作品タイトル不明
EP 5
決戦! トラクター VS 超兵器
地下闘技場の照明が一点に集中する。
実況のキュルリンが絶叫した。
「さあ、いよいよ決勝戦だよ! ドワーフの誇りをかけた最強兵器『アイアン・カイザー』! 対するは、カイトの謎の黄色い機体『 耕運丸(こううんまる) 』だーっ!」
観客席のボルテージは最高潮だ。
鋼鉄の巨人と、黄色いトラクター。見た目の勝負なら、どう見てもアイアン・カイザーの圧勝である。
コックピットの中、ドワーフ王ガンテツは不敵に笑った。
「フン、黄色い農機具ごときが。ワシの『アイアン・カイザー』は、ミスリル合金の装甲と、ドラゴンすら貫くドリルを持っておる! 一撃でスクラップにしてくれるわ!」
一方、耕運丸のカイトは、のんきに操作パネル(とハンドル)を握っていた。
「よし、エンジンの調子はいいぞ。……このリング、ちょっと土が硬そうだな。しっかり耕さないと」
カイトにとって、対戦相手のロボットは「畑にある大きな岩」程度の認識だった。
カーンッ!
ゴングが鳴り響く。
「いくぞ若造! 必殺! 『ギガ・ドリル・ブレイク』!!」
アイアン・カイザーの右腕にある巨大ドリルが高速回転し、唸りを上げて突進してきた。
空気を裂く音。直撃すれば、城壁すら粉砕する威力だ。
「危ない! ……あんな大きな岩が転がってきたら、 鍬(くわ) が欠けちゃう!」
カイトは瞬時に反応した。
彼は操縦桿を倒し、機体の左腕を展開した。
「どいてくれ! 『超振動・雑草カッター』!」
ブォンッ!
耕運丸の腕から、目に見えないほどの速度で振動するブレードが繰り出された。
本来は強靭な雑草の根を断つための機能だが、ポチの魔力でブーストされたその刃は、分子結合すら切断する高周波ブレードと化していた。
スパァァァァァァンッ!!
乾いた音が響く。
次の瞬間、ガンテツの自慢の巨大ドリルが、根本から綺麗に切断されて宙を舞った。
「な、なんじゃとォォォッ!?」
ガンテツが目を剥く。
最高硬度のミスリル・ドリルが、まるでダイコンのようにスライスされた。
「次はこれだ! 喰らえ、『ドラゴン・バスター・ミサイル』!」
ガンテツは距離を取り、背中のポッドから無数のミサイルを発射した。
熱追尾式の高性能弾頭が、耕運丸に殺到する。
「うわっ、 害虫(ハチ) の大群だ!」
カイトには、ミサイルが「畑を荒らす虫」に見えた。
「消毒しなきゃ! 『高圧・農薬(水)散布』!」
プシューーーーーッ!!
耕運丸の胸部ハッチが開き、凄まじい勢いで白い霧が噴射された。
それはただの水ではない。
冷却炉に使われているフェンリルの『氷精霊石』から抽出された、絶対零度の 冷気(ドライアイス) だ。
カチカチカチッ!
迫りくるミサイル群が、空中で一瞬にして凍りつき、機能を停止してバラバラと地面に落ちた。
「ば、馬鹿な……! 熱源反応が消えたじゃと!?」
ガンテツは戦慄した。
近接も遠距離も通じない。あの黄色い悪魔は何なんだ。
「よし、害虫駆除完了! あとは仕上げだ!」
カイトはギアをトップに入れた。
ポチの 鱗(エンジン) が咆哮を上げる。
「このリング、全部まとめて耕すぞ! いけ、『全方位・ 脱穀(だっこく) ハリケーン』!!」
耕運丸がコマのように高速回転を始めた。
両腕のオリハルコン製・耕運爪が、竜巻のような衝撃波を生み出す。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
「う、うわぁぁぁぁ! 吸い込まれるぅぅ!」
アイアン・カイザーの巨体が、耕運丸の回転に引き寄せられる。
そして、接触した瞬間。
ガリガリガリガリガリッ!!!!
装甲が剥がれる音が、まるで「麦の殻」を剥く音のように軽快に響いた。
ドワーフの国宝級の装甲板が、紙切れのように削ぎ落とされていく。
「ひぃぃぃ! ワシのアイアン・カイザーが! 裸にされていくぅぅ!」
そして、回転が止まった時。
リングの上には、装甲をすべて剥がされ、骨組みだけになったアイアン・カイザー(と、呆然とするガンテツ)が立ち尽くしていた。
そして足元の地面は、深さ3メートルまで均一に耕され、最高の黒土の畑になっていた。
「ふぅ。いい土になったね!」
カイトは汗を拭い、爽やかな笑顔を見せた。
「……ま、参った」
ガンテツはコックピットから這い出し、その場に崩れ落ちた。
完敗だ。
技術力も、出力も、そして何より「目的(土作り)」への執念が違いすぎた。
「わ、ワシの負けじゃ……。約束通り、この施設は認めよう」
ガンテツはカイトを見上げ、目を潤ませた。
「なぁ、若造……いや、師匠。その『脱穀アタック』の技術、ワシに教えてくれんか? あれがあれば、鉱山の掘削効率が100倍になる……!」
「え? 弟子? いいですよ!」
カイトは快諾した。
「農業に興味を持ってくれるなんて嬉しいなぁ! 一緒にいい野菜を作りましょう!」
「(……いや、野菜じゃなくてロボットの話なんじゃが)」
ガンテツはツッコミを飲み込んだ。
この青年の下で学べば、ドワーフの技術は新たな次元へ行ける気がしたからだ。
こうして、マグナギア・トーナメントはカイトの優勝で幕を閉じた。
観客席からは「農業最強!」「トラクター万歳!」のコールが巻き起こる。
激闘の後は、男たちの休息の時間だ。
汗を流し、裸の付き合いをするために、彼らは地下の奥深くへと向かった。
次回、サウナで整う中間管理職!
「サウナで整う中間管理職」へ続く!