軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151.会戦

151.会戦

~アリアケ視点~

邪神の攻撃を弾き飛ばした俺は、スキル《遠視》を使用して背後や周囲へと視線を向ける。

邪神と魔王、そして女神イシスの戦いを迂回する形で、邪神軍、不死の軍勢は南部方面軍へと迫っていたのである。

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

「た、助けてくれえええええ!?」

そんな悲鳴が上がっている。勇者はと言えば、瀕死なのか怯えているのか分からないが、膝を抱えてうずくまっているようだ。頼りにしていた勇者がそんな調子なので、士気が低い……というか、戦線は崩壊寸前のようだな。

「エルフ軍! 距離をとって射かけなさい」

「はっ!!!」

セラ。

彼女の号令で、エルフ軍から大量の弓が発射される。無論、不死の軍団に致命傷を負わせることは出来ない。

が、

「足止めして一か所に集められれば十分です。さあ、喰らいなさい!!」

セラが風魔法を詠唱する。

「 ストーム・テンペスト(荒れ狂え嵐よ) !!」

『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??!』

突如巻き起こる強力な竜巻は、森林ごと根こそぎ邪神軍を天高く舞い上げ瓦解させていく。

しかも、その竜巻は一つや二つではない。大地をなめるようにその死の竜巻は縦横に走り、大地事根こそぎ邪神軍を葬って行った。

「エ、エルフ軍!?」

「どうして、こんなところに……」

南部方面の兵士たちが驚きと、信じられないといった表情で呟く。

すると、セラは胸を張って、

「私はエルフ族の王女セラ。エルフ軍は、人魔同盟盟主、アリアケ様の元、この戦いに協力します! さあ、ともに邪神の軍勢を打ち払いましょう! これはグランハイム国王からの正式な書状です!」

「じ、人魔同盟……」

「盟主アリアケ様……?」

「き、聞いたことがある。確か賢者と言われた方で、獣人族を解放したり、聖都を救ったりされた方で……」

そんな声が聞こえてきたのだった。

少し時間はかかりそうだが、俺たちが超強力な援軍ということは理解したようだ。確実に士気が回復していくのが分かった。

さて、他方では。

獣人族たちを率いるフェンリルが的確な指示で、邪神軍の攻撃を防いでいた。突破されそうになれば、

「ふむ、前線を倒壊させるゆえ、少し下げるが良い、ハス、アン」

「はい、フェンリル様!」

「うむ。では。ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」

十聖の獣フェンリル。青白い光沢をまとう獣の姿へと変化すると、巨大な口腔を開いた。

バチバチと帯電するかのような、高密度の魔力が凝集する。そして、

「 雷神の怒り(ドンナー・ゴッツ) 」

カッ!!!!!!!!!!!!!!!

躱す余裕などありようもない。

神代の雷に触れた死者の軍団は、神聖を帯びる雷撃によって一瞬にして蒸発する。その空いた空隙に、素早く獰猛な獣人の戦士たちが更に攻撃を仕掛けて、相手の傷口を広げていった。

その、少し離れた場所では。

「さすが不死の軍勢なのじゃ! 殴っても殴っても起き上がってくるのじゃ!」

「姫様。ドラゴンになって焼き尽くさないので?」

「このバカちんフレッド! それじゃと味方まで巻き込んでしまうじゃろ!? 必要な力を必要なだけ使えばそれでいいのじゃ!」

「お、おお! さすが姫様です! このフレッド……」

「それに、じゃ」

コレットは悪そうな笑みを浮かべると、

「人の姿で戦っていれば、まだまだ余裕がある、ってアピールになるのじゃろ? そしたら、後で旦那様に呼んでもらえるかもしれないじゃ、きゃっ!」

「……さようですか」

まぁ、大丈夫そうだな。

さて、最後に。縦横無尽に戦場を忙しく駆け回る部隊が一つ。

「はーい、エルフ軍の方の中で、けがをされた方は並んで下さいね~」

「お、お願いします、大聖女アリシア様」

「あのですね、いちおう私もいるんですが。中級回復術士もお忘れなく」

「す、すみません、ローレライ様」

「ローレライちゃん、けが人に『圧』をかけてはいけませんよ」

「おっと、うっかり。失礼しました」

「ではでは~。エリア・ヒール!」

「軽傷の方はこちらへ。はい、ヒール。はい、次の方どうぞ」

支援部隊であるアリシア率いるブリギッテ教団が次々にけが人を回復させていく。

と、その時である。

「あっ!? 危ない、聖女様!!!!」

セラたちエルフ軍の攻撃をかいくぐって迫って来た不死の軍団の一部がアリシアたちに襲い掛かったのである。

しかし、

「筋肉の力を思い知れ! ブリギッテ・マッスル・パーンチ!」

「マッスル・チョーップ!」

「ぐぎゃああああああああああああああああああああ!?!?」

ブリギッテ教団の屈強なマッスルたちが、その行く手を見事に阻んだ。

そう、アリシア率いる軍団の恐ろしいのは、ただの支援部隊ではなく、威力支援が出来ることだ。つまり相手を撲滅しながら味方を回復してゆくのである。

「大丈夫でしたか、聖女様!」

「ええ、もちろんですとも。それにですね~」

アリシアは慈愛に満ちた微笑みを浮かべた後、助けてくれたマッスルたちに近づくと、そのまま、

「聖女さんパーンチ!!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?」

誰よりも強烈な破裂音を響かせて、敵を吹き飛ばした。

「皆さんも油断はいけませんよ。相手は不死ですからねー。もうあの邪神に殺されてから時間が経過しすぎていて蘇らせることもできません。完全なる死者の軍団なのですから」

「は、はい! さすが聖女様です! 我々よりよほどマッスルですね!」

「あははは、ぶっ飛ばしますよ? アリアケさんに聞かれてたらどうするんですか?」

「ひっ!?」

俺はそこまでで遠視スキルを切った。

勘の良い彼女が気づく前にスキルを切れていれば良いのだが……。

俺はそんな風にブリギッテ教信者たちの幸運を祈る。

さて。

「まぁ、とりあえず不死の軍団とやらは、俺の仲間たちでなんとかなりそうだ。では……」

俺は目の前にたたずむ存在を見つめ、淡々と告げる。

「俺はお前の相手をすることにしよう。邪神。 死を謳う(シングレッタ) 宇宙癌(・ステラ・キャンサー) 『ニクス・タルタロス』」

その言葉に、邪神はこの世の憎しみをかき集めたかのごとき表情を浮かべたのだった。