作品タイトル不明
240.新たなる一団は『彼』を求める
240.新たなる一団は『彼』を求める
~?????~
ザッザッザッザッ……。
荒廃した大地を歩く4人組がいた。
ボロボロのフード付きの外套をまとい、フラフラと歩く姿は明らかに行き場を失った流浪の民だ。
そんな流浪の民が、終末の世界においてどうなるかは決まっていた。
「おいおい、こんなところでフラフラしているなんて、命知らずな奴らだぜ」
「ひへへへ、まったくだ! 最近はモンスターも強くて、なかなか旅人を襲う機会も減ったがラッキーだったぜ」
「おら、有り金全部と、それから食糧と水、全て置いておきな! 命が惜しけりゃぁな!!」
どこからともなく現れた50人ばかりの盗賊たちが、すぐに彼らを取り囲んだのである。
滅亡種人類王国クルーシュチャにすべての人間たちがいるわけではない。
こうした犯罪者などは王国より追放された。
それが徒党を組んで野盗となって、滅亡しかけている同胞を襲撃しようとしているのだ。
皮肉な光景と言えた。
しかし、この時ばかりはいつもと勝手が違った。
こうした流浪の民というのは珍しくない。
そして、ほとんどの場合疲弊しきっていて、こうした盗賊に襲われれば悲鳴をあげるか、あるいは逃げようとするのが常である。
しかし、今回盗賊たちが獲物と見なした4人組は言わなかった。
いや、何かを囁き合っていた。
「いやぁ、さすがにもう飽きました。何回目やねーん! っちゅー話ですよ~。さすがの私もそろそろ『成分』が切れてきたので、いい加減本気モードいいですか?」
「ま、まままま、落ちつくのじゃ。ただでさえ大地が沈んで大変なのに、これ以上大地を割ったり山を削るようなことをしては、色々マズイ気がするのじゃ。っちゅーか、儂が飛んでもいいのじゃが、めっちゃ敵が襲って来よるからなあ。一旦陸路を選んだのじゃがなぁ。致命的に選択ミスじゃったかなあ……」
「そそそそそ、そうですよ、お姉様。ここは一つ穏便に。穏便に行きましょう。それにその身は人妻ですし、あんまりイライラしっぱなしだと、いざあの人に会った時にしかめっ面で会うことになってしまいますよ。はい、僕としては笑顔で再会が良いと思います!」
「確かに。では私は少し身ぎれいにそろそろしておこうかと思います。あ、戦闘はイライラしている方が済ましておいてください。ストレス解消になりますので、win-winの関係ですね」
「よく正妻を前に言えるのじゃ……。ドラゴンをして、人間って怖いのじゃーと思わせるのじゃ!」
そんな会話を繰り広げる。
そして、野盗たちは完全に無視されていた。
彼らはこの荒野における強者であると同時に、王国を追い出されたはみ出し者たちだ。
だからこそ、こうして馬鹿にされることは絶対に許せない。
特に、今の会話で分かったのは、なんとこの4人は女性だということだ。
しかも、フードの下にちらりと見えた 顔(かんばせ) は、目を疑うような美人ぞろいであった。
だとすれば、
「へっへっへっ、こいつは運がいいぜ!」
「今日は祝杯だな」
「俺はあの金髪の女がひひあっ!?」
いいぜ、とそう続けようとした野盗の一人が、突如吹っ飛んで行った。
野盗たちの間を縫うように吹き飛んでいき、背後の森の中へと勢いを殺さず突っ込んでいく。
バキバキメキメキという、大木が折れる音、そして実際に遠目にも木が折れて倒れる轟音が鳴り響いていた。
一瞬、何が起こったか分からなかった野盗たちであったが、美しい、そして場違いなほど呑気な声音によって、理解することになった。
「困りますねー。私はもう売却済みなんです。あの方以外に指一本触れさせるわけにはいかないんです~。あ~でも、ボクネンジン、なかなかアピールしても気づきませんからねー。うらめしやー」
そう言うのと同時に、はらりとフードが外れて顔が見える。
荒野にはとても似つかわしくない美少女であった。美しい金髪がゆるくウェーブした聖装をしており、優し気な碧眼、口元には微笑を浮かべている。
聖母のようなオーラを醸し出していた。
だが、その容貌とは裏腹に、彼女の目の前には歪にへこんだ地面と、若干の地割れが発生していた。
そして、彼女の拳からは、シューシューと音を立てて、擦過熱による煙が発せられていた。
誰が先ほどの現象を引き起こしたのかは明らかであった。
「な、何をしやがった!?」
「何って、決まっているじゃないですか~」
彼女はやはり聖母のような笑みを浮かべながらも、シュッともう一度拳を振るう。
すると、風切り音がなると同時に、
「ぐわっ!?」
みぞおちを押さえて野盗の男達が数人崩れ落ちた。
「馬鹿な!? 届いていないはずだぞ!?」
「ただの空圧ですよ~。便利なんですよね~、これ」
「それ、ドラゴンとかがやる技なんじゃけどな……。あ、いや、何でもないのじゃ」
他の少女たちもフードを外す。
一人は少し背が低い、赤い髪と深紅の瞳が印象的な美少女であった。
次の人物は中世的な顔立ちをしていた。僕、と言っていたから少年なのだろうか。黒髪、黒目の整った顔立ちで、少し困ったように他の者たちを見ていた。
そして、最後の一人は青い髪に薄紫の瞳を持つ、生真面目そうな表情をした少女であった。しかし、先ほどの会話から、一番考えが読めない雰囲気がする。
「まぁ、それはともかく何回目か忘れたが盗賊退治なのじゃ。倒せば倒すだけ、多分再会した時に褒めてナデナデ量が増えるはずなのじゃ。はふふん!!」
「なるほど。それは気づきませんでした。えーっと、お姉様もそれくらいは許す、という微妙な笑みを浮かべて下さってますものね。よーし、じゃあ僕も頑張りますよ!」
「なるほど。身ぎれいにしてばかりではネタが弱いかもですね。では頑張ります」
そう言って、少女たちが身構えた。
「しょ、正気か!? この人数を相手に!?」
野盗たちのリーダーがすごむように叫んだ。
相手は4人。
美しい少女たちがたった4人だ。
確かに一瞬にして数名が倒された。
だが、人数ではまだまだ圧倒しているのだ。負けるはずがなかった。
しかし、
「や、やれ! お前たち!」
「……」
「おい! どうした! お、お前らっ……え?」
リーダーは返ってこない返事に怒声を上げながら振り向く。だが、それによって嫌でも思い知らされた。
「なんじゃ、お前ら。全然動かんから逆に儂ったらびっくりしちゃったぞ?」
「ちゃんと手加減されていて偉いです! お姉様!」
「これではあの方に語る武勇伝としては弱いですね。すみません、回復するのでもう一度立ち上がってもらっていいですか?」
「さらっと怖いこと言うのよね、この将来の上司……」
金髪の少女が嘆息する。
それから、クルリとこちらを向き、微笑みながら言った。
「それはともかく、因果応報という言葉知ってますか?」
彼女はズズイと近づきながら言った。
野盗のリーダーは既にしりもちをついて、怯えることしかできない。
「食べ物と水……全部……じゃなくて、4人分で結構ですので、よろしくお願いします。あと、人がいる場所を教えてくださいね」
言葉は丁寧だが、否とは言わせぬ迫力に、野盗の男はガクガクと首を縦に何度も振ったのである。