなんだけど。

「これは、面白いことになってきましたね」

「うわっ!?」

いきなり真後ろから声をかけられ、僕は思わず驚きの声を上げた。

というかいつも言ってるけど、音もなく近づくのは心臓に悪いのでやめてほしい。

「モ、モニカ、会場のほうはどう?」

「はい。既に多くの生徒がご歓談を楽しまれておられます。そろそろ中でご挨拶いただけますでしょうか」

「うーん、もうちょっとだけ待って」

僕はモニカに断りを入れ、寄宿舎のあるほうへと目を向ける。

一応、今日のパーティーはリリアナのために開いたと言っても過言じゃないし、主役の彼女がいなければ始まらないからね。

それに、クリスティアとカルラだって、まだ来ていないし……って、噂をすれば。

「うふふ、遅くなりました」

「本日は楽しませていただきます」

おおー、クリスティアは式典用の神官服で参加するのか。二年半前に使節団として来た時以来だから、ちょっと懐かしい。

対してカルラは、シルバーのタキシード姿とは意表を突かれた。僕はてっきり、聖騎士の正装かドレスだと思っていたのに。いや、彼女は背も高いからすごく似合っているし、とにかくカッコイイ。

「それはもう、思う存分楽しんでください。ほら、リゼも」

「フフ、そうね。じゃあ、またね」

リゼはクリスティア、カルラと一緒に、ようやく講堂の中へ入っていった。

「さて……残るはリリアナとロイドだけだな」

「リリアナさんはともかく、ロイド様はすぐに支度がお済みになると思うのですが……」

「そうだよねえ……」

僕はロイドのことだから、てっきり会場に早く到着して、女子生徒を物色するものだと思ってた。

だってロイド、残念イケメンだし。そしてヘタレでもある。

でも、ロイドはこの王立学院で僕の数少ない男の 親友(・・) だし、あの性格だって嫌いじゃない。

できれば、彼にも幸せになってほしいんだけど。

「ハロルド殿下、いらっしゃったようです」

「え? 本当?」

モニカはそう言うけど、僕には全然姿が見えない。

どうやら彼女とは、視力に圧倒的な差があるみたいだ。

しばらくすると。

「ああもう! なんでそんなに支度が遅いんだよ!」

「しょうがないじゃないですか! 私だって、ドレスを着ることなんてめったにないんですからね!」

口喧嘩をしながら走っている二人の姿が、僕の肉眼でも 捉(とら) えることができたよ。

でもこれ、エスコート……なのかな? 僕が知ってるやつと、ちょっと違う。

「や、やあ、遅かったね」

「ハア……ハア……き、聞いてくれよハル! コイツが一人だと緊張するからって頼むから、わざわざ迎えに行ってやったっていうのに、散々待たされるわ、文句言われるわでたまったモンじゃねーよ!」

「し、仕方ないじゃないですか! 私だって、パーティーなんて初めてなんですからね! ていうか、エスコートくらいちゃんとしてください!」

「ストップストップ!」

喧嘩を始める二人に割って入り、とにかくなだめる。

この二人、こんなに仲悪かったっけ……。

「ホ、ホラホラ、もうパーティーも始めるから、早く中に入って!」

「お、おう! ようやく解放されるぜ……」

「お肉! お肉!」

安堵で胸を撫で下ろすロイドと、『お肉』を連呼するリリアナ。

どう見ても、これから一緒にパーティーに参加するカップルには見えない。

あの二人、本当に主人公と攻略キャラなんだろうか……。

「ふふ。では、私達も」

「うん、そうだね」

僕はサンドラの手を取ると、あの二人に続いてみんなが待つ講堂の中へと入った。