作品タイトル不明
104話
大鰐さんたちと別れてからどこに行くか迷ったが、今は笹の湯の隣にミニログハウスを立てて行動をしている。
何故笹の湯かというと、第一にワープゲートが近いことがある。ここからなら関東のツリーにも、南のニライカナイゲートにもすぐに飛べる。それと後はお風呂に簡単に入れるからという理由も少なからずある。
一応大体日本は周り終えたとは言え、取りこぼしがあることも十分に考えられる。ここ数日追憶のダンジョンで、真紅龍ヴォルケイオスを狩ってレベル上げをしながらロバさんと日本の伝承について話をしたり、追憶の広間の皆と映画を見たりゲームをしたりと忙しい日々を送っていた。
「ふーむ諸説あれど、やっぱりあの島は位置的にも出現するモンスター的にも鬼ヶ島っぽいですね」
「そうですね。後は今人間さんがいる地域だと、カッパにまつわる話なんかも結構あります。それから……」
現在のロバさん図書館には九州の図書館で集めた本が多いこともあり、有名な話からマイナー気味な民話まで色々と調べてくれていたようだ。
よくまとめられていて見やすい資料になっている。この短期間でここまでしてくれるとは頭が下がる思いだ。何かお礼がしたいな。
「お礼、ですか? うーん、でもこれがあたしの仕事ですから……しいて言うなら、もっと本がほしいですね」
どうやらロバさんはワーカーホリック気味なようだ。自分としては大変助かるが、たまには息抜きも必要だろう。
その後ロバさんを誘い、例の異世界転生ゲームで皆で遊んだ。余計なお世話かと思ったが、ロバさんも結構楽しんでくれたようだ。
ゲームが終了して雑談していると、ロバさんが話題を切り出してきた。
「人間さん、次はどこに行かれるんですか?」
「そうですね……せっかくロバさんが調べてくれたので、九州のカッパにゆかりのある場所に行ってみようかと思います。東北でもカッパと会ったので、何かあるかもしれません」
その後は来た道を北上しつつ本を集めて、ダンジョンとかワープゲートも探さないとだな。
「本! 楽しみにしてます!」
「はは、いっぱい集めてきますね」
ここ数日のヴォルケイオス狩りでレベルも30ほど上がった。しかしそこでまたレベルの上がりが鈍くなってきたため、そろそろ移動しようというわけだ。
異世界転生ゲームで最下位だったねこさんが、再戦しようと言うのをスルーして追憶の広間を後にする。初めて一位になれたのだ、気持ちが良いまま出かけたかった。
「勝ち逃げですにゃ!」
追憶の広間からミニログハウスに戻り、ロバさんがまとめてくれた資料を確認する。どうやらここから北東方向、本州への帰りの道中にカッパにまつわる神社があるようなので、ミニログハウスを収納し、さっそく向かうことにした。
「ここかぁ、本当にカッパの石像がある」
今までカッパと言えば妖怪というイメージしかなかったが、地域によっては水の神の使いだったり、水難から守ってくれる存在だったり、イザナミを道案内したりと神聖な存在として語られることも多いようだ。
「うーん、そう言われると相撲も神さまに捧げる神事だっていうしな。カッパも相撲好きだし、あるかもしれない」
なんだかロバさんのおかげでカッパについて理解が深まった気がする。
しかし神社の中には何も居ないな。お寺のお墓にはモンスターが湧いたけど、神社は湧かないのかな?
しかし、次の瞬間。収納に入れてあるはずのしりこだまが突然、取り出してもいないのに出てきてカッパの石像に吸い込まれていった。辺りが眩しい光に包まれる。
光がおさまると、目の前に屋根付きの立派な土俵が現れていた。そして土俵の上には、以前倒したカッパよりも数段立派な体格をした風格のあるカッパが腕を組み、こちらを見下ろしていた。
横には行司の格好をしたカッパも軍配を手に持ち、立っている。
言われるまでもなく分かる。これは相撲を取る流れだ。黒龍剣をしまい、土俵へ上がろうとするとカッパに手で静止される。
なんだろうと思っていると、どこからか取り出した帯のような物をこちらへと放ってきた。
広げて見てみると、どうやらまわしのようだ。どうしよう、締め方がわからない。