作品タイトル不明
256.大賢者は世界を見通し、真実を少女たちに語る
256.大賢者は世界を見通し、真実を少女たちに語る
賢者パーティーとの久々の再会ということで、
「積もる話もあろう! 我は外すのでゆっくりとするが良い救世の英雄よ、ぬわっはっはっは!」
「私も外します。未来ではどうか知りませんが、今は顔見知りではないので」
「分かった」
俺はそう言いながら、ファイナル・ソードによって聖剣を失い、全魔力を使い切って心身ともにズタボロになったビビアを担ぐ。
そして、アリシアたちの元へと歩み寄った。
「こんな時代で会うなんて奇遇だな。どうしたんだ?」
「第一声がそれですか!? 愛する妻に対して!?」
「ははは。冗談だ冗談」
「分かりにくいんですよね~、アー君の冗談は。それよりも、はい」
そう言って、腕を広げる。
「えーっと、なんだ?」
「何って、ハグじゃないですか。帰ってきたらする約束にしているじゃないですか。何日お預けになってると思っているんですか~? んん~」
ニヤニヤとしながらアリシアは言う。
「ああ、そうだったな」
ぎゅーっっと抱きしめた。彼女と触れあっていると安心するなぁ、などと思いながら。
しかし、
「きゃー!?!?!? 冗談ですよ!?!?? 家に帰ってきたら、っていう約束でしょうに!!! こーんな公衆の面前で大聖女が夫にハグ求めたらさすがに破門になっちゃいますよ!!!」
ジタバタとしながら赤面するアリシアであった。
冗談だったのか。
「確かに、こんなところでするのは俺としても気恥ずかしいと思った。だが朴念仁と言われないように頑張ってみたのだが……」
「いやぁ、その努力はねー、嬉しいんですけどねー。まぁいいです。その調子で精進してください。それに別にイヤじゃなかったので、そのあたりは誤解なきように!」
そう早口で言うのであった。
なお、
「おお、これがバカップルというものなのじゃな。なんだか凄い! 凄いとしか言いようが出来ぬ! 魔王より脅威を感じたのじゃっ……!」
「うわー、うわー。羨ましい……。僕《私》もやって欲しい……」
「結構普通に抱っこをねだったらしてくれる可能性が少しありそうですね。将来の作戦に使えそうです、メモメモ」
他の女性たちも同じく赤面しつつ、よく分からないことを口走っていたのだった。
まぁ、ともかく。
「いやー、旦那様と再会できて嬉しいのじゃ! やっとのびのびブレスを吐ける気がするのじゃ!」
「はい、僕の先生に再会出来て本当に嬉しいです」
「本当です。とりあえず窮地を脱して環境を整えないと、二人きりになる作戦を立てても実行できませんからね」
ああ、本当に、
「俺もみんなにあえて嬉しいよ」
俺のそんな心からの言葉に、少女たちも嬉しそうに微笑み返してくれるのだった。
さて、再会を喜んだ俺たちは幌馬車に移動すると、枯死ユグドラシルの元へと向かう。
どうやら、マナを吸収する以上の行動は取らないようであるが、いちおう魔王なので討伐はしておくべきだろうという判断だ。
「それで、何が起こっているのですかね? 魔王さんたち(ボス) ラッシュが起こっていて、それをアー君が救っているという理解で良いのでしょうか?」
「それにしても変な魔王じゃなー。儂らの知っとる魔王といったら、あの魔王リスキス・エルゲージメントじゃからなあ。それに比べて、けったいな魔王ばっかりなのじゃ!」
「そうですね、お姉様。第1の魔王はまだ良いとして、第2の魔王が地母神様。第3の魔王は月で、第4の魔王は世界樹ユグドラシルです」
「そうですよね。何て言うか『誰でも良い』どころか『何でも良い』みたいにすら思えちゃいます」
少女たちの言葉に俺は満足して頷く。
「いきなり神代に飛ばされて、断片的な情報からだけでよくそこまで理解できたな。さすが俺のパーティーメンバーたちだ」
「にゃはははは! 褒められたのじゃ! 久しぶりで嬉しいのじゃ! のうラッカライ」
「はい! お姉様!」
「良い線いってましたか、アリアケ様?」
嬉しそうなローレライの言葉に俺は微笑む。
「ああ。みんなが感じた違和感は、ほとんど答えそのものだ」
「というか、あれですよね~。勇者・魔王の存在自体がまだないはずですもんね。 死を謳う(シングレッタ) 宇宙癌(・ステラ・キャンサー) 『ニクス・タルタロス』。あの偽神が世界のマナを急速に回復させるために仕組んだのがそれなわけですし。ん~? だとすると、今出現している魔王の目的はなんなんでしょうか? 今はユグドラシルに吸収されたとはいえ、マナは十分だったはずですよね?」
アリシアの言葉に俺は頷いた。
そういった素朴な疑問こそが、真実に最も近い場所にあると思いながら。
「ああ、そうだ。本来魔王はまだ存在しないはずだし、必要もない。そして、実を言えば多分あれらは魔王ではない」
「え!? そうなんですか、先生!?」
ラッカライが目を丸くした。
「どちらかと言えば、邪神かな?」
「邪神とな!?」
クワッとコレットが良い反応をする。
「そうだ。ニクスと一緒だな。まぁあれは偽神なわけだが、あいつよりかは邪神に近いと思うぞ」
「えーっと、すみません、頭がついて行きません、アリアケ様」
「おっと、すまんすまん。話すのが楽しくてな」
「そ、そんな照れてますね」
ローレライが赤面する。が、
「みんなで話すのが楽しいという意味からねー、ローレライちゃん?」
「わ、分かっています、アリシア様。はわわー」
よく分からない『圧』がただよったが、何となくスルーした方が良いような気がして話を先に進める。
「第2の魔王は地母神を人間に敵対させようとしたものだった。つまり『邪神』だ」
「確かにそうですねえ」
「第3の魔王は 月(イルミナ) だったわけだが、信仰の対象でもある。これも神と言って差し支えない存在だ。それが堕ちる。すなわち邪神だ」
「なるほどなのじゃ!」
「第4の魔王はユグドラシル。言わずと知れた 生命(マナ) の樹と言われ、世界の人々から信仰を集める女神とも言える存在。これがマナをすいつくす敵となれば、邪神と言わずしてなんと言うだろうか」
「確かに。しかし、第1の魔王はどうなんでしょうか? イヴスティトルでしたでしょうか?」
「ローレライの疑問はもっともだな。だが、あれも調べてみたところ、元々は神だったようだ。信仰はされていなかったようだがな。だから利用されただけだろう」
「なるほど、よく分かりました。さすが先生です! でも、魔王と邪神であることに違いはあるのでしょうか?」
ラッカライが疑問を述べる。
分からないことを素直に聞ける良い生徒である。俺は彼女の頭を撫でた。こうやって褒めると笑顔になるのでよく撫でるようにしているのだ。
「今回の世界の危機には大きなきっかけがあった。それを隠蔽するためには『魔王』と命名しておいた方が隠しやすいと判断したんだろう。まぁ、俺には無意味だったが」
「?」
よく分からない、といった表情をみんながした。
「もっと分かりやすくお願いするのじゃ! 旦那様!」
俺は微笑みながら、その真意を語る。
「今回の世界の危機は、まず、偽の『邪神』ニクスが大陸を崩壊させたことに端を発するだろう?」
「あっ! 確かにそうなのじゃ!」
そう。
魔王と称されるとあのニクスが数から除外される。
しかし、
「そもそもどうしてイヴスティトルが第1の魔王なのか? 第2の魔王とは誰が言い出したのか? 第3、第4の魔王は誰が決めているのか」
そして、
「第1の魔王と誤認させようとしたのは誰なのか?」
何よりも、
「『魔王』という言葉を生み出したのが誰なのか」
その存在こそが、
「俺たちをこの神代へと呼び寄せ。そして、魔王たちを討伐させた存在。あるいは真の……」
そう俺が言いかけた時であった。
「伏せろ!!!」
『ズパンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
鈍い音とともに、幌馬車の上半分が吹き飛んだ。
無論、俺の掛け声にすぐに反応したみんなは無事だ。
ビビアも死に体で寝そべっていたおかげで、身体を真っ二つになることはなかった。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!」
ただ、死にかかったことに気づいて絶叫を上げることは忘れなかったようだが。とりあえず正気付いて良かった。
さて。
戦友の復帰は嬉しいことだが。
それはそれとして、俺は目の前の存在に注意を払う方が先決だと判断する。
とはいえ、この現象を引き起こした相手は微笑んでいる。
俺も同様に微笑んでいた。
俺の方が車上にいる関係で、目の前の紅の少女を見下ろすことになる。
紅の少女は言った。
「不敬であるぞ、アリアケ。冥王の御前だというのに、上から目線とは」
「別にそう言うわけじゃない。それに俺はお前の部下ではないだろう?」
「うむ。対等であるな。では、よっこらせっと」
彼女はそう言いながら、自身で斬り飛ばした幌の部分から乗り込んで来た。
「楽しそうな話をしているのでな。我も混ぜよ、アリアケ」
冥府の王はそう言って、心底楽しそうに笑ったのであった。