軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205.ワイズ神 VS ブリギッテ神

205.ワイズ神 VS ブリギッテ神

「ルギ! 助けに来たぞ!!」

フィネがルギの姿を見て言った。

「助けに、ですか?」

しかし、一方のルギの方はぽかんとした表情を浮かべた後に、

「ふふふ。そういうフィネのところは好きですよ」

「なっ」

「ですが、もう時間切れです。僕は……。いや、俺はもう戻れない。力があふれ出してとまらない。俺はもうそういう存在になったんだ。だから、俺のことなど忘れてください」

ルギが淡々とした口調で言う。

それはあの生真面目ではあるが、明るかった少年からはかけ離れたものだ。

しかし、

「ばっかやろー!!!」

フィネはそんなことは一向に構わないとばかりに叫んだ。

いや、もちろん、不安なのだろう。だからこそ、自分を奮い立たせた。

それはまさしく、自分のためではない。友達のためだ。このままではルギは遠くに行ってしまう。それを察した彼女は決意したのだ。

「どんな風になってもあんたはルギなんだよ! 力に溺れてようが、力で支配しようが好きにしたらいいさ! でも、今のやり方は間違ってる!」

「間違っている? どこが間違っていますか? こうして強力な力も手に入れた。神として威容はこの空中神殿を見てもらえれば十分でしょう? 人々は。人も魔も。新しい神様の前に跪くはず。何が間違っていますか?」

「あたしだって冒険者だ! 力を求めて何が悪いと言われたら、別に間違ってるなんて言わねー! だけど、間違ってる! 決定的に一つあんたは間違ってんだよ、ルギ!」

「何がですか?」

どこかイラついた様子でルギは言う。それは何か決定的なことを言われる予感を彼が感じたからかもしれない。

「あたしらに相談しなかったろうが!」

フィネは怒りながら言った。

まさに怒声だった。歯がゆさと悔しさの混じったそれは、ルギの表情を氷のようにした。

「友達なのに相談もせずに出ていく奴があるか! なに一人で決めてやがる! 大事なことはみんなで決めようって約束したじゃないか!」

「それが……間違いですか? くだらない」

「くだらなくない! もしっ……!」

ルギの言葉に、更にフィネは返した。

「もし、このことをくだらないと思うんだったら、ルギ! あんたはやっぱり間違ってるってことだよ! 神様になんてなる器じゃない! だって」

フィネは俺たちを見ながら言った。

「あんたが守ろうとしたのはあたしらだろうが! その絆がくだらないって言うんなら! それをくだらないと言ってしまうような神様なんてあたしはいらない!」

「いらない……。僕が……」

俺はフィネの言葉に微笑む。

何もいうつもりはない。俺や他の先生たちが教えて来たことを、彼女はこの場で実践してみせたのだ。

「だから、あんたを連れて帰るよ、ルギ。あんたにそんな役は似合わない」

「勝手な……ことをっ……!」

ルギが戦闘体制に入ろうとする。しかし、

「落ち着くがいい。人よ。魔よ。ルギ、そなたはこれから本当の神になる身だ。小娘の戯言にそれ以上耳を貸すな」

「ですが」

「心配するな。すぐに決着をつけることになる。それを邪魔しようと言うのではない。だが舞台には設えがある」

ワイズ神は淡々とした様子でルギに言ってから、奥に行くように指示する。

ルギはこちらを一度振り返ってから、自らの影に溶け込むようにして姿を消した。

「ルギ!」

「もう一度言うが、慌てるな、人の仔らよ。別に決着を邪魔立てしようというのではない」

「……の割には、剣を持たれているようですが、ワイズ神様?」

ワイズ神は剣を抜きはなって仁王立ちをしていた。

彼女の後ろには、神殿の最奥へと通じる唯一の通路がある。

「やっぱり邪魔するつもりじゃねーか!」

フィネが口を開くが、

「そなたは通るが良い」

「へ?」

虚をつかれて、フィネが素っ頓狂な声を上げる。

「私が用があるのは、お前たち3人だけだ。他は奥へ進むといい」

その三人と言うのは、

「新・旧国教対決ですね。ですが、私は別にあなたに何の恨みも持ってませんが……」

「はい、私もです。というか、むしろブリギッテ教の教義よりまともだと思ってるくらいでして。リズレット大教皇様に無理やりスカウトされて序列三位をやってるだけなんですよね」

「あ、私もワイズ神様と戦うくらいでしたら、親子の縁を切ることも検討の余地がありますので」

ブリギッテ教を代表する三人。始祖ブリギッテ、大聖女アリシア、大教皇の娘ローレライ。

全員が戦いを避けたがるが、

「お前たちになくとも、私には戦う理由がある。それとも、ここで全員が私と戦って時間を無駄に費やすか? そうなれば、ルギが本当に戻ってこれなくなると思うがな」

なるほどな。

「あのルギ自体はまだ母体の状態か」

「察しがいいな。救世主。分かったなら行くがいい。言ったろう? この戦いは世界の趨勢を決める もの(舞台) だ。そこにはお前がいるべきだろう」

やれやれ。

「とんだ買いかぶりだな。俺はただのんびり暮らしたいだけのポーターなんだがな」

「そうか。ならば神の目をしても見誤ったのかもしれんな」

ワイズ神はそう言いながら、剣を構え始める。

「アリシア、頼めるか?」

「もちろんですよ、アー君。妻としての働きをお見せしましょう♪ それにまぁ私も教皇ですので」

彼女はそう言うと、

「この300年。世界をまとめてきたブリギッテ教団の神髄をお見せしましょう」

凛々しく微笑んで前を向いたのだった。

すると、

「ふふ、やっぱり若いっていいですね。リズレットを外して、アリシアちゃんを後釜にするのもいいかもしれませんね♪」

「内紛がすごそうなので、やめて頂けますか、ブリギッテ様」

ブリギッテも同じく微笑みながら言い、ローレライは淡々とした様子で首を振ったのだった。

そして、二人も同時に杖を構える。

「では現人神としての役目を果たしますか。行ってください、アリアケ君。それに皆さん」

「ああ、頼んだ」

俺は頷きながら、

「魔王の相手はあんたしかできないからな」

「はい♪ 今日中には世界を救って戻らないと、旅館が開けませんからね」

そんな軽口をたたきながら、俺たちは別れた。

今ここに。

旧(ふる) き神ワイズと現人神ブリギッテの戦いが始まったのである。