軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

年末試験イベントが始まりました。

王立学院における年末試験は、生徒達のこれまでの努力の集大成と呼べるもので、この成績如何で学院内におけるカーストが形成されると言っても過言じゃない気がする。

『エンゲージ・ハザード』内においても、年末試験は毎年十二月に開催される定期イベントでもあり、『エンハザ』に関するクイズや、限定レイドボスの討伐成績などによって順位付けがなされ、上位者にはイベント限定のUR武器が報酬として与えられる。

年末試験イベントが行われたのは、たった一回しかないけど。

まあ、そもそもリリースから半年でサービス終了になったんだからしょうがない。

いや、もちろんヘビーユーザーの僕は一切納得してないよ? 年末試験イベントガチャだって、バイト代を注ぎ込んでメッチャ回したんだから。

いずれにせよ、このイベントを乗り越えて無事に冬休みを迎えるためにも、頑張るしかないよね。

ということで。

「ほら、ここ間違えてる」

「うう……ハルがスパルタだわ……」

今日は急遽、年末試験に向けた勉強会を開催することにした。

座学に関しては前世で大学生だった僕には楽勝なので、ひたすらリゼ、リリアナ、ロイドの教え役に徹していますとも。

なお、僕は前世で家庭教師のアルバイトをしていたので、教えるのは得意だったりする。

え? 『家庭教師ができるならコミュ障じゃないだろ』って? 『エンハザ』でガチャを回すためには、背に腹は代えられないんだよ。

「ほら、リリアナも。この式を代入したら、簡単に解けるから」

「ハル先生! やる気が出るようになるために、報酬(肉)が欲しいです!」

いやこの女主人公、本当に欲望に忠実だな。

だけどまあ、お肉程度で落第を回避できるのなら、安いものか。

「分かったよ。年末試験で無事に及第点を取ることができたら、リリアナにはお肉をご馳走するから」

「! 言いましたね! 絶対ですからね! 約束ですからね!」

肉って言った瞬間、食いつきがすごい。

ただし、それと同じくらい勉強に向かう姿勢が一八〇度変わったけど。猛獣使いになった気分……って。

「ええとー……みんな、どうして僕を見るのかな?」

「「「「「…………………………」」」」」

教え子のリゼやロイドだけでなく、サンドラ達まで欲しがりな瞳で僕に注目してるんですけど。

「ハア……分かったよ。みんな及第点以上だったら、ハロルド=ウェル=デハウバルズの名において、盛大にお祝いするよ」

「「「「「やった――――――――!」」」」」

うーん……まあ、これくらいでみんながやる気になるなら、いいよね。ダメ?

いよいよ迎えた、年末試験当日。

僕達は今、それぞれの教室で学科試験の答案用紙とにらめっこしているよ。

といっても。

「ふふ……」

「このモニカにかかれば、造作もありません」

ペンを机に置いて微笑むサンドラと、眼鏡をクイ、と持ち上げてドヤ顔を見せるモニカが視界の端に入る。

この二人に関しては、何も心配いらないね。

そもそもモニカに至っては、僕達よりも四つも……モニカから殺気が飛んできたので、控えるとしよう。

それより。

「くっそう……今年の試験、絶対に過去イチの難しさだっただろ……」

「あうう……私のお肉がああああ……っ」

……どうやらロイドとリリアナは、 芳(かんば) しくないみたいだ。

せめて落第しないことを祈っているよ……って。

「…………………………」

試験そっちのけで、窓の外を眺めているユリ。

彼のことだから心配はしていないけど、ちょっと気になる。

「試験中はよそ見をしないように」

いけない。カンニングなんて疑われたら 堪(たま) ったものじゃないね。

僕はみんなの様子を 窺(うかが) うのをやめ、答案用紙を見直した。

そして。

「あああああ……駄目だ。俺はもう駄目だ……」

「さようならお肉。ありがとうお肉」

全ての学科試験が終了し、机に突っ伏して頭を抱えるロイドと、燃え尽きて真っ白になったリリアナ。

「ほ、ほら。学科試験で失敗しても、次の実技試験で取り戻せばいいじゃないか」

「そ、それはそうだけどよお……」

「うう……せっかくハルさんに勉強を教えてもらったのに……」

「まあまあ、気持ちを切り替えようよ。それに、今日の悔しさは来年の年末試験で取り返そう」

落ち込む二人を必死になだめ、僕達は次の実技試験の準備のため訓練場に移動する。

この実技試験は実戦形式となっており、ランダムに選ばれた生徒同士で四人一組のチームを組んで、学院が用意した魔獣と戦うというもの。

内容的に、『エンハザ』の年末試験イベントのレイドボス討伐と同じ形式みたいだ。

「神様お願いします! 私とハル君を、同じチームにしてください……!」

「あ、あははー……」

チーム分けについては教師が能力のバランスに応じて組み合わせるため、誰と組むか分からない。

それに、同じクラスだけでなく、学年全体でのチーム分けのため、最悪の場合僕とウィルフレッドが同じチームになるなんてことも……いや、さすがにそれはないか。

王立学院も馬鹿じゃなければ、犬猿の仲である僕達を一緒のチームにしようとは思わないよね。

ただ、僕とウィルフレッド以外に関しては考慮しないだろうから、僕のチームにアイツのハーレム要員が加わることもあるだろうし、逆にウィルフレッドのチームにサンドラが入ることだってあり得る。それだけは絶対に拒否したい。

「それでは、今からチーム編成を発表するぞ!」

訓練場に掲示板が掲げられ、各チームが発表された……んだけど。

「ええー……」

残念ながら僕のチームメンバーは、ユリとリリアナ、そして、ウィルフレッドの専属侍女であるマリオンだった。