軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72.世界滅亡の危機

72.世界滅亡の危機

「ぐ、ぐがががががが! ぎぎぎっぎぎぎぎぎいい! 人間風情がああああ!」

ワルダークは、ビビアの表情そのままに、悔しいのか、憎々しげに俺を見上げると言葉にならないとばかりに、醜い歯ぎしりを見せる。

だが、一瞬後には、その表情を一変させて、嘲笑するものに変えた。

「情緒不安定なんじゃないか? 牢屋で罪を償う前に、医者にかかったほうがいいのかもしれんなぁ」

俺は哀れむが、

「ぐふ、ぐふふふふふ」

唐突に嗤いだす。

気のせいだろうか、その表情はワルダークのものと、ビビアのものが、まるで共存しているかのような、左右非対称の奇妙な表情であった。

「我は四魔公ワルダーク! 姿かたちをいかなるものにも変化できる万物融合特殊生命体! ならば魔神の魔力と我が抱きしこの怨念! そして何よりっ……!」

ワルダークはニチャリとこれまで一番の笑い声をあげると、

「勇者ビビアの世界を憎む心地よき波動! その怨念を毒へと変えて、我が流体として、この世界の海洋全てを汚染しつくす!」

「なに?」

俺はワルダークの言い出したことに首をかしげる。

魔神の力やワルダークの力で、世界の海を死滅させるような毒を振りまくことはできないのは明白だ。

だが、ビビアが世界を憎んでいる?

「そんなバカなわけがあるか。ビビアはこの世界の平和をつかさどる勇者なのだぞ? 無論、まだまだ俺の庇護下にあって初めて勇者という資格を、ぎりぎり首の皮一枚残した状態に過ぎない仮免許と言ってよい状態ではあるが・・・」

「ぐぎぃ! ぐぎぎっぎいいいいい!」

なぜか、ワルダークの顔面の左半分が異様に引きつり、よだれを溢れさせながら何かを主張しようとしている。

だが、それが何なのか、俺には見当すらもつかない。

「くっくっく! 信じようが信じまいが、どちらも同じだ! ではな、大賢者アリアケ・ミハマ! そしてその英雄に付き従う賢者パーティーたちよ! このわしの世界へのはなむけだ! この世界を幾万、幾億の間、呪い続けようぞ! 海なき人類が何年で滅びるか、せいぜい海のもずくとなりて、見届けてくれよう。くかかかかかかか!」

ワルダークは左右非対称の哄笑を上げると、その体をドロリと溶かした。

「聖女さんパーンチ!」

ドン!

大気を振動させる正拳突きが、どろどろと軟体化しつつあるワルダークの腹部へと突き刺さる。

だがワルダークの哄笑は終わらない。

「むむー、一瞬遅かったですね!」

「いや、いつの間に物理を???」

「乙女には色々あるんですよねえ」

そういってアリシアはチラチラチラッとこちらを見るが、俺はよくわからずに首をかしげるのみだ。

すると、「は~」とアリシアがため息をつき、「朴念仁じゃし、しょうがないのじゃ」「ですね」と、なぜか他の二人がアリシアの背中をポンポンと慰めるようにたたいた。

なんだろう、この疎外感は・・・。

まあ、それはともかく。

溶けだしたワルダーク・・・。いや、海洋呪怨生命体ワルダーク・ビビア・ポセイドンは、この世界を破滅させる毒を、大陸を覆う海に溶かし始めていた。

海が腐れば、陸地も次第に腐り、人間もほかの生き物も、生きてはいけぬ死の世界が訪れるだろう。

まさに、今、世界の危機が顕現していた。

だが、

「アリアケさん?」

「旦那様?」

「先生?」

三人の少女たちが、俺へと呼びかける。

俺はもちろん、予想していたかのように淡々と、

「ああ」

とだけ簡単に答えた。

なぜなら、何ら気負いすることなどないからだ。

だって、俺たち4人にとって。

何より俺にとっては。

「世界の危機を救うくらい、大したことじゃないんだからなぁ」

「その通りですよ、アリアケさん」

「旦那様にとって世界を救うなど路傍の石を拾うようなものよな!」

「さっすが、先生です!」

彼女たちの言葉に、俺は微笑んで、

「スキル・スタート」

世界の危機を回避すべく、行動を開始した。

やれやれ、本当は勇者パーティーの役割なのだが、さっさとのんびりさせてほしいものだな。

そんなことを考えながら。