軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 8

塩対応! 農業的害虫駆除(エクソシズム)

「さぁ、 消毒(エクソシズム) の時間だ」

S級農民・カイトの手には、ポポロ村の清らかな大地で精製された高純度の『天然粗塩』がたっぷりと握られていた。

「ひぃぃっ! や、やめるだわ! ワシらはずっ友——」

「私たちの尊い絆を壊さないでくださいのぉぉ!」

抱き合って涙ながらに訴えるオロチとリーザ。

だが、カイトの瞳には「害虫」を見据える冷酷な農民の光しか宿っていない。

「連作障害を起こした畑には、一度厳しい冬(塩害)を味あわせてリセットするしかねぇんだよ! 悪く思うな!!」

カイトは腕を大きく振りかぶり、豪快に粗塩を撒き散らした!

「塩害には気をつけろよォォォッ!!」

バサァァァァァァァァァァァァァッ!!!!

「ムゴォォォォォッ!?」

「しょっぱぁぁぁぁぁぁっ!?」

顔面に強烈な塩のシャワーを浴びた二人は、病室の絨毯の上をのたうち回った。

パキィィィンッ……!!

その瞬間。

オロチの蛇の目に浮かんでいた「ピンク色のハートマーク♡」が、ガラスのように砕け散った。

さらに、リーザの脳内を支配していた「オキシトシン(脳内麻薬)」の異常分泌が、バケツで氷水をぶっかけられたように急速冷却されていく。

【ずっ友ロコシ】の魔力によるバグが、完全に初期化されたのだ。

「……あ?」

「……え?」

数秒の沈黙。

床に倒れ込んでいた二人が、ゆっくりと顔を上げる。

オロチの視界に映ったのは、自分の高級な紫のスーツの袖をガッチリと握りしめている、芋ジャージ姿の小汚い少女。

リーザの視界に映ったのは、自分の肩に馴れ馴れしく腕を回している、加齢臭と葉巻の匂いが染み付いた強面の成金おっさん。

「……」

リーザは無表情のまま、オロチの手をペシッ! と冷酷に叩き落とした。

「……オエッ。なんですの、この胡散臭いおっさん。加齢臭と葉巻の匂いが混ざって最悪ですわ。今すぐ私の視界から消えてくれませんこと?」

見事なまでの、氷のように冷たい【塩対応】であった。

さっきまで「オロチおじ様ぁ♡」と媚を売っていた姿など微塵もない。完全に「ゴミを見る目」である。

「みゃ、みゃあ!? 誰がおっさんだて!!」

オロチも負けじと、芋ジャージの少女をドンッ! と突き飛ばす。

「ワシの横になんでこんな貧乏クサい小娘がおるんだて!? しかもワシの奢りで、キャビアばっか山ほど食いやがって! 乞食かおみゃあは!!」

「なんですって!? あんたが勝手に『リーザちゃんはマブダチだわ!』って擦り寄ってきたんでしょうが! キモいですの! 通報しますわよ!!」

「おみゃあからトウモロコシをワシの口に突っ込んできたんだろうが!!」

【神界ゴッドチューブ —— キュララの突撃生配信中】

『ちょwww 手のひらクルックルで草www』

『これが……アイドル特有の【塩対応】ってやつか……!』

『ずっ友(笑)』

『塩まかれて急に我に返る二人ww 腹痛いww』

『おっさんと芋ジャージの醜い罵倒合い助かる』

配信を見ていた宇宙神ユニーバも、コタツの中で腹を抱えて転げ回っていた。

「フッ……。どうやら無事に、土壌のバグ(癒着)は解消されたようだな」

カイトが麦わら帽子を指で押し上げ、会心のドヤ顔を決める。

「いや、ただ我に返っただけだろ……」

龍魔呂が呆れたようにツッコミを入れる横で、キャルルが「あらあら、絆(笑)はどこへ行ったんでしょうね?」と冷たく微笑んでいる。

「ワシは天下のゴルド商会会長だて! こんな小娘とつるんでたなんて、世間に知られたら——」

オロチがそこまで叫んだ時、彼の顔面から再び、今度は別の理由でサァァッと血の気が引いた。

(……待てよ? ワシ……この小娘のためにTV局買収して、全国放送で「ポンポコ節」踊って……自分で「秘書のミスだ」って記者会見したよな……?)

リーザもまた、ハッと息を呑む。

(……私、日曜の朝の子供番組で鼻に5円玉詰めて……しかも、今ルナミス帝国のVIP病室に……無保険で入院してますわよね……?)

病室の中に、この世の終わりを見たような、重く冷たい静寂が降り下りた。

ずっ友の魔法が解けたことで、彼らは自分たちがしでかした【大事件と、その経済的損失】という現実を、ついに正確に認識してしまったのだ。

「……気づいたようですね」

コツ、コツ……。

病室の入り口から、冷徹な足音と共に、一人の男が姿を現した。

ポポロ村の宰相兼執事であるリバロンと、その肩に乗った財務担当のニャングルである。

「さて、正気に戻ったところで……ビジネス(現実)の話を始めましょうか」

ニャングルが、シャカッと算盤を弾きながら、極悪非道な笑みを浮かべた。