軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思っていたものと違う結末になりました。

「全員、突入!」

ラファエルの号令とともに、ウィルフレッド達がいる建物の中へ、一斉に突入した。

「僕達も行こう!」

「はい!」

兵士達の後に続き、僕達も建物へと駆ける。

さすがにまだパーティーが始まったばかりのため、まだやらかすことはできないと思うけど、万が一のこともある。

絶対に、一人も被害を出してたまるものか。

「ウィルフレッドッッッ!」

大声で叫び、僕は建物の中に飛び込んだ……んだけど。

「ハハ……誰かと思えば、ハロルド兄上ではないですか」

そこには、地面に横たわる男子生徒達と、その一人を踏みつけて笑みをこぼしているウィルフレッド、『戦斧スカイドライヴ』を構えるマリオン、それと、剣を肩に担ぐウォーレンの姿があった。

こ、これは一体……。

「いやあ、まいりましたよ。せっかく親睦を深めるためのパーティーを 催(もよお) そうとしたのに、 先輩方(・・・) がいきなり暴走し始めたんですから」

「まったく……俺がいながら、ウィルフレッド殿下に迷惑をおかけし、申し訳ありません」

肩を 竦(すく) めるウィルフレッドに、ウォーレンは 跪(ひざまず) き、許しを請う。

ええー……何、この茶番。

だけど。

「……やられたね」

僕は聞こえないほどの声で、ポツリ、と呟く。

おそらく、最初は そういう(・・・・) 目的(・・) だったんだろうけど、どのタイミングかは分からないが、僕達の動きを察知して方針を変えたんだ。

「ウィルフレッド殿下……」

「みんな、心配いらない。この薄汚い連中は、俺達が制圧した。ハロルド兄上やラファエル兄上も来てくれたことだし、あとは任せるとして……さすがに、パーティーを続けることは無理だ。また日を改めて、お誘いしてもいいかな?」

「も、もちろんです!」

「ぜひ!」

ああ、うん。自分達が襲われそうなところを、ウィルフレッドが格好よく助けたことになっているんだろうな。ヒロイン達が瞳をキラキラさせてアイツを見ているよ。

結局のところ、当初計画していた最低のやり方で従わせるか、好感度を上げて依存させるか、その違いでしかない、か……。

というか。

「あれ……リリアナ嬢だよね」

「そのようですね」

女子生徒達の中には『ガルハザ』の主人公であるリリアナもおり、他の女子生徒と同様にウィルフレッドをうっとりと……いや、メッチャ微妙な顔をしているし。

……落ち着いたら、今日のことについて聞いてみようかな。

「ハロルド兄上、俺は彼女達を寄宿舎まで送り届けるから、後のことは頼みましたよ。ああ、できれば早く済ませてもらえますか? 俺、ここで暮らしているので」

「…………………………」

余裕の表情で僕の横を通り過ぎるウィルフレッドと、 忌々(いまいま) しげに僕を睨みつけてその後に続くウォーレン、さらには無表情のマリオンが、建物を出て行った。

「セドリック、中で何があったのか説明してくれ」

ラファエルが腕組みをし、セドリックに強めの口調で尋ねる。

ウィルフレッド達によって打ちのめされた男子生徒を全員連行した後、僕達は寄宿舎にある応接室に集まっていた。

「え、ええ……実は……」

セドリックは、パーティーに潜入してから僕達が突入するまでのことについて、詳細に説明する。

ウォーレンの取り巻き達と一緒に建物の中に入ると、既に異様な雰囲気に包まれていたらしく、先に来ていた男子生徒達は、興奮した様子で今か今かと待ち構えていたとのこと。

ウィルフレッドとウォーレンもいたが、二人は何かを小声で話し込んでおり、時折怪しげに笑っていた。

少し遅れてマリオンがやって来ると、ウィルフレッドに何かを耳打ちする。

ウィルフレッドの表情はますます 下卑(げひ) た笑みに変化し、それを見てウォーレンも察したようで、同じく醜悪な笑みがこぼれた。

セドリックも悟られないように、取り巻き達の身体で上手くウィルフレッド達の視線に入らないようにしつつ情報収集をしていると、今日の 生贄(いけにえ) である女子生徒達が次々とやって来た。

参加者である男子生徒達が彼女達を中へとエスコートするが、その興奮した様子に、女子生徒達は若干……いや、かなり引いていたとのこと。

ウィルフレッドがにこやかに応対し、ようやく安堵した様子を見せる女子生徒達。

まるで狙ったかのようにお酒が振る舞われ、女子生徒の一部が拒否しようとするが、ウィルフレッドは『全員が成人を迎え、入学した記念に』と、半ば強引に勧めてきたため、とりあえず全員がグラスを手に取る。

そして、ウィルフレッドはグラスを掲げ、いよいよパーティーが幕を開けようとした、その時。

――ウィルフレッドの表情が、険しいものに変わった。

すぐにマリオンとウォーレンを 傍(そば) に呼び、何かを耳打ちしたかと思うと、二人はウィルフレッドだけを残して会場から姿を消す。

二人が再び戻ってくるまで、時間にして僅か一分。

「……突然、ウィルフレッド殿下の侍女とウォーレンが、男子生徒達を叩きのめしていった。その中には、武器を持っていなかったこの私も」

「そ、そうか……」

話を聞き終え、ここにいる全員が何とも言えない表情を浮かべる。

なぜなら、セドリックの説明は、 腑(ふ) に落ちない点ばかりだったからだ。

かといって、彼が嘘を吐いているとは思わない。

だからこそ、余計にこの不可解な内容に、首を傾げずにはいられなかった。

「ハル様、どう思われますか?」

「分かりません……義兄上の話を聞く限り、ウィルフレッドは最初からこうするつもりだったとは思えませんし、何が起こって急に豹変したのか、それも分からずじまいです」

ただ、いずれにせよこちらの動きに気づいた何者かが、現場にいたセドリックには及びもつかない方法で、そのことをウィルフレッドに伝えたというのが、正解のような気がする。

「ラファエル兄上。いずれにせよ、今回のことは情報が漏れていたのは間違いありません。内部にいる 虫(・) を見つけ出さないと」

「そうだね。僕のほうも、今回は少し規模を大きくしすぎたかもしれない。もし 次(・) があるなら、より慎重を期すようにするよ」

僕としては 次(・) なんてあってほしくないけど、似たようなことはこれからもあるだろうな……。

そんな予感と 一抹(いちまつ) の不安を抱え、僕とラファエルは頷き合った。