軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

303.魔大陸の正体(後編)

303.魔大陸の正体(後編)

「その通りです。正確には惑星脱出用星間横断仕様型浮遊艇、通称【アーク】と言います。それにしても、完全に魔大陸の正体を言い当てられたことには変わりありません。さすが星の神の権限を委ねられた大賢者様です。テンションあげあげと申し上げて差支えありません」

「テンションぶち上げているところすいやせんが、俺みたいな凡人にも分かりやすいようにもう少し簡単に説明して頂けませんかね?」

バシュータが肩をすくめながら言うが、実際のところ彼はほぼ理解しているだろう。情報を共有するためにあえてそういう道化を演じてくれているだけだ。

「ぎひひひひい! わかんねーのかよ、バーカ! 要するにこの魔大陸が宇宙船だってことだ‼」

「おっと筋肉が滑った。ふむ、すまんが話の続きを頼む」

メキョメキョメキョ!

「んぎいいいいいい⁉ エルガー⁉ てんめえええ、グアアアアアアアア‼」

「ちょっと、エルガー! ……ほどほどにお願いするわよ」

「ふぎー⁉(デリア―⁉)」

ふむ、皆は一瞬ざわついたものの、バシュータのおかげで再び話に集中してくれた。不出来な弟子は放っておいて続きを語る。

「結論だけではもちろん意味が分からんだろう。そして、俺たちがこの魔大陸で実際に目にしたもの、経験したものから推察をするのが一番理解しやすいと思う。まず、女神イシスが暴走した件を覚えているか?」

「そうでしたね。そのせいでボクたちはこの大陸に時空転移させられたんですから」

「その時、変なことが起こっていただろう、パウリナ、エリス」

二人に話を振る。

「はい。女神イシスは私とパウリナのことをまるで居ないものとして扱っていました」

「いいえ。私が無視されることはいつものことなんで。こんなに影が薄い私が女神様から無視されるのは当然のことなんで、へ、へへ」

なぜか真逆の答えが返ってきたわけだが、答えの内容は同一なので、話を続けることにした。

「そう、女神イシスはなぜか君たち二人を無視した……わけではない」

「ではない?」

「ふへへ、同情はよしてください。分かってるんです。分かってるんです……」

「そう、無視したのではなく、認識できない仕様なんだ、星の女神にとっては。なぜなら、ここが星の女神にとっての最後の切り札だったからだ」

「切り札とな! とすると、その切り札の相手というのがもしや、なのじゃ⁉」

コレットの驚いた声に俺は頷いた。

「そう、その相手が邪神だ。正式には偽神である宇宙癌ニクス・タルタロス。かつてイシスを窮地に追い込み、千年の眠りについた惑星の天敵。イシスは俺を時空転移させること、この星のマナを使い切る事で、千年間の時間稼ぎをすることで人間のレベルアップするための時間を作った。だが、それだと問題がある。ローレライなら分かるだろう?」

「負けたら終わりということですね。そういう博打は余り打つべきではないですね。政治生命は死ぬまでつきませんから。死なない様に、死なない様に、延々と立ち回り続けるべきです」

「さすがあのリズレットの娘だ」

俺は微笑む。ローレライは嫌そうな顔をする。

そこにデュースが口を開いた。

「と、ということは、まさか魔大陸はニクス・タルタロスに敗北したとき用の脱出艇なのか⁉」

「呑み込みが早いな、デュース。そういうことだ。考えてもみろ、千年後にどうなっているかなど、正直まるで分からん。だからあいつなりに奥の手を使ったんだろうさ」

「ふむ、だとすれば我がパートナー。私やパウリナを星神が認識できない理由も明白です。切り札なのだから、万が一にでもニクス・タルタロスに知られてはならなかった。記憶を読まれることもありうるし、操られることすらあるかもしれない。だから、自分の記憶から抹消することはもちろん、認識すらしないことを選択したわけですね。私でも同じ選択をするでしょう」

「無視されてるわけじゃなかった……? し、信じられない……」

「補足をすれば、魔大陸にはこの千年間、霧のカーテンというものが張られていた。これは魔力値や腕力など、ある一定の強さ以上になると通行が出来ない仕組みだが、これも女神イシスの仕業で間違いない」

「あー、なるほどですね。魔大陸には生命を存続させておかないと、いざという時に脱出させる人員がそもそもいません。だから、宇宙に逃すべき強い個体を、大陸に残すために、行き来を阻んだわけですね。霧のカーテンは魔大陸に行けないようにしている訳ではなかったわけですか。むしろ、魔大陸から出ないように封印していた、と」

アリシアもポンと手を打って納得する。"

"「ですがアリアケ様、分からないのは今になってなぜレメゲトンは動き出したのでしょうか。それに霧のカーテンも取り払われたのと同じタイミングで?」

セラの疑問に俺は二度頷く。

それは今回の事件の核心部分だったからだ。

だが、その答えについては、アリシアとコレット、ラッカライが偶然にも口をそろえて、あっさりと答えを言ってのけた。

「それはもちろん、アー君がニクスを葬ったからですよ、ね?」

「それはもちろん、旦那様がニクスのアンポンタンを消滅させたからなのじゃ! のじゃ?」

「それはもちろん、先生のおかげで宇宙癌ニクス・タルタロスを討伐したからではないでしょうか?」

「そなたら仲がええのう。だが、それしかあるまい」

フェンリルも頷いて肯定する。俺も同意見であった。

「ま、そうだな。だが、俺だけの力じゃない。みんなの力を合わせた結果だ。俺は後ろでフォローしていただけだ」

「私の記憶が正しければ、四つの聖武器を合体させて、偽神の心臓を貫いていたような?」

「? やはり、みんなの力を合わせた結果じゃないか」

「やれやれ~」

「先生らしいですね~」

アリシアとラッカライが肩をすくめた。

なぜだ? まぁいいか。

「ニクスを打倒したことで、魔大陸は起動可能な状態になったというわけだ。だから、レメゲトンは行動を開始し、もう一人の鍵であるパウリナを手中に収めようとした」

「アリアケ様、ニクスを倒したのに、魔大陸が起動する状態になるのですか? ニクスを倒したのなら、魔大陸で脱出する必要はないはずです。そうセラは思うのですが?」

もっともだな。だが、それは星神の立場になれば理解できるのだ。

「セラ、女神イシスの視点でものを考えてみるといい。いや、むしろ彼女自身すら認識できない、星の生命を存続させるための自動プログラムとでも言うべきなのかもな」

「自動プログラム。あっ!」

聡明な彼女はすぐに答えにたどり着いたようだ。

「偽神ニクス・タルタロス討伐のために、女神イシスと共闘し、その後女神は長い眠りに入りました。もしかして、その間に何があるか分からないから、念のために魔大陸を起動できるようにしたのですか⁉」

「ふ。不出来な弟子も悪くないと思っていたが、やはりよく出来る生徒は可愛いものだ」

誰のことだぁ⁉ とアームロックをかけられている勇者の声が漏れ聞こえて来たが、俺は微笑みながら口を開いた。

「それだけこの星の生命を愛しているというわけだ、あんなノリだがまさしく星神だな。彼女の権能とはすなわちこの星の生命を必ず生き延びさせること。その一点に集中しているんだろう。そのためなら、かなりでたらめなことまでやる。それに、女神は認識してないが、あの偽神は本当の邪神ナイアの使徒だしな。別の邪神が彼女の眠りの間にやって来ることは実は十分考えられる。だから無意識に魔大陸を起動可能状態にしたのは、実際かなり妥当な判断なんだ」"

"「詳しいご説明をありがとうございました。ご主人様。私どもが認識できていない貴重な情報も含まれておりましたことをお礼申し上げます。ウキウキする冒険譚だったと申し上げざるを得ません。何せ娯楽が少ないもので」

「それは良かった」

「猛省はどこに行ったのだ?」

「でもさでもさ! 女王的にはまだ分からないところがあるんですけど! 発言したいけど、発言しちゃっていいかな? かな⁉」

「はい、ミルノー女王さんどうぞ~!ちなみに実は余り時間が無いはずですので、前置きは結構ですよ~」

「ブリギッテさんが怖い! えーっとね! 疑問っていうのはパウリナちゃんとレメゲトンさんのことなんだけどさ、二人がこの魔大陸……。ううん、アークを起動させる鍵なのは分かったんだけどさ」

彼女は首をコテンと横に倒して言った。

「なんで二人もいるの?」

ミルノーの言葉に全員の時が一瞬止まった。

「あれ? 変なこと言った? でも普通鍵って1つじゃない?」

「ふっ」

俺はその言葉を聞いて微笑む。

「うわん! 馬鹿にされた! もう生きていけない! パウリナちゃんとお芋作って慎ましく暮らすんだから!」

「死ぬか生きるかはっきりしてください」

ローレライがすかさず女王相手にツッコミを入れているが、スルーして、

「馬鹿にしたわけじゃない。その通りなんだ。その理由が最後まで俺には分からなかった。特に」

俺はパウリナへ視線を向けて話す。

「同じ鍵として生まれたはずなのに、二人はまるで違う生態をしていることがな」

「おお! 確かにそうなのじゃ! パウリナは普通の 女子(おなご) じゃが、レメゲトン、あやつはなんじゃろう、千年生き続けておることからしても、特殊な存在なのじゃ。少なくとも人間ではないのじゃ!」

「ブリギッテ様みたいに時間停止型の封印で自分ごとアビスを封じていた訳でもないですもんねえ」

コレットとアリシアが頷く。

「どういうことなんですか、先生?」

俺はそのことを説明しようとするが、

「ふむ、どうやら邪魔が入りそうだ。だが問題ない」

俺は聖杖キルケオンを構えながら言う。

「その答えはこの戦いが教えてくれるからな」

俺の言葉に反応するように、仲間たちは一斉に戦闘態勢に移行したのであった。