作品タイトル不明
192.VS ワイズ神の影
192.VS ワイズ神の影
「早速のブレース!!」
コレットが先手必勝とばかりに、ワイズ神の影へと業火を放射する。
「ふむ」
影は児戯とばかりに、手を一振りすると、平野を一瞬にして蒸発させるブレスを消失させた。
「ぬおお! さすが神! 儂のブレスを赤子の手をひねるように、消し去りおった!」
「この程度では油断したりせぬ。そのような演技は不要だぞ、 神の末裔(ゲシュペントドラゴン) 」
「ばればれよのう、だが走り出したら止まらぬのは狼の定めよの! そうれ! 大雪山の怒り(ハード・スカディ) !!」
ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
「≪必中≫≪スピードアップ≫≪攻撃力アップ≫」
フェンリルが本来の獣の巨躯の姿を取り戻し、絶対零度の氷の魔力をまとって突進する。俺のスキルでその力は10倍以上に膨れ上がり、並大抵のモンスターであれば塵も残さず粉砕するレベルへと達する。
しかし、
「聖なる獣。この程度か? 原初の勇者パーティーではお前がパーティーの要であったとすら聞いたが、私の勘違いだったか?」
「どうであったかなぁ? 我は今は、そこの男に操を立てる従順な獣なのでな。昔のことは知らぬよ」
青く美しい獣の突進を、難なく片手で止めるその姿は、常軌を逸していた。
地面が耐えきれずに、亀裂が走り始めるほどだ。
「よし、今だ、フィネ! ソラ! キュールネー! ピノ!」
「スキル≪潜伏≫解除!」
いつの間にか近づいていた、生徒達が奇襲を仕掛ける。
「キュールネー!!! あなたの馬鹿力見せてやんさなさい!!」
「ソラ、あなた、こういう時こそ委員長の仮面をかぶり続けるべきではないかしら!」
キュールネーはそう言いながらも、人の姿のままでありながら、膨大な魔力を右の拳へと集めていく。
「 竜の激憤(ドラゴニック・ゲシュタルト) !!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
キュールネーが大地に向かって拳を突き立てた!
その瞬間に、コレットやフェンリルとの攻防によって、もろくなっていた大地はあえなく地割れを起こす。
その深さは底が見えないほどだ。軽く見て数十メートル! そこに、
「 風神の怒りよ(カラミティ・ウィンド) !!!」
ソラの全力の風魔法が炸裂し、地底の底へと吹き飛ばす!
地底数十メートルへ、神を落下させて打ち付ける作戦だ。
「なかなか良い」
ワイズ神の影が感心したような声を上げるのが聞こえた。
「や、やった?」
ソラが期待に満ちた声を響かせるが、
「≪無敵≫付与。≪全体化≫」
俺の声が響く。
と、同時に、
「≪マナ吸収≫、≪信仰切除≫、≪亜空間形成≫」
普段しゃべらないピノが矢継ぎ早にスキルを行使した。
「ピノ!? なにその凄そうなスキルっ……!」
と、フィネが驚愕しているが、俺もピノも。そして、コレットもフェンリルもその言葉に答えている暇はない。
「来るぞ、衝撃に備えろ」
「へ?」
俺の言葉と同時に、生徒達のボケっとした声が響いた。その瞬間、
『神の前にひざまづけ。そなたらを踏みつぶしたその先に、屍山血河の栄華の都を築こう。安らかに眠るが良い』
腰に 佩(は) いていた禍々しい黒い剣をひとなぎするだけで、極大の魔力が放たれた。
『 黙示録の獣よ飲み干せ(ビースト・ナンバー) 』
それは紛れもない神の一撃。
光を放つのではなく、光を飲み干しながら奔流する極大の魔力は、俺たちの数々の防御スキルを打ち砕かんと暴れ狂うのだった。
その永遠にも思える、神の 瞋恚(しんい) たる暴力の嵐は、しかし唐突に終わりを告げた。
「接続を切られたか。頭の回ることだ」
放出されていた魔力がまるでバケツの水が切れたかのように止まる。
周囲一帯はまさに天変地異のようになっているが、その影響は限定的だ。それは俺やピノたちのスキルによるものだが、一方で……、
「今宵はこの程度でよかろう。拝礼への返答としては過分なほどであったろう?」
少し冗談めかして影は言う。
俺は肩をすくめながら、
「そうですね。まったく、大げさな挨拶なことだ」
「あ、挨拶。あれが!?」
フィネが驚いた声を出す。
神は憮然としつつ、
「当たり前だ。そなたは神をなんと心得る」
不機嫌そうに言った。
俺は苦笑しながら、
「影とはいえ、神の御業があの程度のはずがないだろう? 無論、俺たちも全力からは程遠い」
「お前はお前で崇拝の念が足りぬ。……が、まぁ良い。もしやもすれば同輩になるかもしれぬ男だ」
神はよく分からないことを呟く。
つっこむと面倒そうなので、俺は今日ここにやってきた目的を聞くことにした。
拝礼が終わったのだから、神には願い事をするものなのだ。荒ぶる神であろうとそれは同じである。
「神よ。さっきも言ったが、俺たちはルギという少年を追いかけてやってきた。どこにいるか知っているなら教えて欲しい」
潜入から1週間ほど、色々な手段を使い捜索したが、彼を見つけることはできなかったのだ。
すると、
「かの者は」
あっさりと口にする。
「教えてくれんのか!?」
「無礼な子であるな。そこな者は。まぁ子供とはそういうものか」
影ゆえに表情は見えないが、少し微笑んだように見えたのは気のせいだろうか?
そんな俺の重いとは関係なく、神は言った。
「そなたらの目的の男児は我が手中にある。会うか?」
「えっ!? あ、会えるのか!?」
フィネがゴクリと息をのむ音がした。
「無論だ。しかし、覚悟するといい」
神はどうやら薄笑いを浮かべながら、
「あれはもはや我が信徒。お前たちの知っている従前の者ではないぞ?」
その言葉に、フィネや他の生徒達はもう一度息をのんだのだった。