作品タイトル不明
EP 7
最強農民の視察と『 連作障害(バグ) 』
「もうやめてぇぇ……! 治療(暴力)も再生(臓器摘出)もいりませんわぁぁ……!」
「ワシが悪かっただわ……! おみゃあらの口座の凍結も解くし、慰謝料も払うで、どうか命(と内臓)だけは……ッ!」
ルナミス帝国のVIP病室。
キャルルの『月光薬(物理)』によって全身の疲労と怪我を強制的に全回復させられ、ルナの『善意の臓器売買』の恐怖によって精神を完全破壊されたオロチとリーザは、豪奢な絨毯の上でボロ雑巾のように抱き合いながらガタガタと震えていた。
「おい。キャルル、ルナ。あんまりいじめるな。また病院の壁を壊したら、ポポロ村に天文学的な請求書が届くぞ」
コツ、コツ。
粉々に砕け散ったドアの向こうから、咥えタバコを吹かしながら龍魔呂が呆れたように姿を現した。
「あ、にいちゃん!」
「あら、龍魔呂さん。私たち、ただお見舞い(善意)に来ただけですよ?」
血まみれの安全靴を隠すキャルルと、純真無垢な笑顔のルナ。
龍魔呂はため息をつきながら、ボロボロになったオロチたちを見下ろした。
「……で、どうするんだ? ゴルド商会の会長さんよ。これだけ大騒ぎを起こしておいて、まだ『秘書の事務的なミス』で押し通すつもりか?」
「ひっ……!」
死神(DEATH4)の冷たい眼差しに、オロチが悲鳴を上げる。
だが、その瞬間。彼の脳内に残る【ずっ友ロコシ】の魔力が、再び彼を「バグった友情」へと引き戻した。
「そ、そうだわ! 事務的なミスなんだて! ワシとリーザちゃんは魂のマブダチ(ずっ友)! 癒着なんて汚い言葉で、ワシらの友情を汚さんといてくれ!!」
「そうですの! オロチおじ様との絆は、カネや権力なんかじゃありませんの!!」
二人して涙ながらに「純粋な友情」を訴える。その姿は一見感動的だが、オロチの首には純金ネックレス、リーザはキャビアの空き缶を抱えており、説得力はマイナス1億であった。
「……なるほど。どうやら、ただのアホになったわけじゃねぇらしいな」
ズカッ、と。
龍魔呂の後ろから、麦わら帽子を被り、肩に超硬度クワを担いだS級農民・カイトが病室に足を踏み入れた。
カイトは、床に転がっていた『黄金に輝くトウモロコシの芯』——リーザとオロチが半分こにして食べた【ずっ友ロコシ】の残骸を拾い上げ、顔をしかめた。
「こりゃあヒドイ。糖度(甘い汁)だけを異常に高めて、土壌(人間関係)を腐らせる最悪の B級品(ワイロ) だ。こんなもんを口に入れりゃ、頭の中のシステムがバグを起こして当然だぜ」
「な、なんやて……? ワイロ? バグ?」
カイトはクワの柄を床にドン! と突き立て、呆れたようにオロチを指差した。
「いいか、お前ら。同じ土地(人間関係)に、違う性質の種(カネや権力)を無理やり植え続け、さらにこういう『甘い肥料(ずっ友ロコシ)』を過剰に与え続けると、土が拒絶反応を起こして腐るんだ。農業の世界じゃ、それを【 連作障害(れんさくしょうがい) 】って呼ぶ」
「れ、連作……障害……?」
「そうだ。お前らが今訴えてる『純粋な友情』やら『事務的なミス』ってのは、過剰なワイロで土壌が腐りきった結果起きる、脳内のエラー(病気)なんだよ!」
カイトが、トウモロコシの芯を握りつぶしながら言い放つ。
「このまま放置すれば、お前らの関係(畑)は完全に枯れ果てて、社会的にも物理的にも死ぬ。……閻魔の野郎の時と同じだ。土が痩せてんだよ!!」
【神界ゴッドチューブ —— キュララの突撃生配信中】
『出たぁぁぁ! カイトの農業サイコパス理論!!』
『政治の汚職と癒着を「連作障害」って言い切ったぞwww』
『ワイロ=過剰な肥料ww 妙な説得力があるのが悔しいww』
『これはもう農業(物理)で解決するしかねぇ!』
「そ、そんなデタラメな理屈があるか! ワシらはマブダチ——」
オロチが反論しようとしたが、カイトは無慈悲に懐へ手を入れた。
「デタラメかどうかは、これから証明してやるよ。……腐った土壌(連作障害)を治すには、まず『土の消毒(害虫駆除)』から始めるのが農民の基本だ」
カイトの手に握られていたのは、ポポロ村の清められた大地で精製された、ズッシリと重い【天然の粗塩】の入った袋であった。
「さぁ、 消毒(エクソシズム) の時間だ」
カイトの目が、本物の 農民(サイコパス) の光を放ってギラリと輝いた。