軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27話

気になって少し様子を見ることにした。もし誰かが、あの熊のモンスターを狙って狩ろうとしているのなら横取りになってしまう。山に銃声が響いた。猟師のような格好をした人物が猟銃で熊を攻撃している。どうやらあの犬は猟犬らしい。動きが普通の犬ではないので、テイム契約しているのかもしれない。

(ちょっと押されているな。助けがいるようなら手を貸そう)

透明化を解いて近づき、声を掛けてみる。

「こんにちは。もしよろしければ手をお貸ししますが、どうでしょう? 」

猟師の男性は、ゼロに乗って空に浮かんでいるこちらを見て驚いた表情をしている。

「新手か?! 」

銃口をこちらに向けようとするのを、慌てて止める。

「わー! 待ってください。確かに怪しいかと思いますが、少し苦戦しているように見えたので、助太刀しようかと思っただけなんです。不要ならこの場を去ります」

「なんじゃ、お前さん人間か。手を貸してくれると言うなら助かるわい。しかし凄いもんに乗っておるの。最初は化け物かと思ったわ」

「テイム契約しているんです。こちらに危害は加えないので大丈夫ですよ」

さっそく倒すことにする。熊の足下の地面を収納すると、体勢を崩して斜面を転がり落ち隙が出来る。そこにゼロが火球を吐きだし、あっさりと熊は消えていく。収納した地面は戻しておく。山の標高が下がってしまう。ドロップを回収し、猟師の男性と自己紹介を済ませると、犬がこちらにやってきた。少し怪我をしているので治癒を掛ける。熊と戦っていた理由を尋ねると、外に食料の調達に出た際運悪く見つかってしまい、やむをえず戦っていたそうだ。聞くと、ゴブリンやオークは倒したことがあるらしいが、オーガや熊は今まで避けていたそうだ。

「助かったわい。しかしお前さん、強いのぅ……」

「便利なスキルのお陰ですね。最近だとゼロも仲間になりましたし」

こんな所で立ち話もなんだとなり、猟師の山中さんが拠点にしている山小屋へと向かうことになった。ゼロはしまっておく。

山小屋に辿り着き、腰を下ろして先程のドロップアイテムを渡そうとすると断られた。

「何、お前さんが倒したんじゃ。持っていけ」

「分かりました」

小屋の中には沢山の保存食が吊るされ、薪なども置かれている。山中さんは奥さんに先立たれ、子供や孫たちも大きな街に出てしまっていて、この山の麓の村で一人暮らしをされていたそうだ。異変発生時は猟犬のタロウとこの山小屋に来ていたらしく、現在までサバイバルしていたらしい。

「山中さんは、これからどうされるんですか?」

「そうじゃのぅ、村の連中も年寄りばかりでどれくらい生き残っとるかわからん。息子夫婦や孫たちも無事でおれば良いが……」

深いため息をつく山中さんは、疲れきっているように見えた。この山の中で今まで一人で生き抜いたのだ。しかもいつ終わるかもしれない、この異変の中で。家族のことも心配だっただろう。こちらから提案することは、山中さんに辛い現実を見せることになるかもしれない。しかし、この人を置いていくということもできなかった。

「山中さん。もしよろしければ、村の様子を見た後にご家族のいる街までお送りしましょうか? 」

「……すまんが、頼んでも良いじゃろうか? 」

「えぇ、任せてください」

まだ日も明るい。その日のうちに行動することにした。まずは山中さんが暮らしているという村へ向かう。ゼロに乗るとすぐに村に着く。空を飛べば一瞬だが、モンスターのいる山の中を行くのは大変そうな距離であった。

村の中にポツポツと湧いているモンスターを処理し、生存者の確認をしていく。残念ながら、生存者はいなかった。

肩を落とし、みんな逝ってしもうたと嘆く山中さん。小さな村の中だ。昔からの知り合いばかりだったろう。山中さんの家に行き、荷物をまとめ家族が暮らしているという街へと向かう。地図で確認したところ、同じ県内なので今日中に着けそうだ。猟犬のタロウは落ちないように、山中さんが紐で縛りおぶっている。透明化を掛けてゼロに乗り込み出発した。

安全運転で2時間ほど飛ぶと、街が見えてきた。まずは自宅から訪ねてみたが、鍵が掛かっており、山中さんが呼びかけても返事はなかった。山中さんの了解を得て家の中に入ると、山中さんや親しい友人に向けたであろう書き置きを見つけた。どうやら避難所に向かったらしい。避難所の名前は分かったので地図で確認し向かう。

驚かれないように、離れた場所に着陸しゼロには一旦戻ってもらう。山中さんと一緒に訪ねてみると、ご家族全員無事に避難していることがわかった。山中さんは緊張が解けたようで、膝をつき涙を流している。

「山中さん。自分はこれで失礼しますね」

「あんちゃん、本当にありがとう。なんと礼をして良いか」

「自分はここまで送っただけですよ。気にしないでください」

本当に偶々だったのだ。なり行きでこうなったが、最悪の結末だってあり得た。余計なお節介にならずに良かった。