軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

277.星の女神イシス・イミセリノスの寝所

277.星の女神イシス・イミセリノスの寝所

ガギイイイイイイイイイイイイイイイイン‼

エリスが音速を超えるスピードで肉薄して、そのブレードを俺へと振るう。

だが、その刃は1ミリ先で完全に止まる。

俺は瞬きすらしない。

「どきなさい」

「ボクは……。私は先生に槍を捧げた女。ここをどく理由はありませんよ、エリスさん」

俺が微動だにしないのは、エリスの攻撃が見えないからなどではない。

ラッカライが間違いなくエリスの攻撃を完全に防いでくれると信頼しているからだ。

「あわわわわわわ!」

「ラッカライちゃんへの信頼が見えて、お姉さんはとても良いものが見れたとほくほくです」

パウリナは腰をぬかして今しも漏らしそうになっていて、ブリギッテがのんびりと構えているのも対象的だ。

それはそれとして、実は俺の思考は別のところにある。

「ラッカライ、ここは一体第何階層なんだ?」

そう。

例えば偽神ニクスのいたのは999階層であった。ほとんどたどり着くことのできない深奥の次元階層で、奴は決して本体を晒さないように注意を払っていた。

そんなわけで深い次元ほど、たどり着くのは難しいのだが。

「えっと、すみません。実は咄嗟の判断で深く斬りすぎちゃって……。200階層前後だと思います、ごめんなさい!」

200か。俺は少し思う所があるが、思考するにとどめる。

「いや、謝ることはないさ。おかげで助かったわけだしな」

「そうですよ。さすがアリアケ君の一番弟子です!」

「一番弟子! そう名乗っていいんですか⁉」

俺の一番弟子と名乗ることにどんなメリットがあるのかよく分からんが。

しかし、確かに。

「弟子の順番としては勇者パーティーのメンツだったが、あいつらはもう巣立ったし。何より実力はラッカライが一番だしな。今日からラッカライ、君が一番弟子と名乗ってもいいんじゃないか? 代わりと言っては何だが、勇者パーティーたちは弟弟子の位置づけにするとしよう。機会があれば姉弟子として鍛えてやってくれるか?」

「ありがとうございます‼ 先生の一番弟子だなんて‼ こんな光栄なことはありません‼ そう思ったら更に力が湧いてきました‼ うりゃりゃりゃりゃりゃー‼」

「そんなに嬉しいものか?」

「うふふ、そりゃそうですよ。アリアケ君はもっと正当な自己評価を心がけましょうね」

「はあ」

よく分からんな。

だがやる気になってくれたのなら良かった。

それに、勇者パーティーの実力は俺の一番弟子を名乗るには、あまりにも力不足なのは確かだ。

俺の育てたラッカライに、改めて鍛えなおしてもらうのも、良い刺激になるだろう。

やれやれ、弟子をたくさん持つ、人の上に立つ【師】という身分も、なかなか大変なものだな。

そんな感想を抱くのだった。

さて、やりとりはしながらだが、戦闘は続行している。

オートマタ種族は機会人形でありながらも、人のように柔軟な身体をしているらしい。シルバーのエナメル質の身体を躍動させる。

「やっぱり奇麗ですねー。あのぴっちりした身体が美しい! ぜひうちの旅館『あんみつ』に欲しい人材です!」

「今は女将モードは封印しておいてもらえるか? ≪防御力アップ≫≪スピードアップ≫≪回数付き回避付与≫」

「攻めきれませんね。あのアリアケ神の加護の力ですか?」

「そうです! 私へのラブラブパワーです!」

「ラブラブパワー……。愛の力というやつか。それもまた計測不能ですね」

困惑したエリスの声に、

「こういうのですよ、おりゃああああああああああああああああああああ‼」

ブリギッテがいきなり参戦する。

そして、あるはずのない地面に対して、拳を思いっきりたたきつけた。

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼

深層の次元全体が揺れに揺れる。

「ひょええええええええええええええええええええ!」

パウリナが激震する大地に翻弄されて、ゴムまりのように飛び跳ねていたのでキャッチする。

「愛! すなわち殴り愛のことです!」

「ワイズ教と習合しても全然教義が変わらんのかい」

俺が思わずツッコミを入れてしまった、その時である。

「うるさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい‼ 眠れないでしょうがああああああああああああああああああああああ‼」

そう言って、次元の裂け目に突如扉が現れて、一人の女性が 眠気眼(ねむけまなこ) をこすりながら、顔を出したのである。

光輪を頭上に冠し、美しい黒髪を長く伸ばした……と言いたいところだが、寝癖でところどころ飛び跳ねていて、青の神秘的な瞳も今は半開きの瞳に隠れてほとんど見えない。

だが、その正体を俺たちは知っている。

『50年ほどお休みします‼』

と言って、偽神ニクスとの戦いの後、疲弊しきったために、再び休息に入った星の女神。

「星の女神イシス・イミセリノス!」

「あーれー? アリアケ君じゃないですかー」

彼女はそう言うと、まだ寝ぼけているのかムニャムニャとした口調で言った。

「今日は良い夢ですね~。私に会いに来てくれたんだ~。うふふ~、好き好き大好き~」

威厳もへったくれもなかった。

どうやら偶然にも、女神イシスの寝所《次元》へとやって来てしまったようで、とにもかくにも、星の女神イシス・イミセリノスが突如俺たちの前にその姿を現したのである。