作品タイトル不明
157話
「えっ……アレクセイさん!?」
お松さんが驚いて声をあげる。まさかと思い、さらにプレゼント袋に手を入れ像を取り出していく。後に出てきたのは教会で保護した子供たち。
当たって欲しくなかった予感が当たってしまった。
「そんな……!」
子供たちは恐怖の表情を浮かべ座り込んだ状態で凍りつき、アレクセイさんは子供たちを守ろうとしたのか、ナイフを構え何かと戦うような格好で凍りついている。
ここまでくると流石の自分でも分かる。この精巧な人間たちの像は実際に人間が凍りついたものだ。
サンタ自身がやったのか、はたまた別のモンスターがやったものをサンタが運んでいたのかはわからないが、サンタが飛んでむかっていた方角に何かありそうだ。
(サンタは西へむかって飛んでいたし、通信が途絶えたっていう首都に何かあるのか?)
元から行くつもりではあったが、かなりヤバイことになっていそうだ。もしかしたら自分もこうなっていたかもしれない。
「うわぁーーーん!! お、お兄さん。みんな、みんながー! 冷たくなっちゃって動かないんです! ひどいよ……こんなのあんまりです……ひもじい思いをして、やっとあの町で落ち着けたのに……ぐすっ」
凍りついた子供たちを見た瞬間、お松さんはギャン泣きだ。よく面倒を見てくれていたし、子供好きなお松さんには辛い光景だろう。
自分も何が起きたか理解した瞬間、頭が真っ白になり少ししてから怒りで頭が沸騰しそうになったが、同時にあることに気づいて冷静になった。
泣きじゃくるお松さんをシュナイダーが慰めているが、そのシュナイダーも悲しそうな顔をしていて今にも泣きだしそうだ。
そんな二人に近寄り、自分のたてた仮説を説明する。確実とは言えないが可能性はあるはずだ。
「お松さん、シュナイダーまだあきらめちゃダメだよ。みんなまだ助かる可能性はあるよ」
「助かる? でもみんなこんなに冷たくなっちゃって……」
「お松さん、今の世界は不思議なことに亡くなってしまった人間は消えてしまうんですよ? 光になって消えてしまうらしいんです」
自分はまだ直接その光景を見ていないが、日本を旅してまわった時も血痕や事故の後は目撃したが、人間の死体は見かけたことがなかった。
「そういえば、前にお兄さんから聞いたような……」
「自分はこの氷像にされている人たちはまだ生きていると思います。絶対ではないですけど、可能性はあるはずです」
「でもどうすれば元に?」
さて、そこが問題だ。この氷像が状態異常だとしてそれを回復する魔法があるのか……今の手持ちの魔法にそれらしい物はない。
単純にお湯や火で溶けるとも思えない。試してみても良いが下手に何か起きても困る。ここはまず原因をハッキリさせてからにしよう。
「ゲームだとこういうのを治すアイテムだったり魔法だったりがあるんですよね……あとは、元凶になる存在を倒すと元に戻ったりします」
でもサンタを倒したのにみんな凍りついたままだ。やっぱりまずはサンタがむかっていた方角へ行き調査するべきだろう。ヒントがあるはずだ。
氷像は出しっ放しにしておくわけにもいかず、一旦全部プレゼント袋にしまっておく。
そういえば中に入っていた氷像は人間たちだけだったな。白熊たちは無事だろうか? 確認したい気持ちもあるが、ここからでは距離がありすぎる。
ダメだ。なんでもかんでもはできない。まずは氷像にされた人たちを助ける方法を探そう。
それからお松さんが落ち着くのを待って、チャボさんのところで晩ごはんを食べてからその日は休むことにした。
お腹もふくれ泣き疲れたのか、お松さんはすでにグッスリと眠っている。
自分も休もうと目を瞑ると、今日はゼロと一緒の謎空間ではなく、自分の布団に潜り込んできたシュナイダーが絶対に子供たちを助けようと話しかけてきた。
「そうだね、やっぱり助けられるものなら助けたいよ」
僕はご主人を助けられなかったから……と悲しそうにつぶやくシュナイダー。
泣いているのかかすかに震えるシュナイダーの身体をそっと撫でる。
「シュナイダー……絶対助けるよ。絶対だ」