作品タイトル不明
113話
お松さんを仲間? に加えてからそろそろ一週間経つ。お松さんの旦那さんはまだ見つかっていないが、本人はそれほど気にした様子はなく、旅を楽しんでいる様子だった。
「これが今の日本かぁ……まるで異国に来たみたい。行ったことないけど」
「江戸時代から現代だと、そう感じるかもしれませんね」
「本当にあの車輪のついた箱が走るの? 牛にも馬にも引かせずに」
「本当ですよ。自分も動かせます。ただ今はゼロがいるので、しばらく乗ってないですね」
自分の車は、追跡する騎士に高速道路から落とされた際に廃車コースにされてしまったし、ゼロのおかげで移動手段には困っていない。今後乗ることはないかもしれない。
「次はどこに向かってるんですか? この間の鯉が昇り続ける滝は面白かったです」
「うーん、ちょっと行ってみたいところがあるんですよね」
「楽しいところ?」
「多分お松さんは楽しくないです」
「わたしの楽しくないこと? ……わかった。化け物退治のお仕事?」
「そうです」
お松さん的に自分は、化け物退治をして徳を高めている修験者のような物と思っているようだ。
仕事ではなく趣味で、上がるのは徳ではなくレベルなのだが、ゲームをしたことのないお松さんはモンスターと戦うのは楽しいことではなく、苦行とか荒行だと捉えているようだ。
まぁ厳密に言えば戦闘行為自体が楽しいわけではなく、それによって上がるレベルだったりスキルやアイテムが手に入ること、モンスター図鑑が埋められていくことが楽しいのだ。
そうして話していると、目的地が見えてきた。以前に一度訪れたオーガだらけの島だ。
オーガを蹴散らしながら進み、開かずの扉までやってきた。桃太郎的にお供が三人いるので開くのでは? とやって来たのだ。犬猿雉でなく、犬幽霊ドラゴンだが……少し待つが、何の反応もない。これはダメなパターンか?
「開かないね」
「ダメかぁ……ん?」
今一瞬扉が動いたように見えた。お、ちょっと隙間があいたぞ。これはいけるか。
「あ、閉じちゃった」
「いや、また動きました。なんだこれ?」
まるで判定に困っているかのように、開いたり閉じたりを繰り返す扉に戸惑う。バグった?
「あの、ダメなら出直すんでハッキリしてもらえるとありがたいんですが……」
つい本音が漏れてしまう。すると今度は勢いよく扉が開いた。扉の先には薄暗い通路が奥へと続いている。
「開いた。ギリギリオッケーって感じか」
「建てつけが悪かったのかな?」
何にせよこれで先に進むことができる。薄暗い通路を進むと大きな広間に出た。螺旋階段が壁沿いに上下へと伸びていて、広間の中央には例の石板がある。手を触れてみると広間が青い光で満たされ、ワープゲートのリストに鬼ヶ島ゲートと追加されていた。
ここからは戦闘が増えるだろう。無事扉も開けられたので、お松さんには追憶の広間でのんびりとしていてもらおう。
「わかった。気をつけてねお兄さん」
追憶の広間にお松さんを送り、まずは上から攻略していくことにした。ゼロに乗り吹き抜けになっている広間を上に飛んでいく。
「結構上まで行くな……」
ゲートがある場所なせいかこの広間にはモンスターがいない。螺旋階段の途中にも扉らしき物は見当たらなかった。
何もないのかと思いきや、階段を登りきったところに両開きの扉があった。この大きさだとゼロは通れそうにない。ここから先はシュナイダーと二人だな。
ゼロから降りて扉を押し開く。今度は仕掛けもなくすんなりと開いた。扉の先は岩肌の洞窟が広がっており、壁には松明が等間隔で並んでいる。
初見ダンジョンだ。無理はせずにいのちをだいじに進もう。