軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖女がお出迎えしてくれました。

「うわあああ……!」

ようやく王都カディットに到着した僕達が一路王立学院を目指す中、ユリシーズは車窓から見える街並みに、感嘆の声を漏らす。

まあ、今までずっとサルソの街しか知らない彼からすれば、驚くのも無理はないよね。

「王立学院に着いたら、すぐにユリシーズ君の部屋や制服を用意しないとね」

「ご安心ください、学院には、あらかじめ手紙を送っております。既に用意されているでしょう」

おっと、さすがはモニカ。

普段は全力で 揶揄(からか) ってくるけど、仕事に関しては相変わらず完璧だね。

ただ、部屋はともかく、制服に関してはユリシーズの寸法を測ってもいないというのに、どうやって用意したんだろう? ちょっと気になる。

「それこそご心配無用です。ユリシーズ様の体格に合わせた既製品をご用意しただけですので」

「そ、そう」

「はい。このモニカ=アシュトン、ハロルド殿下以外の殿方のお身体に興味はございません」

いやいや、何を変態じみたことを言っているのかなあ。

そんなことを言うものだから、サンドラにメッチャ睨まれているよ。僕が。

針のむしろ状態のまま馬車は大通りを進み、僕達は王立学院に到着した。

「お、大きな建物ですね……!」

「うん。この王都では、王宮の次に大きいからね」

というより、『エンゲージ・ハザード』の舞台としてどうしてもこれだけの規模のものが必要だったから、というのが正しいけどね。

ほら、この敷地内で、『エンハザ』のイベントの大半が行われるんだ。小さな学舎だと、それこそ貧相なイベントになってしまうよ。

「この時間だとまだ授業中だから、まずは寄宿舎に向かうとしよう」

「はい」

ということで、馬車を降りた僕達は、真っ直ぐ寄宿舎を目指す。

すると。

「うふふ、お帰りなさいませ。ハロルド殿下、アレクサンドラ様、モニカ様」

どういうわけか、クリスティアがたった一人で待ち構えていたよ。

「え、ええとー……その、た、ただいまです」

「はい」

ちょっと困惑しながらそう告げると、クリスティアがニコリ、と微笑む。

というか、どうやって僕達が帰ってきたことを知ったんだ……?

「城門にいる信徒から、殿下のお帰りについて報告をいただきましたので」

「そ、そうですか……」

あー……バルティアン聖王国は、世界中に信徒がいるもんね。城門を守る衛兵の中にも、信徒がいて当然か。世界中どこに行っても便利そう……って、そうでもないか。

聖女ともなれば、逆に世界中どこにいても監視され続けるってことだから。

それは、この学院内であっても。

「……せめて僕達と一緒の時は、聖女でなくたっていいんですからね?」

「あ……うふふ、ありがとうございます」

不意に言葉にしてしまって照れる僕を見て、クリスティアは嬉しそうにはにかんだ。

「とりあえず、どうして聖女様が授業をサボっていらっしゃるのかは置いといて……彼はユリシーズ=ストーン。ストーン辺境伯家の子息です」

「ユ、ユリシーズです! どうぞよろしくお願いします!」

挨拶もそこそこに、交流スペースにやって来るなり、僕はクリスティアにユリシーズを紹介した。

ユリシーズも緊張からか、直立不動の体勢から直角に身体を折り曲げたよ。初々しい。

「クリスティア=サレルノです。これから、どうぞよろしくお願いします」

「! はは、はい!」

おっと、ユリシーズが顔を真っ赤にしているよ。どうやら彼は、クリスティアの美しさに目を奪われたみたい。

だけど、聖女は腹黒なので、気をつけないと痛い目に遭うことは間違いないぞ。

『エンハザ』でも、言い寄るモブを上手くあしらいつつ、気づけば利用されて奈落の底に堕ちた男子生徒達も多くいたからなあ。

「……ひょっとしてハロルド殿下は、ユリシーズさんをウォーレンに会わせるおつもりですか……?」

「ご明察」

そっと隣に来て耳打ちしたクリスティアに、僕は頷いた。

「なるほど……だからハロルド殿下は、わざわざ島の北端まで向かわれたんですね。ですが、大丈夫なのですか?」

クリスティアが心配そうな表情で、僕の顔を 覗(のぞ) き込む。

今の口振りだと、ひょっとしてユリシーズがノルズ人だということを、知っているのか?

「聖王国はデハウバルズ王国よりも……いえ、世界で最も古くからある国。当然、ノルズ帝国のことも承知しています」

「そ、そうでしたね……」

腹黒だけに、やはり頭が切れる。

僕が何も言わなくても、全部お見通しってわけか。

「そうしますと、皆さんの授業が終わるまで時間がありますね。せっかくですから、ユリシーズさんのことを、もっと教えていただいてもよろしいですか?

「もも、もちろんです! 喜んで!」

ということで、僕達は放課後まで談笑した。

だけど……ユリシーズ、男性用の服装だからちゃんと男だって認識しているけど、これで女性用の服を着ていたら、普通に女性にしか見えないんじゃないだろうか。まつ毛もメッチャ長いし……って。

「サ、サンドラ?」

「むう……」

なぜか彼女は、僕の手をギュ、と握って口を尖らせております。

僕、何かしたっけ?

「ハロルド殿下が聖女様やユリシーズ様と親しげにされて、お嬢様が 拗(す) ねてしまいました。もちろん、この私とキャスさんも」

「ええー……」

「ボ、ボクを巻き込まないでくれる!?」

肩の上で猛抗議するキャスを見て、僕も、 拗(す) ねていたサンドラも、モニカも楽しそうに笑った。