作品タイトル不明
55話
夏も終わり、日差しも和らいできた空をゼロに乗っていく。眼下には、社会人になってから過ごしてきた街並みが広がっている。モンスター図鑑を埋める旅に出てから、住み慣れた街へ数ヶ月振りに帰ってきた。
「ゼロ、あそこの人がいる大きな建物に向かって」
最初に訪れた避難所が見えてきた。近くの着陸できそうなスペースへ降り立ち、門を目指して歩いて行く。門に近づくと、門番をしている二人の男性が声を掛けてくる。
「ん? あんた確かこの間、透と宮田の姉ちゃんと一緒に来た……」
「佐藤さんですよ、田中さん 」
「おぉ、そうだそうだ。生きてたようで何よりだ。まぁ入れ」
「こんにちは、お久しぶりです」
門が開かれ中へ迎え入れられる。この二人は確か門番の吉田さんと田中さんだ。初めてここへ来た時にもこの二人に迎えられた。
「どうした? あの二人を訪ねてきたのか? 」
「はい。それと、後藤さんとここの調達班の方にも少しお話ししたいことがありまして」
「後藤さんと調達班の皆にもですか? 」
「ふーむ、今の時間だと木下のあんちゃんは外に出てて居ないな。宮田の嬢ちゃんなら保健室に詰めてるぞ」
「後藤警部は職員室に居ると思いますが、案内は必要ですか? 」
「大丈夫です。覚えてます。それじゃあ行きますね、ありがとうございました」
門番の二人に別れを告げ、職員室に居る後藤さんを訪ねることにした。
職員室に入り後藤さんを見つけ、近づき声を掛ける。
「こんにちは、お久しぶりです後藤さん。突然訪ねて申し訳ないです。今お手すきでしょうか? 」
「ん? 佐藤さんじゃないですか! 聞きましたよ! あのワイバーンは貴方のお陰だとか、どうぞ座ってください」
椅子を勧められ、後藤さんと向かいあって座る。特に何も協力せずに早々に出ていってしまったため、あまり歓迎されないかとも思ったが、何やら結構歓迎されているようだ。
「そういえば、自分の地元の調達班がこちらにも来ているとか聞きました」
「ええ、既に物資の運搬や避難所間のやり取りで助けられていますよ。それで、ご用件は? 」
後藤さんにこの避難所を出てからのことを説明していく。他の生存者や、電話でのやり取りが可能になったことと、ワイバーンのテイムに興味があるようだ。
「というわけで、なんとかモンスターの情報提供にご協力いただけたらありがたいのですが……勿論情報提供のお礼に、可能な範囲で物資の提供やワイバーンのテイムのお手伝いもしたいと思います」
「いや、こちらとしても大変有り難い提案ですな。貴方と一緒に来た木下さんや宮田さんにも助けられていますし、今まで困難だった避難所間の移動もできる。なんだか希望が湧いてきましたよ」
詳しい話は調達班が帰ってきてからということになったため、少し時間ができてしまった。後藤さんに保健室の位置を教えてもらい、宮田さんを訪ねてみることにした。
保健室に辿り着くと中から子供が出てくる。やんちゃそうな男の子二人だ。しょんぼりした様子でトボトボと去っていく。保健室をノックして入っても大丈夫か尋ねる。
「はーい、どうぞ」
「こんにちは宮田さん。お久しぶりです」
「佐藤さん! お久しぶりです。ご無事だったんですね」
「なんとか生きてます。宮田さんもお元気そうでなによりです」
「ふふ、ありがとうございます。それで、もう図鑑は完成したんですか? 」
「いやー、それが東日本をぐるっと回ってきたんですけど、まだまだなんです。ここへはそのことに関して後藤さんにお願いがあって訪ねたんです。さっきの子たちは、どこか悪いんですか? 」
元気の無かった様子の子供たちが気になり聞いてみる。こんな状況だし医療品も不足していて、治療が難しい病気とかかもしれない。
「あの子たちはただの喧嘩です。避難所の生活でストレスが溜まっているようで、意外と避難民同士での喧嘩なんかで怪我をする人もいるんですよ。」
気持ちは分かるけど、ちょっと叱っちゃいました。と苦笑する宮田さん。どうやら少年たちは叱られてしょんぼりとしていたらしい。
その後は患者さんが来るまでの間、宮田さんとこれまでのお互いの話をする。
ゼロやシュナイダーにも是非会ってみたいというので、後で木下さんとそに君にも一緒に紹介すると伝えた。
ドアがノックされる。どうやら新しい患者さんが来たようなので、夕食を木下さん含めて三人でとろうと約束をして部屋を後にした。