軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238.民たちと交流し慰撫する救世主のお仕事

238.民たちと交流し慰撫する救世主のお仕事

「おお、あなたが未来より来られた救世主様なのですな」

「ありがたや、ありがたや」

「どうぞ、我々をお救い下さい、救世主様」

「参ったなぁ」

俺たち初級勇者パーティーメンバーとナイアは、地母神ナンムを失い、滅亡種人類王国まで帰還した。

そこからナイアの手際は早かった。

俺たちの存在は別に秘密ではなかったので知っている者は知っている程度のレベルだったが、俺たちが魔王イヴスティトルを討伐したことや、俺が未来からやってきた救世主であることを大々的に国中に喧伝したのだ。

精神的支柱である地母神ナンムを失った彼ら国民からすれば、俺は今や心の支えであった。

そんな役割は普通ならば御免こうむりたいところだが、

「まぁ、任せておけ。俺がお前たちを救おう心配することはない。いつも通りに暮らし、友と家族を大事にしろ。困ったことがあったら言ってくれ。助けになろう」

「おお!」

「さすが救世主アリアケ様だ!」

「頼りにしておりまする!」

俺の言葉に盛大な歓声が湧いた。

「あの、とても慣れているようにお見受けするのですが」

一緒にいたフェンリルが意外そうに言った。

「まぁなぁ。未来でも色々やってたんでな」

「色々ですか?」

彼女が首を傾げたので、簡単に伝えた。

「エルフ族を救ったり、獣人族を解放したり、魔神を倒したり、孤児を養ったり、村を国に発展させて国王になったり、世界の危機を何回か救ったりとか、まぁ色々だ」

「そ、それは慣れもしますね。さすがというべきでしょうか」

「おかしいんだよなぁ。俺はのんびり辺境でまったり暮らすために勇者パーティーをあえてクビになったはずなんだが……」

どうしてこうなった?

とはいえ、困っている人々を放ってはおけない。だが、一方で、甘やかしてばかりいてもダメなことは知っている。だからあえて言った。

「逆に俺が困ったら、みんな俺を助けてくれ。俺は頼りない救世主だからな」

「ア、アリアケ様?」

意外な言葉にフェンリルの目が、今度は点になった。

民たちの顔も不安が増したように思う。ざわざわとした声も聞こえる。だが、それでいい。

「俺を頼るのは良い。だが、お前たちは人類最期の砦となる誇り高き王国民だ。誰か一人でも生き残れば俺たち人類の勝利だ。救世主の俺が倒れ、冥王ナイアが死のうとも、諦めるな。俺だけではなく、お前たち一人ひとりが、未来への希望そのものなのだから」

その言葉に一瞬シンとなるが、

「そ、そうだなっ……!」

「おっしゃる通りです! 俺たち一人ひとりが未来へ命をつなぐ役割を担っているんだ」

「アリアケ様が命をかけて守ってくれても、俺たちが諦めたらそこで未来は終了だもんな」

「さすがアリアケ様だ! さすが救世主様!」

当たり前のことを言っただけだが、先ほどまでより大きな歓声が上がった。

と、同時に、助けられたい、という民たちの気持ちが、自分たちの力で未来を掴み取るのだという気持ち。自分たちが自分を助けるのだという、当たり前の意識が芽生え始めているのを感じた。

「ふぅ、これでいい。幾ら俺が助けようと、自分が助かりたいと強く思わない者を助けることは出来ないからなぁ。さ、次の場所へ移動するかな。とにかく顔を見せるのが大事だ」

王国は10キロ四方はあるので、なかなか大変だ。

と、フェンリルが言った。

「案外、そういう当たり前のことを気づかせることが困難なのですが……。私にはできません。さすがです」

「お世辞はいいさ、大したことじゃない」

俺は微笑んで首を振った。

だが、

「いえ、私はそう言ったことを言える性格ではないので。あの……ほんとに……」

フェンリルが若干、頬を赤くしながら何かを言おうとした。

と、その時である。

「おいいいいいいいいいいい! おっかしいだろうがぁ!? なんで俺の扱いがこーんな感じなのに、てめえの扱いがそんななんだよよおおおお!?!??」

ビビアの絶叫が少し遠くから聞こえてきた。そして、ゼーゼーと息を切らしながら、俺の手前まで来た。

「そんなに違うか?」

「何もかも違うだろうが! そもそもだウゲエ!?」

再度絶叫していたビビアの顔に泥がべっとりとついた。俺は汚れるのが嫌なので、フェンリルの手を引いて一歩下がってよける。

すると、別の声が響いた。

「おいおい、ビビアの兄ちゃん! 遊びの途中でよそ見してたらダメだぞ!」

「そうだよ、お母さんに教わらなかったの~?」

「はい! ってことで、今度はビビアが 鬼(ゴブリン) 役ね~」

「せっかく仲間に入れてやって、遊んでやってるんだから、ちゃんと逃げないとだめだろう~」

きゃっきゃっとはしゃいだ様子で10歳前後の子供たちが、あっかんべーをしたり、お尻ぺんぺんなどしながら、ビビアの傍から逃げて行く。

「誰がてめえらなんかと遊ぶか! 俺はハイパーミラクル勇者! 超ビビア様だぞ! 泥をぶつけたのはどいつだ! てめえら全員ただじゃおかねえ! 待ちやがれええええええ!!!」

キャー、キャーと騒がしい。

やれやれ。

俺はその様子を微笑ましく見守る。

「アリアケ様、どうしてそのように笑っているのですか?」

「フェンリルか? ふっ。ああやって子供たちのレベルに自分を合わせて遊べるというのも、一種の才能だ。さすがだな、と思ってな。見ろ、心から子供たちと打ち解けようとしなければ、ああも自然と仲良くなることはできない。子供は大人の嘘をすぐに見抜いてしまうからなぁ」

俺は幼馴染を誇らしく語る。

「あの、恐れながら……」

フェンリルが珍しく言うか言わないか迷うような口調で、

「元々レベルが同じだけのような気がするのですが」

と言ったのだった。

「ははは、フェンリルは相変わらず冗談も毒舌だなぁ」

俺は思わず噴き出す。

滅亡種人類王国にあっては、地母神を失って大人が精神的なダメージを受けている。大人に余裕がなければ、子供は不安になるものだ。

だから、ああやって、ビビアが子供たちの笑顔を取り戻してくれることは、とても素晴らしいことなのだ。

ビビアも成長しているのだなぁ、と満足して頷いた。

「冗談ではないのですが、まぁ、結果オーライなのでいいんですけど……」

フェンリルが何か言っているのだが、子供たちの喧噪に紛れて聞こえない。

「何か言ったか?」

「はぁ、いえ。別の話をしましょうか」

なぜか嘆息してから、彼女はいつものキリっとした表情をしながら俺に言った。

だが、なぜか顔が赤いどうしたのだろうか?

「あのアリアケ様……」

「どうした?」

俺が首を傾げると、彼女はおずおずとした様子で言った。

「手を離してもらえますでしょうか?」

どうやら握りっぱなしだったようだ。

「おっとすまない。嫌な思いをさせたな」

俺はすぐに離した。

だが、彼女は顔を赤くしながらも淡々とした口調で、

「別にアリアケ様に手を握られるのはイヤではありません。誤解されませんように」

と言ったのだった。

誤解とはなんだろう、と思ったが。

このボクネンジーンという、俺の最愛の人の声が何となく聞こえて来たような気がしたので、俺はなんとかそれを聞くのをやめたのだった。