軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

210.神とヒト

210.神とヒト

「一撃でさよならです!!」

亜種霊長破壊神ルギから、黒い影が神殿内部の岸壁を覆いつくすように伸びる。

「触れたらやばいっぽい!?」

「安心しろ、取り込まれて永遠に虚無の空間をさまようだけだ」

「旦那様はフィネを安心させる気ゼロなのじゃ、にゃっはっは!」

「姫様もずいぶん余裕がありそうですが……」

「にゃははは! 神と戦うとはそういうもんなのじゃ! 神威に触れたら死ぬのじゃ! 至極~」

コレットは拳に力をためて、

「当然なのじゃっ!!!! はぁ!!!!」

岩盤ごと影を打つ砕いた。

クレーターを形成するほどの衝撃が影を遅い、一時的に雲散霧消する。しかし、

「ほれみろ。ちーとばかり触れたら、もってかれたじゃろ?」

「姫様!? 腕が!?」

見れば、コレットの右腕がまるで炭化したようにだらりとしている。

「慌てるな、慌てるな。すぐアリシアが治してくれるのじゃ!」

「あの、姫様、アリシア先生はここにはいないと……」

「ん? あ? へ? あれ?」

コレットはキョロキョロとした後、

「そうだったのじゃ!? やば! 左腕だけとか、やば!」

「は、反面教師を最終戦で生徒達に見せていくなんて、なかなか粋ですよ、お、お姉様!!」

「ラッカライのそれはフォローになってるのかのう。まぁ、コレットのおかげで分かったであろうて」

フェンリルが苦笑しながら影をかわしていく。

「例えば 最強種(ドラゴン) とて、あれは喰らう。かなう種族はおらぬであろうて」

「じゃ、じゃあ、勝てないじゃないですか!?」

ソラが悲鳴を上げる。

「そうです。さっさと諦めてください。新しい世界は、僕が作ります。無駄な抵抗はやめたほうがいいですよ? そうすれば痛みなく取り込んで差し上げますからね」

そう答えるルギの体からは、さらに染み出すように黒い影が放出される。

広大な空間も、ルギの魔力で形成される影に覆いつくさるほどの膨大な魔力だ。

『ブシャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「アビス《地獄》の炎すらも飲み込むか」

「ワイズ神様の神核を継承した僕に不可能はありませんよ。どこまでも、どこまでも強くなれる。僕にかなうものはもういません!」

「先生、危ない!!」

今や内部前面を覆うほどに広がった黒い影から、こちらを攻撃するように黒い帯状の刃が突き出される。

『ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!』

聖槍ブリューナクが火花を散らしながらそれを逸らした。

「ふうん。さすがラッカライ先生の第2聖具《聖槍》ですね。僕の影に取り込まれないなんて……」

静かにルギが呟く。

「なんて、生意気」

そう言った瞬間、

『ブワ!!!!』

今まで帯状だった影が、 刹那(せつな) ブワリと広がる。

ラッカライごと取り込もうとするかのように、大きく大きく広がったのだ。

まるでゴーレムを取り込めるほどに大きく広がったそれは、一瞬のうちに収縮すると、ラッカライを取り込んでしまう。

彼女は声を上げる暇もない。

「あははははははは! まずは一人目! だけど、分かりますよ! ワイズ神様の知識が僕に教えてくれます!」

ルギは哄笑しつつ言う。

「ラッカライ先生こそが、賢者パーティーの防御の要なんでしょう? それをこんな早々に失っては、もう戦えませんね。ねえ?」

ルギは俺の方を見て、微笑みながら言った。

「ア・リ・ア・ケ・せ・ん・せ・い?」

そう言った瞬間、さきほどラッカライを取り込んだのと同様、ブワリと俺の目の前を、真っ黒な影が覆った。

逃げる隙間はない。

絶望の黒い未来が目前に迫ったかのような錯覚を覚えさせる、恐ろしい攻撃だ。

「さようなら、先生。楽しかったですよ」

ルギのそんな言葉が俺の耳朶に届いたのと同時に、その黒い影は俺を咀嚼するかのように、覆いかぶさる。

そして、次の瞬間には、俺がいた場所にはただ何もない無だけが残されていたのだった。

「ゲームセット、ですね。先生?」

「そ、そんな……」

亜種霊長破壊神ルギ。

彼のその圧倒的な力に、生徒たちは茫然とした声を上げるしかなかったのであった。