軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.鑑定士、次なる目標を定める

雷狼を倒し、俺は能力を 鑑定(コピー) した。

『招雷弾(A)』

『→相手を一時的に麻痺させる効果のある雷の球を、高速射出する。魔力を込めれば球数が増える』

『耐性・雷属性(A)』

『→雷属性の魔法、モンスターからの攻撃に対して耐性を得る』

能力をコピーした後、俺は目的地に到着した。

『ついたぞ。ここが、貴様が以前ボスを倒した部屋の前だ』

迷宮主(ダンジョンボス) ・ 岩巨人(ゴーレム) を倒した部屋までやってきたのだが……。

「扉が閉まってるな」

俺の目の前には、巨大な岩の扉がある。

が、以前のように手で押しても、扉は開こうとしなかった。

『おそらく迷宮核が失われたことで、この部屋と、世界樹へと続くルートが封鎖されたのだろう』

「そっか。ダンジョンが消失するんじゃなくて、ルートそのものが閉鎖される感じなんだな」

俺のとなりに、銀髪の幼女ウルスラが出現する。

「安心したのじゃ。これでもう、世界樹の元に、誰もやってこられなくなったのじゃからな」

ちなみにここへ来る途中、俺が奈落へ落ちた穴を調べに行った。

が、そこもまた穴が塞がっていた。

おそらく迷宮核が壊れたことで、世界樹へ続く裏道である、あそこの穴も塞がったのだろう。

「そっか。ユーリも静かに暮らせるってわけか」

俺のとなりに、金髪の少女が出現する。

世界樹の精霊たる彼女は、本当に美しかった。

整った顔に、豊満な乳房に尻。

耳が少し尖っているものの、遠目に見れば、王族にしか見えなかった。

俺はその場にしゃがみ込む。

ユーリもいそいそと、俺のとなりに座った。

ぴったりと寄り添ってくるので、彼女のデカいおっぱいが肘に当たる……。

「おい、うちの子を汚い目で見るな。消すか?」

ウルスラが俺とユーリの間に割って入り、座る。

「むぅ。おかー、さん。おじゃま、むし、ですっ。ふんだっ」

「がーん! ゆ、ユーリぃ! なぜ怒っておるのじゃ!? すまぬ! 母を許してくれえええ!」

親子の和やかなやりとりをボンヤリ見た後。

「さて……と。これから……どうすっかな」

少女たちが俺を見やる。

「奈落から脱出できた。恩人である世界樹の安否も、安全が保証されるのも確認できた。……すること、なくなっちまった」

「別に今まで通り冒険者としてせこせこ金を稼いで生きればよいじゃろう?」

「いいや……。俺、冒険者やる理由、今ないからさ」

俺は右手を前に出す。

無限収納の魔法紋が光る。

俺の目の前に、大量の素材アイテムが出現。

山のように積まれているそれらは、奈落から地上へ戻ってくる間に手に入れたもの。

「貴様、地上へ戻る途中、モンスターを倒しては、せこせこ何かを集めておったが……アイテムを回収しておったのじゃな」

俺は出したアイテム群を、また仕舞う。

「当たり前だろ。これ全部Sランクモンスターから剥ぎ取れるアイテムだぜ? 1つでとんでもないお金になる。宝の山を捨て置いていくなんて、もったいないだろ」

俺には鑑定能力がある。

1度も見たこともないモンスターから、お金になる素材アイテムを回収できる。

そうやって、俺は奈落で出会った未知のSモンスターたちから、山のようなアイテム群を手に入れたわけだ。

「これ全部売れば……一生働かなくていいくらいになるからな」

「じゃあとっとと売り払えば良いではないか。なぜ後生大事にもっておるんじゃ?」

「売れないんだよ。俺、ギルドで奈落から帰還したって、誰も信じられてないんだぜ?」

どうやら最下層に落ちたのではなく、比較的浅い層に落ちた。

誰か強力な助っ人の助力があって、俺は帰って来られた……みたいなふうに、ギルドの連中からは思われている。

「それもそうじゃな。つい数日前まで雑魚だったやつが、Sランクの彷徨く死地から帰ってこられるほどの力をつけた、なんて誰も信じないじゃろう」

「そんな状況でSランクモンスターの素材を山ほど持って行ってみろ? どっかから盗んできたのかって疑われ、騎士に捕まるのが関の山だ」

とは言え、素材をこっそり、例えば闇市とかでちまちま売っていけば……。

以前のように、今日食べるものに困る生活を送らなくていい。

冒険者として、必死こいて働く必要もない。

豊かな生活が保証されたからなおのこと、俺はやることを見失ってしまったのだ。

「なら小僧。旅に出ろ。外の世界を回り、ユーリにいろんなものを見せてやれ」

「それはもちろん。わかってるよ。奈落を出るとき、おまえと約束したからな」

俺は隣に座る、 金髪少女(ユーリ) の頭を撫でる。

極上の絹糸を触っているようで、気持ちが良い。

「ただ旅の目的がぼんやりしすぎてるからな。そうだな……ユーリ。世界を見て回る以外に、何かしたいことあるか?」

「したい、こと……?」

「ああ。美味いものが食いたいとか。海で泳いでみたいとか。そういう目的があれば、旅の計画が立てやすい」

この子は俺の恩人だ。

彼女に恩返しがしたい。

彼女が旅をして世界を見て回りたいというのなら、それについていく。

彼女がしたいことをさせてあげたい。

「……家族に、あいたい、です」

ユーリはぽそり、とつぶやいた。

「家族? ウルスラがいるじゃないか」

「そう、だけど。おねえ、ちゃん。妹たち、会いたい……です」

「姉? 妹?」

ユーリの言っていることがわからなかった。

「他の世界樹のことを言っておるのじゃろうな」

「そう言えば世界樹って、この世に9本あるんだけっか」

「ああ。もともと世界樹は1つの大きな木だったのじゃ。そこから枝と精霊核を9つに分け、各地に散ったのじゃ」

「なるほど……もとは他の世界樹たちと、ユーリは一緒に暮らしてたんだな」

他の世界樹には精霊が宿っている。

それがユーリの家族……姉や妹ってわけか。

「世界樹は世界各地に散らばっておる。それも人の目につかぬ地下深く……隠しダンジョンの中にな」

「なるほどな」

俺のやるべきことが、見えてきた気がした。

「つまり俺は。ユーリの家族である世界樹を見つけるために、世界を回って、隠しダンジョンに潜ればいいってことだな」

「え? いい、の……?」

ユーリが俺を見上げていう。

「もちろん。俺はおまえに返しきれない恩がある。おまえが家族に会いたいっていうなら、会わせてやるよ」

「けど……めいわく、じゃ、ない?」

「まさか。どうせやることないし、世界を見て回るのも楽しそうだ。他の隠しダンジョンがどんななのか、どんな敵がいるのかも、興味あるからな」

隠しダンジョンを潜るならば、この手に入れた最強のチカラも、有効活用できるだろう。

「世界樹はあと7本。姉妹はあと7人か。全員に会わせてやるからさ」

全部で9本あるうちの1本は失われているから、隠しダンジョンはあと7つある計算になる。

「アイン、さん……ありが、とう!」

ユーリが眼に涙を浮かべて笑った。

……かくして。

俺は新たな目標を得て、次なるステージへと進むのだった。