軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ep14 接戦

赤い瞳を輝かせるオークを観察する。

全身にやけどを負っているがまだ動けそう。

しかし攻撃を仕掛けることはなく距離をとってこちらを観察している。

……いけるか?

先程の火属性極大魔法の『インフェルノ』は俺が扱える最高火力の魔法である。

そして奴はその魔法を受け――確かにダメージを負った。

通常なら大抵のモンスターを跡形も残さず吹き飛ばすが、それは置いといて。何はともあれダメージを与えることに成功したのだ。

つまり奴が死ぬまで『インフェルノ』か、それに相当する魔法を当て続ければいい。

まぁ、それが問題なのだが。

ダメージが通るのは当然オークも理解したはずだ。

ならば、もう同じ轍は踏まないだろう。

接近戦は避け、遠距離戦を選ぶはず。

「さて、どう動くか……っ!」

呟いた瞬間、巨大な岩が投擲された。

早い――が、本体ほどじゃない。

それに、岩ごときで俺は倒せない。

魔力をめぐらせた腕に氷を纏わせて、真正面から殴り付けると、岩は一瞬で砕け散った。

しかし、オークは躊躇することなく二発目、三発目を投擲。

同時に、何も無い近場の空中に噛みつき攻撃を放つ。

(? 何を……まさか!?)

何かを喰らった直後オークの傷口が徐々に回復されていく。

間違いない。

奴が食べているのはダンジョンに満ち溢れている魔力だ。

そしてそれをエネルギーとして怪我を治している。

恐らくそれが奴の隠し球。

ふざけた移動速度に、防御無視の噛みつき攻撃。

加えて魔力を食って回復。

「持久戦ってか? ふざけろ――ッ!」

俺は痛む腹を無視して、接近。

氷の剣を生成して切りつけるも、容易に避けられ再度距離を取られる。

だが、避けるという事は危険視しているということ。

おそらく奴の防御力はそれほど高くない。

モンスターの中では最上位だろうが、少なくともドラゴンの鱗よりは柔らかいはず。

『インフェルノ』ではドラゴンの鱗を貫通できなかっただろうし。

故に『極大魔法』なら奴に通じるだろうが、俊敏な動きの前では狙いが定まらない。

せめて先程のように接近しないと直撃は不可能。

つまり奴を倒すには遠距離から、素早く、正確に極大魔法並みの威力をぶつける必要があるという事だ。

「……はっ」

普通なら不可能。

普通、なら。

俺はアイススピアを生成してオークへと射出。

当然奴に効果がある筈もなく、しかし生まれた数瞬で俺は目的の物を手にしていた。

それは遠くに放り投げていた相棒。

上下二連式魔石銃【No3.サファイア】。

俺は引き金に指をかけ、弾を装填しながら魔法を行使する。

「──『アイススピア』」

対象はオークではなく周囲全体。

至る所に氷柱を生み出す。

気温は急激に下がり、吐き出す息も白く中空に溶けていく。

『……』

ナイトメア・オークは動かない。

動かず、俺を警戒しながら魔力を食って体力を回復させている。

やがて完全に気温が下がりきると、俺は左手を空へ掲げて火属性上級魔法『フレアバースト』を放った。

冷え切った空気が今度は急激に温められ、その寒暖差によって霧が発生。

両者の視界から敵対者を消し去る。

されど互いに向け合う強烈な殺気から居場所を特定するなど容易。

近付けばオークは迎撃の構えを取るだろう。

だが、近付かなければ――殺気の生まれない高速の弾丸が相手では、反応のしようもない。

――ガンッ!!

トリガーを絞ると同時に青白い閃光がオークに直撃した。

『Gyaga!』

短い悲鳴を上げ大きく仰け反るオーク。

効いている。

俺は手を止めない。

一発目に続き、二発目、三発目、四発目、五発目と撃ったところでドラゴン戦の一発を含めてカートリッジの限界である六発。

素早くリロード。

足音を立てて移動し、発射。

『GAAAA!!』

咄嗟に回避したオークだが、弾はその顔面に直撃した。

奴は足音から俺の位置を特定。

タイミングを見て回避した。

しかし俺は氷魔法で即席の台座を作り、そこに設置したサファイアを小さなアイススピアを遠隔操作して引き金を引いたのだ。

殺意のない攻撃を回避するのは難しい。

サファイアに括り付けていた紐を引っ張って回収し、また別角度から射撃。

オークを中心に円を描くように移動しながら、フェイクを織り交ぜつつサファイアを撃ち込んでいく。

そうして霧の中を遠距離からオークを追い詰めていく。

このまま押し切れる――と、確信した瞬間。

『GYAGAA……GAAAAAAAA――!!』

防御の姿勢をとっていたオークは体勢を低くし、雄叫びを上げて突っ込んできた。

全身はボロボロで至る所の肉が削げている。

されどその瞳は殺意に揺らめいていた。

──それは一瞬の隙を突くもの。

俺が息を吐き出し、リロードを行いつつ、されど意識が周囲の警戒のために一瞬オークから外れた微かな間隙。

そうやって見せた フェイク(・・・・) に、奴は飛び込んできた。

「駆け引きは慣れてなかったみたいだな」

俺は近付いてくるオークに対し、サファイアを捨てて極大魔法『インフェルノ』を行使。

飛んで火に入る夏の虫が如く、灼熱の地獄に足を踏み入れた傷だらけのオークは――絶叫を上げて跡形もなく燃え尽きるのであった。

……いや、跡は残るか。

奴の燃え尽きた場所には巨大な紫の魔石が転がっていた。

これって売ったら億超えるかな?

とか何とか思いつつ深呼吸。

大きく息を吐き出して、ボヤく。

「あー、疲れた」

何はともあれ勝利である。

§

レッドドラゴンに加えてナイトメア・オークを討伐してまず初めに何をするか。

そんなの決まっている。

「いただきます」

俺は両手を合わせてから霜月さんのお弁当に箸をつけた。

まずは定番の卵焼きから。

……うん、美味い。

出汁がよく効いてるんだよなぁ。

いてて、やっぱ内臓おかしくなってんのか?

帰ったら即病院だな。

なんて思いつつ弁当と一緒に入っていた魔法瓶を開けると、中には湯気立つ味噌汁が。

啜る。

「塩分がうめぇ〜」

運動後な事と、氷魔法で周囲一帯が冷え切っている事が相まって、温かな味噌汁がとても美味しい。

冷えて固まったご飯と合わせると更に最高。

俺はお弁当を完食してから帰路に着くのだった。